THE RAKE CINEMA: RAKISH WINTER FILMS

THE RAKEのシネマ・ガイド:冬に見たい映画BEST5

December 2022

快適なソファに座り、ブランデーをもう一滴注ぎ……。クリスマス・ムービーの世界にどっぷりと浸る季節がやってきた。THE RAKEが冬におすすめしたい映画をご紹介しよう。

 

 

by CHRIS COTONOU

 

 

『素晴らしき哉、人生!』(1946年)より。

 

 

 長年にわたり、クリスマス・ムービーといわれる映画の数々は、愛と優しさの物語を通じて、家族をひとつにまとめてきた。しかし、中にはそれをちょっと信じられないようなスタイルで実現している映画もある。クリスマス・ムービーには、さまざまな作品が含まれるが、これから紹介する作品はレイキッシュなクオリティを備えているものばかりだ。エレガントで、タイムレスで、知性に溢れ、そして見ていて温かな気持ちになれる。これがTHE RAKEが選ぶクリスマス・ムービーのベスト5だ。

 

 

 

 

『メトロポリタン』(1990年)

 

 ホイット・スティルマン監督の初期の代表作。彼はこの映画で監督・脚本・製作を担当し、アカデミー脚本賞にノミネートされた。1990年代の幕開けにふさわしい作品で、マンハッタンの若くエレガントなプレッピーたちの生活と不安を描いている。

 

 クリスマスに彼らは集まって暖炉のそばで哲学を語り、ブラックタイのイベントに出席し、自分の将来について思い悩む。ここで描かれるニューヨークは、まるでブルックス ブラザーズの広告のような世界だ。その脚本は悪魔のように面白く、美しい。まさにアイビー的といえる青春映画だ。

 

 

 

 

 

『アパートの鍵貸します』(1960年)

 

 ジャック・レモン演じるバド・バクスターは、上司の愛人との密会のためにアパートの部屋を時間貸ししていた。しかし、ひとつ困ったことが起きてしまう。バクスターは、クリスマスに愛人のひとりと恋に落ちてしまうのだ。

 

 1960年代のニューヨークの風景が美しい。ブラウンストーンが貼られたビル群がタングステンライトで美しく照らされている。そして当時のオフィスのインテリアは、何度見てもお洒落で興味深い。パーティーシーンの装いは、TVドラマ『マッドメン』に出てくるドレープスーツやスリムタイを彷彿とさせる。バクスターのシルクのパジャマ姿は、この感動的な映画の中で、サルトリアル的に一番の見所といえる。

 

 

 

 

 

『ホリデイ』(2006年)

 

 間違いなく現代のクリスマス映画のマスターピースで、温かみに溢れている。クリスマス休暇の間、お互いの家を交換し合う「ホーム・エクスチェンジ」をしたふたりの女性の物語で、舞台はロサンゼルスと英国サリー州の小さな村とを行き来する。キャメロン・ディアスと恋に落ちるジュード・ロウは、典型的な英国人らしい、だらしない格好をしている。

 

 喧騒のハリウッドとロサンゼルス、素朴で静かな英国の田舎の対比が面白い。過密な生活に翻弄される私たちに、幸せな休息を与えてくれる作品だ。

 

 

 

 

 

『キスキス,バンバン』(2005年)

 

 クリスマスの陽気なハリウッドを舞台にした現代版フィルム・ノワール。俳優になりすました泥棒(ロバート・ダウニーJr)が、若いスター女優の死をめぐる捜査に巻き込まれ、レイモンド・チャンドラー的な活躍を繰り広げる。

 

 素晴らしいクルマやレストラン、ビバリーヒルズの豪華な別荘などが次々と出てくるスタイリッシュな映画で、観客は華やかな映画業界の暗い裏の世界を垣間見ることになる。現代的で、予想外のクリスマス映画だ。ユーモアのセンスも光っている。

 

 

 

 

 

『素晴らしき哉、人生!』(1946年)

 

 クリスマスといえば、たくさんのプレゼントやご馳走だけではない。本当に大切なもの、それは家族だ。このフランク・キャプラ監督による涙を誘う名作は、多くの人に何度も観られてきた。この作品は時代を超越している。

 

 ジミー・スチュワート演じる実業家が自殺を決意したとき、空から天使が降りてきて、もし彼が存在しなかったらどんな世界になっていたかを教えてくれるというストーリー。感謝に関する賢くエレガントな寓話であり、これほど愛すべきテーマを持つ映画もないだろう。