Vettä Nordic Spa
トロントの郊外で極上のスパを!
May 2023
text yuko fujita
オタワでの零下31度、体感温度零下43度という未体験の寒さを完璧な防寒態勢のもとに思いっきり楽しんだあとは、同じオンタリオ州のトロント郊外バリーにあるスキー場「Horseshoe Resort(ホースシューリゾート)」で2泊。バリーに到着したときの気温は零下1度。オタワよりも30度も暖かいなんて、かわいい寒さじゃないか! あれ? そう思えてしまう自分の感覚は、明らかに麻痺しているぞ!?
「ホースシューリゾート」では、小さな子どもが練習できる超初級者スキーコースから上級者用まで、さまざまなゲレンデが用意されている。ウエア類とグローブ、帽子さえあれば、あとはレンタル可能だ。まさかカナダで久しぶりのスキーをするなんて、こっちに来るまでは考えもしなかった。©Horseshoe Resort
さて、スキーを楽しむのはもちろんだが、バリーに向かった僕のいちばんの目的は、スキー場のそばに昨年1月にオープンし、本格的なラグジュアリースパを満喫できる「Vettä Nordic Spa(ヴェッタ・ノルディック・スパ)」での“サ活”を満喫することである。
夏の「ヴェッタ・ノルディック・スパ」。大自然の中に身を置いてフィンランド式サウナでリラクゼーションできるなんて、なんと贅沢! ©Vettä Nordic Spa
バリーまではトロントからクルマでおよそ1時間半ほどなのだが、今回は首都オタワからトロントに飛行機で飛ぶことなく、クルマで向かった。携帯電話の電波も届かない大自然の中を、ひたすら走る、走る。ランチ休憩を途中挟んで、到着したのは6時間後。それでもまったく飽きることなく窓の外を眺め続けられていたのは、カナダの自然が雄大だからなのか? 途中いくつかの小さな町を通過するたびに、携帯電話の電波が入るようになったかと思ったら、またすぐに圏外となり、大自然の中をひたすら走る。
オタワのカナダ国立美術館で見た、主に1920年代に活躍したカナダの7名の画家集団「グループ・オブ・セブン」は、100年前にこの広大なカナダの台地を旅して風景画を描いてきたのかと、あれこれ思いを馳せ、景色を眺めているのは、僕の中ではちょっとした楽しみでもあったのだ。
ホテルに着いたら早速スキーの衝動に駆られたが、夕方だったこもあり、ビールの誘惑に負けてしまう。移動の疲れをゆっくり取ることにした。
カナダの大自然の中に現れた
フィンランド式サウナ
日本では空前のサウナブームだが、もちろん僕もサウナをこよなく愛するサウナーだ。社会人になってから年越しそばならぬ年越しサウナをすること4回(さすがに恒例にはならないが、、、)。愛するイタリアで年を越したのも4回なので、イタリアと同じくらいサウナが好きなのである。
都内では週2~4回の“サ活”がルーティンで、グーグルマップには行ってみたい全国のサウナをぎっしりブックマーク。出張でも観光でもちょっとでも遠方に出かける際は、ご当地のサウナ攻めをするのが人生の中の楽しみのひとつになっている。街場のサウナだろうが、温泉サウナだろうが、スーパー銭湯だろうが、サウナでジーッと汗をかいて、水風呂、外気浴の流れで整うのが、最高に気持ちいいのだ。
ちなみに全国でのお気に入りは、「神戸サウナ&スパ」と「舞浜ユーラシア」、「朝日湯温現源泉ゆいる(川崎)」。サウナ好きの方ならお気づきかもしれないが、3つはいずれもフィンランド式だ。そう、ひとついわせてもらえば、僕はサウナの中でもとりわけフィンランド式サウナが大好きなのだ。
「ヴェッタ・ノルディック・スパ」は、まさにフィンランド人がこだわりにこだわって作った正真正銘のフィンランド式サウナで、大自然の澄んだ空気の中にあって、規模も日本とは桁違い。これはより高いリラクゼーション効果が期待できるのではないかと体験する前から楽しみで仕方がなかった。
未体験の領域の“整い”に出逢えるかもしれない!
「ヴェッタ・ノルディック・スパ」の受付、更衣室等があるメイン棟。営業時間は9時~21時。チェックインの時間は混雑を避けるため、9~10時、13~14時 、17~18時の3つの時間帯に分けられているが、いちど入れば21時までの営業終了時間まで1日中過ごせる仕組みだ。ほぼ年中無休で料金は、月曜~金曜はCAD 89、土曜・日曜と繁忙期はCAD109(1CADは日本円に換算すると約100円)。
フィンランド人が手掛けており
その内容は超本格!
フィンランドからカナダへとやってきたフィンランド人2世のエリック・ハルコネン氏は、父親と同じく鉱山で忙しく働き、カナダ中を、そして世界中を忙しく飛び回る日々を送っていた。溜まりに溜まった疲れとストレスを解消するべく、自宅の裏庭にサウナとプールを備えた北欧スパを作り、友人たちを招くようになったのが、「ヴェッタ・ノルディック・スパ」をオープンするに至ったきっかけになったという。
ある日、自宅に招いた友人たちと、ここに本格的なフィンランドスパがあったらどんなに素晴らしいだろうという話になり、だったら作ってしまおうと、7年間の準備期間を経て完成したのが「ヴェッタ・ノルディック・スパ」 である。
ハルコネン氏は、フィンランドの建築デザイナー、木材、薪サウナヒーター、そしてフィンランドデザインのガラスエンクロージャーにこだわりながら、超本格的な北欧スパを作りあげてしまったのだ。
大自然の中に位置する「ヴェッタ・ノルディック・スパ」は、敷地内に5つのサウナルーム(蒔2、電気1、スチーム1)、2つの水風呂(水温はもちろんシングル!)、3つの温水風呂、4つのリラクゼーションルームがあり、地元オンタリオの食材を使いながらフィンランドの料理を楽しめる素敵なビストロも併設。スパ三昧しながらおいしい北欧メニューの食事を楽しめるのが嬉しい。
中は男女一緒で水着着用となっている。家族や恋人、友人との会話を楽しみながら過ごせるソーシャルエリアと、ひとりで静かに過ごすことができるクワイエットエリアに分かれていて、どのようなリラクゼーションをしたいのか、自分に合ったエリアで過ごせるのもここの特徴だ。携帯電話や電子機器類はロッカーに保管し、スパエリアでは使用できないが、本の持ち込みは可能というところもカナダならでは。ここにいる間は必然的にデジタルデトックスも敢行されるのだ。
都内ではなかなかない蒔サウナ。それにしても広い! ©Vettä Nordic Spa
さて、「ヴェッタ・ノルディック・スパ」でいちサウナーとして嬉しいのは、フィンランドで最も一般的な電気サウナのほかに、蒔サウナがある点だ。蒔はメンテナンススタッフが定期的に燃やし、サウナの室内温度をしっかりいい塩梅の熱さに保っている。蒔が燃える際のいい香りとパチパチッという音が、心身に最高のリラクゼーションをもらしてくれる。
各サウナ室内では蒸気を発生させる「セルフロウリュ」も可能で、湿度がある室内で身体が芯から温まってたっぷり汗をかくことができる。 ©Vettä Nordic Spa
サウナのあとの水風呂の温度は、余裕のシングル(公式では7度~夏場で12度)。それゆえ、短期集中の5秒間を推奨している。確かに入ったその瞬間、血管が強烈に収縮するのがわかる。血圧が一気に上がって脳がパキーンとしてくる。頑張ってみたが、入っていられるのは10秒がやっとだった。が、この“シングル”がとにかく気持ちいいのだ。
整いのための外気浴は、蒔を燃やしている焚火台のコーナーがオススメだ。蒔サウナ同様、蒔の香りと燃える音が心地よい。、氷点下の中でもほのかな暖かさを感じられ、ここで10~15分ほどリラックス。
こちらが焚き火台のそばでの外気浴。こちらは夏の写真になるが、これはこれで気持ちよさそうだ。用意されているひじ掛け付きの椅子は、オンタリオ州ムスコカ地方の木材を用いた「ムスコカチェア」。ここに座って「整える」のが、カナダのサウナにおける伝統的なスタイルだそう。 ©Vettä Nordic Spa
蒔サウナ、水風呂、外気浴の1セットをお約束の3回繰り返したら、今まででトップクラスの完璧な“整い”を経験することができた。その後はリラクゼーションルームでボーッとひと休み。「冬のソナタ」ならぬ冬のカナダで、僕はなんと贅沢で幸せなひとときを過ごしているんだろう。
そんなこんなで、だんだんおなかがすいてきた。ランチはガウンを羽織って併設のビストロへ。
フィンランドで国民的人気のソーセージ「マッカラ」のサンドイッチは、ビーツとベビースピナッチ、ディジョンマスタードソースの組み合わせ。CAD14(1CADは約100円)。
“Smoked Chicken Smorrebrod”スモークドチキンを乗せたアイオリソースのスモーブロー(オープンサンド)はCAD20。整ったあとの食事はとても健康的で、大満足! スカンジナビアンらしい、長旅で疲れた胃をいたわってくれるような味わい。
一緒にクラフトビールとナイアガラフォールズの白ワインを飲んで、昨日までの長旅の疲れが一気にリセットされた感じだ。
ホテルに戻って俄然、スキーをしたくなってきた。そんなわけで、道具を一式レンタルして20年ぶりにくらいに滑ってみた。体は意外と覚えているもので、すぐに感覚が甦ってきた。スキー、楽しいじゃないか!
オタワでは鴨のコンフィを始めとする美食に舌鼓を打ち、トロント近郊のバリーでは大自然の中で人生最高のフィンランド式サウナを経験し、さらにスキーまで楽しんで、オンタリオの冬の楽しみ方はとどまるところをしらない。なんと贅沢な冬のオンタリオ!
今回の滞在は、今まで経験してきた冬旅の中でトップクラスに素晴らしく、密度の濃いものとなった。紅葉や大自然の中でのアウトドアアクティビティーなど、四季折々の楽しみがあるオンタリオだが、またいつか冬のオンタリオに戻ってきたい。いや、戻ってくるんだ。今から僕はそう強く念じている。
取材協力
オンタリオ州観光局 www.destinationontario.com/ja-jp/japan
カナダ観光局 https://jp-keepexploring.canada.travel/