THE IMPRACTICAL CHOICE: RIVA ARISTON 576

海の盟主、リーヴァ アリストン576

June 2021

今日に至るまで、リーヴァはラグジュアリー・スピードボートの頂点に位置しており、戦後の最も象徴的なモデルであるアリストンは、現在においても、ヴィンテージ・ボート市場で不動の人気を誇っている。

 

 

by natasha drax

 

 

 

 

 このエレガントなモデルがもたらす“眼福”を、言葉で表現することは難しい。この艇のピュア・クラフツマンシップを正当に評価できるのは、生みの親である人物=カルロ・リーヴァだけかもしれない。

 

 伝説のヨットエンジニア、デザイナー、企業家であるカルロ・リーヴァは、かつてアリストンを「愛をもってデザインされ、サラブレッドの馬のように強く、純粋である。これは“ロード・オブ・ザ・シー”だ!」と評した。

 

 2017年の初めに惜しくも亡くなってしまったカルロは、数多くの崇高で優れたモデルを作ったが、アリストンが特にお気に入りのひとつだった。よく観察してみると、その理由は不思議ではない。

 

 

 

 

 テーパードしたリアデッキと曲線的な船体は、滑らかでエレガントな美しさを醸し出しており、シンメトリーなラインが洗練されたエクステリアに沿って視線を導く。他のモデル、例えばアクアラマなどと比べるとやや小ぶりに見えるが、2列のレザーシートとデッキを覆う取り外し可能なクッションを備えており、地中海の太陽の下で“チルアウト”するのに最適だ。

 

 写真のアリストンは、リノベーションされていないオリジナルの状態を保っている。クリスクラフト社製のエンジンは、それ自体がスペクタクルだ。スピード、クラフツマンシップ、そしてラグジュアリーなライフスタイルの代名詞ともいえる、美しく造形された、完璧な機能を備えたハードウェアだ。

 

 さらに、洗練されたマホガニー材、リーヴァのトレードマークであるホワイトとアクアマリンのインテリア、調整可能なソフトトップなど、すべてが製造された1964年にさかのぼり、当時の魅力と贅沢さを伝えるタイムカプセルとなっている。

 

 

 

 

 ハリウッドスターや社交界の名士、王族たちは、夏の暑さや混雑したビーチから逃れるために、スピードボートでコート・ダジュールをクルーズし、外洋の涼やかな風とプライバシーを楽しんでいた。

 

 ウッドデッキでくつろいだり、水上スキーをしたり、キューバ産の葉巻を吸ったりして、終わりのない享楽的な日々を過ごしていた。夜はグランドホテル デュ カップ フェラでの豪華な晩餐会に参加したり、ビーチサイドの高級レストランで食事をしたりしていた。

 

 ピーター・セラーズ、ブリジット・バルドー、ショーン・コネリーなど、夏のフレンチ・リビエラを楽しむための相棒としてリーヴァを愛したスターたちは、枚挙に暇がない。

 

 もし幸運にも、このまったく実用的ではないが、素晴らしくラグジュアリーな艇を購入することができれば、その人はもはやノスタルジーに浸る必要はなく、現代に“ドルチェヴィータ”を再現することができる。

 

 リーヴァの木製のホイールを手にすれば、まさにロード・オブ・ザ・シーになったような気分を味わえることは間違いないだろう。

 

 

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