THE CRAFTMANSHIP OF ELEGANCE 01

生地のプロフェッショナルたちが語る、いま人気の生地の潮流とは

June 2023

text yuko fujita
photography setsuo sugiyama

鈴木 手持ち感が素晴らしいですよね。ただ、生地のよさってこれだけではわからないですし、用途や嗜好によっても違ってくる部分はありますけれど、私はある程度光沢がある生地のほうが高級感あって好きですし、あとは色合いとかもね、この紺の感じとか、全体のバランスから判断してドブクロスはとてもいい生地だと思いました。

 確かにハリがあって肌触りも最高ですし、ファインでより体に馴染むので、フィーリングとして実際の目付けより軽く感じるんじゃないかな。これがもっとラフな原毛を使った生地だとより重く感じると思うんですけど、これはその逆です。

小澁 私が今日着ているスーツの生地はドブクロスなんですけど、着ていて重さを感じるということはまったくないですね。

THE RAKE  次いきましょう!

 私のオススメのもうひとつの生地は同じハリソンズの「イスカ」です。今年は他のメーカーを見てもリネン、特にリネンウールが出てきているんです。こちらはリネン55%、ウール45%で230g/mのサマーウィーブで決して厚くはないのですが、クリスピーなタッチで実用性が大変高く、しっかり仕立て映えする生地に仕上がっています。

岸氏 オススメの生地:HARRISONS/Isca

今春夏注目したいリネンウールファブリック72番手双糸のファインメリノを経糸に、エコ認証を受けたサステナブルなフランス産リネンを緯糸使いして織り上げた、リネン55%、ウール45%によるラグジュアリーでリラックス感あふれるリネンウールファブリック。リネンの清涼感とウールの機能性をかけ合わせたことで、理想的なサマーファブリックに仕上がっている。ありそうで少ないリネンウールは、今年注目の素材だ。230g/m。

THE RAKE 確かに今年の春夏はリネンウールがとても新鮮な気がします。同じ号で、鴨志田さんもリネンウールのスーツを提案していましたし、これはひとつの流れとしてありますよね!

 服好きの方は100%リネンも好んで着られますが、大味なシワが気になる方もいるでしょうし、ただ、実用性を考えると、ビジネスで着るとなったときに半分ウールが入っていると、だいぶスマートな印象になり、一気に扱いやすくなりますのでオススメです。

小澁 そうですね、一気に扱いやすくなりますよね。私が知っている限りではリネンウールの生地はそんなにはないので、そういった意味でも面白いと思います。

<THE RAKE 小澁さんのほかのオススメ生地は何ですか?

小澁 英国のハーディー・ミニスの「QZ²」ですね。スーパー150’sのウールをサヴィル ロウ ヤーンカウントといわれる52番双糸にして密に織り込んでいるユニークなシリーズになります。それと、チャールズ クレイトンのスーパー160’s 4プライです。綾目がしっかり立っていて素朴な感じで、肉厚でウェイトもしっかりあります。秋冬向けでドブクロスと似ているところがありますが、こちらのほうが目付けがしっかりしていてマットな感じです。

小澁氏 オススメの生地:HARDY MINNIS/QZ²

スーパー150’sを52番双糸で織り上げたマスターピース英国の名門ハーディー ミニスの「QZ²」は、スーパー150’sウールを使用。この手の極細ウールは高番手の糸にして織り上げるのが一般的だったが、あえてサヴィル・ロウ番手といわれる52番の太い双糸にして、しっかりと織り上げている。よって、ウェイトは340~360g/mある。昨今のラグジュアリーファブリックの王道的なタッチで、滑らかさの中にしっかりハリとコシを備えている。

小澁氏 オススメの生地:CHARLES CLAYTON/Super 160’s 4Ply

他であまり見られない綾織りのスーパー160’s 4プライ英国ブラッドフォードの名門チャールズ クレイトンの、スーパー160’s 4プライ。光沢が抑えられたマットな質感としっかり綾目が立っていて、素朴な雰囲気が感じられる。肉厚でウェイトもしっかりある。スーパー160’sのしなやかさはもちろんのこと、4プライの糸が生み出すハリとコシも素晴らしく、いかにも仕立て映えしそうだ。英国の良心を感じさせる非常にアンダーステイトメントなファブリックである。

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