RICHARD ANDERSON: TIME-HONOURED TAILORING

リチャード・アンダーソン:尊敬されるテーラーリング

August 2021

独立したテーラーとして創業者による経営が続いているリチャード・アンダーソン。

彼らは伝統的な技術に現代的なセンスを融合させ、古くから伝わるテーラーリング技術を新たなものとして発展させている。

 

 

by FREDDIE ANDERSON

 

 

 

 

 リチャード・アンダーソンとブライアン・リシャックは、ふたりで100年以上ものキャリアを持つにもかかわらず、現代においてブランドを成功させることがいかに困難であるかを指摘する。

 

 ブライアン・リシャックは、1956年にハンツマンのジュニア・セールス・アシスタントとして門を叩く。以降、キャサリン・ヘプバーン、ポール・ニューマン、グレゴリー・ペックなど、ハリウッド・スターたちに最高級のオーダーメイド・スーツを提供し、素晴らしいキャリアを築いてきた。

 

 

 

 

 同じくハンツマンの卒業生であるリチャード・アンダーソンは、幸運にも伝説的な元ヘッドカッターであるコリン・ハミックに師事してその天賦の才能を開花させ、30歳でハンツマン史上最年少のヘッドカッターとなった。

 

 このような優れたキャリアを持つふたりが、彼らの美学を生かして独立しようと思ったのは、自然な流れだった。アンダーソンとリシャックは、伝統的な技術に現代的なセンスを融合させることで、古くからあるテーラーリングを前進させるべきだと考えたのだ。

 

 2001年の創業時、アンダーソンは自宅のガレージに作業台を置き、リシャックはW1地区の隣の通りにデスクを借りてスタートさせた。しかしついにサヴィル・ロウ13番地に空きが出たので、彼らはそれを手に入れ、それから数年間をかけて改装し、壮大なテーラーリング・ハウスを作り上げた。裁断師たちは今、自然光の下、長いテーブルの上で作業している。ショップはとても印象的である。

 

 

 

 

 ブライアン・フェリーは、生来の芸術的好奇心から、サヴィル・ロウを通りかかると必ずと言っていいほど仕立て屋を覗くのだが、そのひとつが、このリチャード・アンダーソンだ。彼はそのスタイルをこう表現する。「サヴィル・ロウの伝統に、現代的なヒネリを加えたもの」。今は亡き、あのジョージ・マイケルもこの会社の顧客だった。リチャード・アンダーソンの新鮮なハウススタイルや色使いは、英国で最も尊敬されているミュージシャンやエンターテイナーたちにも人気があるのだ。

 

 しかしリチャード・アンダーソンは、イメージが固定化されることを嫌い、もっと幅広い層にアピールしようとしている。彼らのハウススタイルは、長くてきれいなラインで、体のシェイプを強調して美しく見せるようにデザインされている。

 

 

 

 

 

 例えば、ひとつボタンのジャケットは、ロープや肩山のないすっきりとした肩の構造。アームホールは動きやすさを考慮してカットされ、サイドシームに余裕を持って取り付けられる。手作業でハ刺しが入れられ、体にフィットするシルエットとなっている。また、ヒップはサイドシームがややフレア気味になっており、ポケットやベントは通常より少し高めに設定されているのが特徴だ。