OTTAWA WINTERLUDE Part2

冬のオタワがエキサイティング! Part2

April 2023

textphotography yuko fujita

 

 

 初めてのデスティネーションだったカナダの首都オタワが素晴らしい旅になったのは、いちばんに、宿泊したフェアモント・シャトー・ローリエが大変素晴らしかったからだ。

 

 1912年の開業以来、常に王室、国家元首、政財界の要人たちを受け入れてきた、カナダを代表する名門ホテルだ。ゴシック・リヴァイヴァル建築によるその佇まいは、美しいオタワの象徴でもあり、1980年にはカナダ国定史跡にも登録されている。

 

 

まさに城のような佇まいのフェアモント・シャトー・ローリエ。

 

 

左がカナダ国会議事堂、右奥がフェアモント・シャトー・ローリエ。ゴシックリヴァイヴァル建築による見事な調和を織りなしているこの眺めは、零下30度のなか、何分見ていても飽きることがない。

 

 

 

 同ホテルには426のゲストルーム、33の豪華スイートが用意されている。スイートルームの素晴らしさはいうまでもないが、オススメしたいのは、ゴールドラウンジにアクセスできる3~4階のゴールドフロアへの宿泊だ。僕は同フロアの“ゴールドルーム”に宿泊したのだが、新しいホテルの部屋では決して醸し出せない、趣味のよいクラシックな佇まいがとても落ち着いた。ゴールドラウンジでは毎朝ビュッフェをゆっくりと静かに食せ、夕方ホテルに戻ってきたら、アペリティフを楽しみながらひと休み。零下30度のなかをあちこち歩き回ったあとのラウンジでの時間は非常にありがたいものだった。

 

 

宿泊した37㎡の“フェアモント ゴールド キング”。広すぎず、ちょうどよい使い勝手の広さ。クラシックな佇まいが妙に落ち着くのだ。©Fairmont Château Laurier

 

 

ゴールドフロアのゲスト専用のゴールドラウンジ。ここでのビュッフェスタイルの朝食はとても優雅な時間となった。観光で一日を過ごした後は、ラウンジの静かな環境で夕食前アペリティフ。零下30度の世界を歩きまわったあとのラウンジタイムでの寛ぎ時間は本当にありがたい。ちなみにフェアモント・シャトー・ローリエでは持続可能な取り組みの一環として食材は極力地元から仕入れており、使い捨てのプラスチックは一切使わず、無駄を限りなく0にすることを目標にしているという。©Fairmont Château Laurier

 

 

 

 というわけで、ホテルが素晴らしいと、零下30度の世界だろうと、俄然気合いが入ってくる。観光にも熱が入るのだ。

 

 零下30度、体感温度零下40度を下回る2月のオタワ。数字だけで判断するとだいぶビビってしまうが、完璧に防寒して臨めば、寒さを感じることはまったくなく、なかなか体験できない極寒の世界を快適に楽しめる。オタワでの装いはこちらの前編を参考に!

 

 

 

オタワでは充実のミュージアムを回ろう!

 

 オタワ観光で欠かすことのできないのがミュージアムだ。今回は、カナダ国立美術館、カナダ歴史博物館、カナダ自然博物館の3つを訪れたのだが、それぞれが大変素晴らしかった。ひとつずつ見ていこう!

 

 

 

カナダ国立美術館

 

 

 

 最初に訪れたのは、フェアモント シャトー ローリエのすぐ近く、徒歩7-8分で行ける カナダ国立美術館。1920年~1933年の13年間、新たな芸術の創造を志して集まったカナダの風景画家7名からなるユニット“グループ・オブ・セブン”や、彼らに大きな影響を与えたトム・トムソンの絵画、先住民族イヌイットの伝統工芸品、ゴッホやルーベンス、ゴーギャン、クリムトといった巨匠たちの作品が展示されている。大変素晴らしい空間のなかで貴重な作品たちをゆっくり鑑賞できるので、ここでは丸1日だって過ごせるはずだ。

 

 西洋に倣った従来のカナダの絵画に対する違和感からグループ・オブ・セブンは結成されという。カナダの美術史上で最も重要なアーティストグループともいわれている彼らは、13年間の活動のなかで、風景の中でも荒野を描いた先品を数多く残している。既成概念を破ってそれまでにない色彩で描かれた彼らの芸術表現をきっかけに、カナダでは芸術のナショナリズムが生まれていったという。そういった解説を聞きながらゆっくり鑑賞できたことはとても貴重な体験となった。

 

 

 

 

 モントリオールの浴びた“67団地”やシンガポールの“マリーナベイサンズ”を手がけた建築家、モシェ・サフディがデザインした同館は、たくさんのガラスで光をたっぷり取り込み、外と中の世界を一体化させたような空間を生み出している。メインエントランスからコロネードの傾斜の長いアプローチが、これから鑑賞する作品への心地よい期待感を抱かせてくれる。

 

 

スコッチバンク大ホールの高くそびえる窓からは、カナダ国会議事堂、オタワ川、ガティノーヒルズが縦のフレームに収められる。

 

 

 

カナダ歴史博物館

 

 

 

 次に訪れたのは、オタワ川を渡ってケベック州のガティノ―側にあるカナダ歴史博物館だ。歴史、考古学、民族学、文化研究の専門知識を発信しており、壮大なグランドホールやファースト・ピープルズ・ホールでの常設展示に加え、カナダと世界の歴史と文明をテーマにしたエキシビジョンを開催しており、毎年120万人以上の来館者が訪れている。

 

 

 

 

 カナダには今日でも630を超える先住民族が存在し、その割合はカナダの全人口の約4%にもなる。カナダ歴史博物館では先住民たちと話しあって展示内容を決めているそうで、それだけに内容は大変濃密で、実に見応えのあるものとなっている。この日はウィンタールードのイベントに合わせて先住民が集まってパウワウ(舞踏集会)のイベントが開かれていた。ここは単なる博物館というだけでなく、先住民とコミュニケーションを図りながら彼らの文化を伝えていく、共存のための貴重な場でもあるのだ。

 

 

 

カナダ自然博物館

 

 

 

 最後に訪れたのが、カナダ自然博物館。2010年に改装によって生まれたガラスの大きなランタンタワーは、1915年に建物から取り外されなければならなかった石の塔を新しいかたちで復元したものだ。バロック式の建物とのコントラストが大変ユニークで、フェアモンント・シャトー・ローリエ同様に、ここもカナダ国定史跡に定めれている。

 

 

 

 

 展示のなかで特に興味深かったのが、1Fの恐竜コーナー。カナダで発掘された恐竜の化石が全身骨格でズラリと並ぶ世界でも有数のコレクションの中に身を委ねていると、想像力豊かに太古の恐竜時代に思いを馳せてしまう。恐竜の模型のコレクション、シロナガスクジラの全身骨格展示なども、見応えたっぷりだ。約35000点が展示されているが、ここは国の研究機関でもあり、その展示数は全コレクションの1%に過ぎないという。

 

 以上、今回回ることができたのは、上記3つであった。展示品、カナダの歴史と文化、建築など、さまざまな観点から楽しみ、学ぶことができるので、オタワに来た際はぜひ訪ねていてほしい。

 

 

 

オタワは食も楽しい、おいしい!

 

 さて、オタワを訪ねる楽しみは、もうひとつグルメである。オタワ川を渡れば、フランス語圏のケベック州であり、フレンチをベースに独自の発展を遂げた料理の数々は、我々の舌を大いに楽しませてくれる。訪れた店はどれも大変素晴らしかったので、その中のいくつかを紹介したい。

 

 

 

 

 フェアモント・シャトー・ローリエからすぐにある「ソーシャル(Social)」というレストランで食した、同じオンタリオ州の地元マリポーサファーム産の鴨のコンフィ“Mariposa Duck Confit”はカボチャのピュレの甘味とのコンビネーションが素晴らしく、超絶美味だった。

 

 

 

 

 ヒップな雰囲気を楽しみたいなら、もともと銀行だったところをレストランにした「リヴィエラ(Riviera)」がオススメだ。この天井高は、日本ではなかなかお目にかかれない。超クール!

 

 

ポテトチップスとトリュフを添えたビーフタルタル。

 

 

ピンクシュリンプ、ホタテ、カリカリベーコン、ポテトが入った、食べ応えたっぷりのシーフードチャウダー。

 

 

で、メインはアルバータ産のラムシャンク。とても柔らかく上品な味わい。

 

 

店内の雰囲気も料理も、パリのブラッスリーに入り込んだかのような「メトロポリタン ブラッスリー&レストラン(Metropolitain Brasserie & Restaurant)」。宿泊していたフェアモント・シャトー・ローリエから徒歩1分。

 

 

鴨のコンフィ。盛り付けの雰囲気といい、塩分の聞き具合といい、まんまパリ。ル・ピュイ産のレンズ豆、マルサーラソースという王道のクラシック! うまし!

 

 

 

ひと皿ごとにレストランを回るグルメツアーという裏技も!

 

 短い滞在期間のなかでなるべくたくさんの店を回りたい方には、「セ ボン(C’est Bon)」が企画しているグルメツアーがオススメだ。さまざまなコースが用意されているが、僕は3軒のレストランを1皿ずつ楽しんでホッピングするツアーに参加した。こちらは2名から申し込み可能で、モーニング、ランチ~アフタヌーン、ディナータイムいずれの時間帯にも対応しており、カジュアル、ファインダイニング等のリクエスト、アルコールを含めたパッケージオプションなどもある。少人数での参加の場合、ガイドとともにより親密な体験ができるのが嬉しい!

 

 

 

 一軒目は「Restaurant e18hteen」

 

 

伝統的なフランス料理にカナダの季節感を取り入れた“カナディアン フリースタイル キュイジーヌ”を楽しめるE18hteenでは、長年にわたって関係を築いてきた地元の農家から取り寄せた食材をたっぷり使用。ここではステーキタルタルを楽しんだ。ペアリングのワインはCenterstoneのピノノワール。

 

 

 

 

 セ ボンのステファニーさんが次に連れていってくれたのは、仕事終わりの人気シェフたちが夜な夜な集まるという「Oz Kafe」。おいしいひと皿を楽しむために、マイナス30度のオタワの夜をホッピングするなんて、実に粋じゃないか! ワクワクしてくる!

 

 

さすがシェフたちが食べに集う店だけあって、出てきたコーニッシュヘンのロースト“Pepper Crusted Cornish Hen”は美味の極みだった。こちらは根セロリのピューレとともに。スモークされたフライドフィンガーリングポテトも格別のおいしさ!

 

 

 

 

 デザートの店として選ばれたラストの店は、レバノン料理の「Fairouz café」。人口の26%が外国生まれで、さまざまな国をルーツにもつ人たちが集まっているオタワでは、本名カクテキなレバノン料理も楽しめるのだ。

 

 

 

 

 ウィンタールードの期間中は市内でさまざまなイベントが催されているが、オタワ ウィンター ジャズ フェスティバルもそのひとつ。サマーズ ジャズ フェスティバルよりは規模はずっと小さくなるが、零下30度の世界と半袖でもOKなライブの熱気ムンムンな世界とのギャップを楽しめるのは、冬フェスならでは。今回はトロントを拠点にしているアフロキューバンジャズの“OKAN”(本当に個人的に大好きだった!)のライブを見ることができた。カナダへの出発前からずっと楽しみにしていただけあって、テンション爆上がり。最高にエキサイティングなひとときを楽しめた。というわけで、オタワのウィンタールードを楽しみに行かれる方は、ジャズフェスの日程を事前にチェックして、ぜひ出かけてみてほしい。

 

 

 

 

 さて、オタワ滞在中、幸運なことに体感温度零下41度という世界を味わうことができたのだが、また冬のオタワを訪れたいかと言われたら、イエスと即答だ。しっかり防寒対策していけばまったく寒さを感じないし、人々は皆陽気でフレンドリーで、だからどこに行っても楽しいし、美術館は見ごたえたっぷりだし、食も大変おいしいし、世界文化遺産となっているリド―運河のスケートを思いっきり楽しみたいし、ジャズフェスでまったりしたいしで、もうオタワ最高!

 

 

 

 

 次回はオタワからクルマを飛ばして出かけたフィンランド式サウナ“Vettä Nordic Spa”をご紹介したい。ここもまた、抜群によかったです!

 

 

取材協力

オンタリオ州観光局  www.destinationontario.com/ja-jp/japan

カナダ観光局  https://jp-keepexploring.canada.travel/