THE RAKE FILM FEST: AMERICAN GIGOLO
映画『アメリカン・ジゴロ』でアルマーニが見せたもの
September 2022
ごく稀にメンズウェアに革命的な影響を与える映画がある。
『アメリカン・ジゴロ』(1980年)は、まさにそのひとつといえる。
by FREDDIE ANDERSON
1980年の大ヒット作『アメリカン・ジゴロ』ほど、メンズウェア・テーラリングの革命を感じさせるものはない。その大半の衣装デザインは、当時最も先鋭的だったデザイナー、ジョルジオ・アルマーニが手がけており、パワフルでセクシーなメンズウェアの新時代を切り開いた。核となったのは、フォーマルウェアとカジュアルウェアの見事な連携だった。
アルマーニは、主人公ジュリアン・ケイ(リチャード・ギア)にアンコンの服を着せることで、誰よりも早く時代の気分を先取りした。彼はルビナッチなどのテーラーが50年以上前から試みてきた裏地や詰め物を少なくする技術を応用しただけでなく、より軽い生地を用いて、ギアが肩で風を切って街を闊歩できるようなスタイルを作り出した。
オンタイムはゆったりとしたテーラードスタイルを着こなし、洗練された雰囲気を漂わせるギアだが、オフタイムにはもっとカジュアルな装いを見せている。
ミシェル・ストラットン(ローレン・ハットン)との森の中の官能的なシーンでは、ハイライズのデニムジーンズと派手な黄色の長袖ポロシャツを着用しているが、このスタイルは特に印象的だ。フロントポケットのないスタイルで、ジーンズが実用着からカジュアルなトレンドのシンボルへと進化していた時代を示している。
ジョルジオ・アルマーニは、メンズ・ファッションの革命的なヴィジョンをスクリーンに映し出そうと考え、それを見事に実行に移した。彼は男らしさというコードを書き換えたのだ。そしてそれは、1980年代の時代精神そのものになった。だからこそ、この作品は映画の中のファッションにおいて最も重要な作品のひとつとなったのだ。