Tualatin Valley – Portland, Oregon
まだ見ぬオレゴンの魅力
December 2018
〜秘境のワイナリーを訪ねて〜
2.Montinore Estate
“宇宙の力”を利用して
造られる極上ワイン
1982年に設立されたモンティノア・エステートは、フォレスト・グローブに位置し、バイオダイナミック農法によって栽培されたブドウを用いてワインを生産しているワイナリーである。
バイオダイナミック農法というのは、簡単にいうと、オーガニックのさらに上をいく有機農法。1924年にルドルフ・シュタイナー氏によって提唱され、ヨーロッパではビオディナミック農法と呼ばれて定着しつつあるものだ。
「すべての生命は地球上だけで完結しているのではなく、地球を含む宇宙の営みから影響を受けて調和しながら生きている」という考え方を基盤とし、太陰暦をもとに農業を行う。種まきや施肥、収穫などの時期を、月の満ち欠けや天体の動き、地球との位置関係によって決めていくのだ。いわば、宇宙の力を利用して栽培する農法である。
1998年よりこのワイナリーに参画し、2005年より前オーナーから後を継いだ現オーナーのルディ・マルケージ氏は、このバイオダイナミック農法をニューヨークで学んだあと、この地で積極的にブドウ栽培に取り入れてきた。通常の栽培方法に比べて厳密で作業量も増え、非常に手間もかかるが、この農法を取り入れたことで畑は健康な状態となったという。
「見てわかるほどに元気になりました。それまではブドウの粒の大きさにムラがありましたが、すべて均一な大きさで育つようになった。味についてもまったく違ったものになりました。その土地の土壌の個性が引き出されるようになったのです。このように変化するまで5年近くかかりました」
ピノ・グリ、リースリング、ゲヴュルツトラミネールなど、品種数は白が多いが、全体の65%はピノ・ノワールを生産している。ピノ・ノワールは土壌の個性の違いが如実に現れるので、同じピノ・ノワールでも、収穫する畑が200メートル離れるだけでまったく異なる味わいとなる。そのため、このワイナリーのものだけでも異なるテロワールによるさまざまな種類のピノ・ノワールを味わうことができる。12時間のみ皮ごと発酵させて造る100%ピノ・ノワールのロゼはぜひ味わってみてほしい。
バイオダイナミック農法はブドウ栽培が安定してくると逆にコストダウンにつながるため、これだけのクオリティでありながらも、意外なほどに手の届きやすい価格なのが嬉しい。
Montinore Estate
3663 SW Dilley Road
Forest Grove, Oregon 97116
3.Hawks View Winery
カリフォルニアの名産者が
手がける新鋭ワイナリー
シャーウッド近郊に位置するホークス・ヴュー・ワイナリーは、まだ比較的新しいワイナリーだ。1989年からブドウ栽培をはじめ、多くの有名なオレゴンワイナリーに高品質なブドウを提供してきたが、2007年にワイナリーとしてスタート。2017年よりカリフォルニアでワイナリーを所有するポンテ・ファミリー・エステートが新たなオーナーとなり、家族で経営している。
大きなプールやホテルをも所有し、カリフォルニアワインを生産するポンテ氏がなぜオレゴンの小さなワイナリーを購入したのか。それは、カリフォルニアと同じ西海岸側にありながら、それとはまったく違うワイン造りができるから。昼は暖かいが、カリフォルニアと違って朝晩が極端に冷え込むこの土地の気候は、非常に繊細でカリフォルニアでは栽培が難しい品種の栽培にも適しているのだ。
主にピノ・グリとピノ・ノワールを中心に生産しており、中でも珍しいのは、ピノ・ノワールから造る白ワイン。90分という短時間のみ皮と果汁を漬けこむことで生産している。
また、発酵を意図的に早く進めさせ、8週間ほどで飲める状態にさせる(ボージョレー・ヌーヴォーと同様の)カーボニック・マセレーションという手法を用いたワイン造りも行なっている。まだ日本には代理店がないため未上陸だが、オレゴンワインの新たな可能性を感じさせる新鋭のワイナリーに注目したい。
Hawks View Winery
20210 SW Conzelmann Road
Sherwood, OR 97140
取材協力:トゥアラティンバレー・ワシントン郡観光局、デルタ航