THE IMPRACTICAL CHOICE: CITROËN DS

シトロエンDS

Monday, June 21st, 2021

フランス自動車史上、最も偉大な量産車にして、最高の異端。超自然的な力と魔法のような乗り心地を持つクルマを見てみよう。

 

 

by charlie thomas

 

 

 

 

 シトロエンDSは、フランスの最も偉大な量産車のひとつだ。世界的には2CVの方が有名で、バゲットやバスクシャツと同様に、フランスのシンボルとなっているが、DSはよりマニアックな人々の間で人気がある。

 

 ちなみに1967年に公開されたジャン=ピエール・メルヴィル監督の傑作犯罪映画『サムライ』(1967年)では、アラン・ドロンが演じる殺し屋がこのクルマを愛し、1台だけでなく2台も盗んでいる。

 

 DSは、1955年のパリモーターショーで発表され、初日だけで1万2,000台を超える購入希望者が殺到した。シトロエンの前衛的名車“トラクション・アバン”の後継車として登場したDSは、デザイン的にも技術的にも驚くほど未来的なものであった。

 

 トラクション・アバンや2CVで才能を発揮したフラミニオ・ベルトーニが設計したDSは、長く静かで“物憂げな”マシンであった。有名な油圧式サスペンションで優雅に飛び跳ね、多くの人がその乗り心地を“マジック・カーペット”と評した。

 

 このサスペンションは、当時としては革新的なものだった。50年代半ばには、四隅に独立したサスペンションを持つ車はほとんどなかった。しかしシトロエンは、地形に応じて自動的に水平になる油圧システムを導入し、フランスのでこぼこ道でも驚くほど滑らかな走りを実現した。ディスクブレーキを搭載した最初の量産車のひとつでもあり、20年間のロングセラーで、150万台近くを販売した。

 

 DSは、当時のシトロエンが最も先進的なブランドであることを示すものであり、エグゼクティブ・カーは技術的に進んでいなければならないというトレンドを生み出した。メルセデス・ベンツは信頼性が高く、安全なSクラスでこのカテゴリーを開拓したが、DSは豪華なドイツ製クルーザーに代わる魅力的な選択肢となった。

 

 1962年、パリで12人の武装集団に待ち伏せされていたシャルル・ド・ゴール大統領を暗殺から救ったのもDSであった。追跡中、完全なノーマル車であったDSは銃弾を浴び、リアウィンドウは粉々になり、タイヤは4本ともパンクしたが、優秀なサスペンションと親愛なる大統領への超自然的な忠誠心をもって、大統領を守り抜いた。

 

 自分に問いかけてみて欲しい。もしあなたが次にクルマを買うとしたら、最新だが、安物のつまらないプラスチック製の箱を買うだろうか? それとも、大統領を救い、偉大な国フランスの誇り高いシンボルである一台を買うだろうか?