Interview: Lucia Bianchi Maiocchi - Vitale Barberis Canonico

360年の歴史を誇るVBCは
サステナビリティをリードする

July 2022


Lucia Bianchi Maiocchi
ルチア・ビアンキ・マイオッキ
ヴィターレ・バルベリス・カノニコ(VBC)一族の13代目、CSR(企業の社会的責任)マネージャー。VBCは1663年創業の生地メーカーで、繊維業で有名なイタリア北西部ビエッラ地区の中で最も古い歴史を持つ。彼女はVBCのサステナビリティ広報活動を担当している。© Nicolò Caneparo

 

 

 

 

 ヴィターレ・バルベリス・カノニコ(VBC)は約360年間の歴史を誇る生地メーカーで、現在でも最大手の一角としてさまざまな服地を提供している。テーラーのみならず、さまざまな既製品にもその品質の証としてラベルが貼られているので、その名に親しんでいる方も多いだろう。所蔵する膨大なアーカイブをもとに、現代的にアレンジされた生地は、クラシックかつ新鮮で、業界のトレンドセッターとなっている。

 

 そんなVBCは、サステナビリティ活動に力を入れていることでも知られている。2018年よりヴィターレ・バルベリス・カノニコは、サステナビリティにおける同社の全活動を記載した「サステナビリティレポート」を発行している。先日、最新の2021年度版が発行されたばかりだ。

 

 例えば“H.O.P.E.”と呼ばれるエクスクルーシブ・コレクションには、VBCの地元イタリア・ビエッラ地方にて、自然の中で、昔ながらの方法で放牧された羊ビエッレーズ種の原毛が使われている。生地は羊毛本来の色を生かした無染色で、または花、葉、根、果実、樹皮などの天然色素を煎じて染める古代の技法で仕上げられている。

 

 ビエラの小さな町プラトリヴェーロに位置するVBCの最新鋭工場では、サステナビリティに対するさまざまな工夫が凝らされている。電力は認証を受けた再生可能エネルギー源から100%購入し、製造に使用した水は完全に浄化され自然界に戻されている。最終の浄水タンクである池では、鯉や金魚が元気に泳ぎ回っているという。

 

 そんなVBCのCSR(企業の社会的責任)マネージャーを務めるルチア・ビアンキ・マイオッキ氏に、VBCのサステナビリティ活動について伺ってみた。

 

 

 

 

––VBCのCSR担当として、現在どのような仕事をなさっていますか?

 

「私が最も関心を寄せているのはサステナビリティの文化を社内に根付かせることです。今日、サステナビリティ・マネージャーの社会的人数が話題になることが多いですが、実は環境問題は一カ所のオフィスの問題ではありません。サステナビリティの道は組織全体が日々の行動で取り組むべき課題です。社員が繊維ゴミの分別回収を注意深く管理する最も単純で基本的な行動から、マネージャーの革新的な設備に投資する最も困難な選択まで、私たちは皆、消費者であり、責任ある行動をとるための行為者なのです」

 

 

––約360年の歴史を持つバルベリス・カノニコファミリーの一員になったことをどう感じていますか?

 

「世代を超えた冒険の一部になる機会を得たことは、大きな名誉であり、また大きな責任であると感じています。印象的なことは、この冒険に関わっているのは、バルベリス・カノニコ一族だけではないということです。ビエッラ周辺の美しい丘陵地帯に暮らす他の家族も、世代を超えてこの会社の発展に寄与してきました。私たちのファミリーに関しては、ここには彼らの曽祖父母が共に働いていた同僚がいます。私は、ヴィターレ・バルベリス・カノニコが、私たちの土地と人々に生命を吹き込む冒険のような会社であることを想像するのが好きなのです。この会社が今後何世代にもわたって続くのであれば、この成功はここプラトリヴェーロ(VBCの創業地、現在もここに自社工場と本社を構える)で働く全員のおかげです。

 

 

 

 

––VBCのサステナビリティの取り組みには、どのようなものがありますか?VBCはなぜサステナビリティレポートを発行しているのですか?

 

「“サスティナビリティレポート”は報告年度中に経済・社会・環境分野で達成した取り組みや成果を記したものです。その目的は、当社のサステナビリティ戦略と、プラトリヴェーロ工場およびプレィ生産工場における相対的なパフォーマンスを説明することです。この報告書は、社会的責任の分野における最も重要な成果をステークホルダーと共有する必要性に応え、自主的に作成されたものです」

 

「ヴィターレ・バルベリス・カノニコは、人、環境、製品の3つの柱の管理におけるパフォーマンスの大幅な向上をもって、サステナビリティレポート2021を発表しました。ウール工場は、筋骨格系に負担のかかる作業を行う際に、作業者の関節や筋肉をサポートするウェアラブル外骨格の実験により、この分野で先駆的な役割を担っています。 2021年末には、水使用量削減の観点から、生産工程からの排水量回収を2020年の124mc/日から245mc/日に倍増させることに成功しました。さらに、生産工程から有害・有毒な化学物質を排除することを目的とした“Chemical Management 4Sustainability”認証を取得しました。持続可能な原材料の選択と透明なサプライチェーンの構築に対する当社の取り組みは、2つの重要な認証によって報われました。 RWS(Responsible Wool Standard)およびRMS(Responsible Mohair Standard)です」

 

 

 

 

––サステナビリティレポートに“Offlimits”が登場しています。“Offlimits”とはどんな生地なのでしょうか? その特徴や強みは何でしょうか?

 

「新しいファブリックとパフォーマンスを求めて、ヴィターレ・バルベリス・カノニコはOfflimitsシリーズで境界線を越え、フォーマルウェアの枠を超え、“禁断の領域”に踏み込みました。主役はウールで、新たな機能性を持たせながら、研究用繊維や革新的なポリマーとブレンドし、ハイブリッド化することで、新たな価値を生み出しています。革新的なポリマーとのハイブリダイゼーションにより、ヴィターレ・バルベリス・カノニコは、天然素材に新たな光沢を与えています。VBCは350年以上にわたって、有能さと情熱をもって製造を続けているのです」

 

 欧州では、サステナビリティは単にスローガンとして掲げるだけでなく、年次レポートの発行や公的認証の取得など、具体的な成果を示すことが求められている。そこにはカスタマーやステークホルダーの厳しい目が光っているからだ。彼女が行っているような取り組みは、やがて日本企業にも必要になるだろう。そういった意味で、サステナビリティの世界でも先頭を走るVBCの取り組みは、示唆に富み、注目に値するといえるだろう。

 

 

ヴィターレ・バルベリス・カノニコ

https://vitalebarberiscanonico.jp/