THE CRAFTMANSHIP OF ELEGANCE 01

生地のプロフェッショナルたちが語る、いま人気の生地の潮流とは

June 2023

text yuko fujita
photography setsuo sugiyama

THE RAKE 鈴木さんのオススメも教えてください。ドーメルといえば、今や15.7(フィフティーン・ポイント・セブン)は避けて通れないと思いますが(笑)。

鈴木 今年の新作である「15.7 トニック」が、まずとても評判がいいんです。15.7マイクロンのウールを使用しているのでそう命名されたのですが、ウールの細さはスーパー160’sに相当します。経糸は15.7の4プライ、緯糸は3プライのキッドモヘアで織り上げていて、両社のいいところがとてもいいかたちで溶け合っているというか、15.7のラグジュアリーのタッチとモヘアの質実剛健さ、仕立て映え感が上手く引き出されているなと、自画自賛しています(笑)。

鈴木氏 オススメの生地:DORMEUIL/15.7 Tonik

経糸は15.7 4プライ 緯糸は3プライ キッドモヘア経糸に15.7 4プライ、緯糸に3プライ キッドモヘアを用いて織り上げた340g/mの生地で、15.7がもたらすしなやかさとしっとり感の中に、3プライキッドモヘアが生むハリとコシがしっかり感じられ、両者が素晴らしいかたちで融け合っているドーメルの新作服地。見事な仕立て映え感を備えた生地で、モヘアの強い光沢を抑えた優しい艶感がとても上品な印象だ。詳しくはこちらの記事を参照。

小澁 「15.7 トニック」のことは今日初めて知ったんですけど、実際に拝見して触って、本当に素晴らしい生地ですね! トニックの風合いの中にしっかり15.7が生み出すラグジュアリーなタッチが感じられて、その絶妙なバランス感にびっくりさせられました。最高に仕立て映えしそうです。15.7は4プライや6プライの生地も素晴らしいですし、お客様からの評判もとてもいいんです。

鈴木 15.7はもともと2プライの生地からスタートし、そこからブリティッシュを全面に出してしっかり感を出した生地を作ろうということで開発したのが「15.7 4プライ」になります。4プライはクリアカットとサキソニー ミルドの2タイプがあり、このふたつが今の15.7を代表する人気服地となっています。そこから撥水機能をもたせた「アーマード」と名付けた6プライ、シャリ感を出したトラベラー生地の8プライ(ペコラ銀座の佐藤氏がIssue51のP44にて着用)も発表しました。さらに昔のドーメルとの融合をさせてみようということで「15.7 ブリオ」という夏のモヘアファブリックを打ち出し、そして今年、集大成としてドーメルを代表する名作生地「トニック」と融合させた「15.7 トニック」を発表したのです。

鈴木氏 オススメの生地:DORMEUIL/15.7 4ply Saxony

ビスポークの世界で大人気の極上タッチの4プライサキソニースーパー160’sに相当する15.7マイクロンのウールを双糸にし、その双糸どうし掛け合わせた4プライの糸を経緯ともに使用して織り上げた服地。素晴らしい原毛が生むしなやかでラグジュアリーなタッチと光沢、ハリとコシも備え、今やすっかりドーメルを代表する人気生地に。クリアカットの4プライ(320g/m)と起毛させた写真のサキソニーミルド仕上げした(350g/m)2タイプがある。

鈴木氏 オススメの生地:DORMEUIL/15.7 6Ply Armoured

撥水機能をもたせたスーパー160’sの6プライ大人気の「15.7 4プライ」を進化させ、2020年の春に登場した、経糸・緯糸ともにスーパー160’sに相当する15.7マイクロンのウールを6プライにした糸で織り上げられている(330g/m)。防シワ性・シワ回復力にも優れたトラベラー機能を備え、ナノ加工で撥水機能をもたせていることから“鎧をつける”という意味でアーマードの名を冠している。15.7シリーズはほかに8プライの生地もあり。

THE RAKE  小澁さんのオススメ生地を教えてください。

小澁 ジョン クーパーの「ドブクロス」は素晴らしいと思います。スーパー140’sがベースでカシミアとシルバーミンクが少し入っている生地なんですけど、15.7は凄く光沢があってラグジュアリーでかつ丈夫で幅広くオススメできますし、マットな素材を好む方にはゴールデンベールは光沢が抑えられていてそれはそれで品がよく、「ドブクロス」はちょうど中間くらいの位置づけの生地かなと私の中では捉えています。目付けは340g/mで、そこそこ綾も立っているので、そこまで高級生地という印象はないんですけど、わかる人にはわかる感じがウケていて、私のところではいちばん人気の生地ですね。

小澁氏 オススメの生地:JOHN COOPER & SON/Dobcross

世界に14台のみ現存する旧織機で織られたウールスーパー140’s&カシミア&シルバーミンクを経糸・緯糸ともにあえて60番双糸のしっかりした糸にし、1800年代後半から1960年代まで生産されていた超低速織機“ドブクロス ルーム”にて織り上げた英国ジョンクーパー社の「ドブクロス」。極上のヌメリ感をたっぷり備え、そのタッチは非常にしっとりしていて最高の着心地を味わえる。また、上品な光沢をしっかり備えているのも特徴だ。340g/m。

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