VITALE BARBERIS CANONICO: A NEW COLLECTION FOR MEN OF THE CLOTH
革新的なコレクション
“21マイクロン”とは?
October 2020
イタリア最大の記事見本市、ミラノ・ウニカで発表されたヴィターレ・バルベリス・カノニコの新しい2021/2022秋冬コレクションは、南米から取り寄せた最高の原料をベースにしている。
そのコンセプトは革新的なものだ。
by nick scott
ヴィターレ・バルベリス・カノニコ(VBC)が生地に対して真摯に取り組んでいる様(さま)は、ベリー・ブラザース&ラッドがワインに、ダヴィドフがタバコの葉に、それぞれ真剣に取り組んでいるのに似ている。
350年以上前に創業したこの老舗生地メーカーの13代目にしてクリエイティブ・ディレクター、フランチェスコ・バルベリス・カノニコ氏は、生地の世界に“テロワール”という言葉がないことを嘆いている。同社はウール生地の産地、エシカルな製造方法、洗濯や精練のやり方、繊維の長さ、縮絨、光沢感などを、どうやって得るかに、非常にこだわっているからだ。
人々は、VBCのアーカイブ・ルームを訪れるとき、常に畏敬の念を新たにする。ビエラ近郊のプラトリヴェーロにある本社に招待されたテーラーやデザイナーたちは、広大な本棚の間で、1860年から蓄えられた2,000冊以上もの革表紙の生地見本帳に目を通す。彼らはまるで美術史家がシスティーナ礼拝堂を訪れたときのような、感動に包まれるのだ。
VBCの2021/2022秋冬コレクションのテーマは、“Back to 21”である。その結果生まれた新しい記事コレクションが“21マイクロン”だ。この21という数字は、新しい冬用生地の原料となったウール繊維の直径(ミクロン)にちなんでいる。ここには、トレンドを逆手に取った革新的な提案がある。
現在ファッションの世界は、“スーパー”という数字が高いほど手触りが柔らかく、より贅沢なものになるという考え方に支配されており、どのブランドも糸の細さに固執している。
しかしVBCの新作生地は、この風潮に反して、自然な太さの素材のよさを、最大限生かすことにしたのだ。あえて細さは追求せず、組織が密で伸縮性と張りを持ち、ナチュラルな環境で伸び伸びと飼育された南アメリカ産のウールを使用した。
その結果、生地は厚手でふっくらとしたものになり、ストレッチ性と耐久性、防シワ性も得られた。テーラーの好むセリフ “makes up well “な生地が生まれたのだ(もしテーラーが選んだ生地についてこの表現を使ったら、スーツのドレープやシルエットが、上手く仕上がると期待していい)。
“Beausoleil(ボーソレイユ)”はヘリンボーン効果のあるスーツ生地で、パープルからグリーンを経由し、シエナブラウンまでのナチュラルカラーが揃っている。また、グリーン、グレイ、ブラウン、ブルーの杢糸を使用した新しいウーステッド・フランネルもある。
他に、ダブル・ジャカード・クロス(2つの異なる生地を、非常に細い糸で接着したもの)は、ハウンズ・トゥース、プリンス・オブ・ウェールズ、チョーク・ストライプなどに仕上げられ、グレイ、グリーン、ブラウン、その他の自然な色合いの、さまざまなトーンを含んでいる。
”21マイクロン “のテーマ数字である21は、ウール繊維の直径だけでなく、私たちがまもなく迎える新しい年も意味している。
ヴィターレ・バルベリス・カノニコ社は、世界で最も古くから継続的に稼働している毛織物工場であろう。200年以上の歴史を持ち、かつ創業者一族が経営を続けている会社だけが入会を許される国際的なクラブ、“エノキアン協会”のメンバーでもある。
だが、455人の従業員を抱え、年間約850万メートルもの布を生産するこの会社は、未来をしっかりと見据えたもの作りをしているのだ。