SIXTY YEARS OF BOND: HOW IT ALL BEGAN

ジェームズ・ボンドの60年:すべてのはじまり

October 2022

ショーン・コネリーが「(私の名は)ボンド、ジェームズ・ボンド」という名セリフを初めて発したのは60年前のこと。

伝説的なヒットシリーズとなった007はいかにして始まったのか?

 

 

 

by CHRIS COTONOU

 

 

 

原作者イアン・フレミング(左)と、初代ボンド役を演じたショーン・コネリー(右)。映画シリーズ第1作『007/ドクター・ノオ』の撮影のためジャマイカにて。1962年。

 

 

 

 

『007/ドクター・ノオ』(1962年)によって世界的な映画ヒーロー、ジェームズ・ボンドが誕生し、それから25作が作られ、6人の俳優がボンドを演じてきた。

 

 この007シリーズの長寿を祝い、クリスティーズは特別なオークションを開催。2部構成の公式チャリティ・オークションで、ボンドを象徴するアストンマーティンなどのクルマ、時計、衣装、最新作『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』(2021年)の小道具など、数十点が出品されている。

 

 目玉は、最新作でスタントカーとして使用された銀白色のアストンマーティンDB5のレプリカだ。また、歴代のボンド俳優が実際に劇中で使った品々も展示され、一般公開されている。

 

 これは、半世紀以上も前から英国人スパイが映画ファンに与えた影響がいかに大きいかを物語るものだ。おそらく、原作者イアン・フレミングでさえ、ボンドがこのようなひとつのブランドになるとは想像していなかっただろう。

 

 

 

 

 

 

 1908年にメイフェアに生まれたフレミングは、『サンデー・タイムズ』紙を経て、英国海軍に入り、ソビエトなどで諜報活動に従事した。その職を辞した後、1958年に最初の著作を書き上げた。

 

 このシリーズは、第二次世界大戦中の英国海軍情報将校としてのフレミング自身の経験に基づいている。評論家の批評は散々だったが、ラグジュアリーな隠れ家(フレミング自身が「ゴールデンアイ」と呼んでお気に入りだったジャマイカの入り江など)や、さまざまなスパイ道具、アストンマーティンをはじめとするボンドカーなどが好評となり、本は飛ぶように売れ、映画もまた大ヒットしたのだった。

 

 特に映画はシリーズとして60年間も続き、観る者の心にさまざまな記憶を刻み込んだ。私たちがボンド・シリーズから連想するのは、およそ次のようなものだろう——華やかな女性たち(『007/カジノ・ロワイヤル』(2006年)のヴェスパーなど、運命の人となる場合もある)、ウィットに富んだセリフの数々、サヴィル・ロウで仕立てられたスーツ(THE RAKEが最も注目しているのはここだ)、アストンマーティン、高級腕時計、議論を呼んだマティーニのオーダー、個性的な悪役、モンティ・ノーマンによるクールなテーマソング……。

 

 ジェームズ・ボンドは間違いなく、英国が生んだ最高のスーパーヒーローだ。戦後、国家や文化が劇的に変化していく時代の中で、最高の時も最悪の時も、彼は常にこの国のテイストやトレンドを表現してきた(フレミングは『007/ゴールドフィンガー』の公開と同じ1964年に亡くなるまで、当時のインテリ層から批判を受けながらも、新刊のたびに新しいものを取り入れていた)。

 

 

 

 

 

 

 今日のボンド像は、豹のような色気を持ったショーン・コネリーや、ユーモラスでウィットに富んだロジャー・ムーアとはまた大きく異なっている。私たちが前進するにつれ、架空の英国人スパイも前進してきたのだ。

 

 しかしそれでも変わらないのは、ボンドは私たちにとって常に憧れの存在だったということだ。過去60年間にわたってスクリーンに登場したクルマ、時計、女性、スーツはすべて、物語の一部だった。それらが醸し出すラグジュアリーな世界観こそ、ボンド映画の魅力であり、人気の根源に横たわっているものなのだ。

 

 ジェームズ・ボンドの60年を祝うために、THE RAKEで007のレガシーに関するストーリーをぜひお読みください。