Ventile Coat
生涯着られる最強コートは
ベンタイル・コットン
February 2021
英国空軍(ロイヤル・エア・フォース)のアウター用に開発されたベンタイル・コットン。
ミリタリー発祥のベンタイル・コットンを素材にしたコートが、存在感あるタフな男をつくり出す。
text katsumi yabe(UFFIZI MEDIA)
photography jun udagawa
styling akihiro shikata
優雅なスタイルでも、タフなルーツはミリタリーにある
トレンチコートやフィールドジャケットなど、紳士が愛用するアウターはミリタリーウェアから派生したデザインが多い。伝統的な素材使いや機能的なディテールを残したうえ、現代のライフスタイルに合わせて進化させることで、より魅力の詰まったアイテムになるからだ。
ベンタイル・コットンもミリタリーを起源とする素材だ。1943年、英国空軍のパイロットが着用するアウター用の素材として開発されたベンタイル・コットンは、繊維長の長いコットン原糸を超極細に紡績し、高密度に織り上げてつくられる。その結果、撥水性や防風性に加え、通気性にも優れた機能的な素材となる。
アウターの素材といえば、ワックスやオイルドコットンのほうがよりメジャーだ。ベンタイル・コットンが広く知られていない理由は、稀少な綿糸を原材料とすることから、あまり量産できないためである。つまり、ベンタイル・コットンは、通好みの自然な上質感をアウターに投影する素材であり、コシのある生地感や適度なツヤを備え、ミリタリーアイテムをより優雅なスタイルにつくり上げるのだ。
ミリタリーの要素を持ちながら、モダンな男らしさを表現できる最強のコートを見極めるには、素材がベンタイル・コットンであるかがポイントになる。
LID TAILOR
往年の英国紳士を彷彿とさせるクラシックなスーツを得意とするリッド テーラーが、待望のレディメイド・ブランドとなるエル・アイ・ディーを展開。これがそのトレンチコートだ。ベンタイル・コットンを使い、1980年代のディオールのモデルから着想を得た、ゆったりとしたシルエットを描くスタイル。エレガンスが漂う大人の雰囲気に加え、ガンフラップやチンウォーマーなど、細部も洒落ている。
ベンタイル・コットンのなかでもヘビーウエイトの素材を使用し、男らしく存在感のある佇まいを表現。胸元のボタンを開け、コートの襟を立て、ネイビーのコートに対して赤いスカーフで着こなしのアクセントを楽しむのも粋だ。
着脱可能なライニングは、英国ラヴァット社製のツイードを使用。春、秋、冬とさまざな季節で活躍しそうだ。ネイビーの他2色あり、全5サイズで展開。¥145,000 Lid Tailor
HACKETT LONDON
ハケット ロンドンの創設者で英国ファッションを知り尽くした“ミスター・クラシック”こと、ジェレミー・ハケット氏のワードローブを再現した「ジェレミーズワードローブ」の1着。正統的なバルカラーコートにベンタイル・コットンを使用。裏地は、白と青の鮮やかなストライプだ。¥170,000 Hackett London
ANATOMICA
1枚の生地を筒状にしたシングルラグランスリーブや風の侵入を防ぐチンウォーマー、貫通式のスロテッド・ポケットなどのディテールを備えた、古きよき時代のトレンチコートを思わせる1着。高密度に織り上げたベンタイル・コットンが、着るほどに身体になじむ感覚をじっくりと楽しめる。¥175,000 Anatomica
2018年8月3日に公開された記事を再掲載したものです。
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