LUXURY CRUISE SHIP JOURNEY with Regatta

【後編】クルーズ旅も多様化の時代
小型船「レガッタ」で優雅な冒険旅へ

June 2024

クルーズ旅と聞いて、欧米のリタイアした老夫婦が長い時間かけて世界を回っている姿を思い浮かべる方も多いのではないだろうか。そんなイメージはもう古い。実は今、クルーズ船にも様々なタイプが登場し、ドレスコードなどもなく、時間もお金も有効に使える旅ができると若い世代にも注目されている。今回は、アッパープレミアムクラスの小型船の「レガッタ」に2週間乗って、その魅力を堪能してきた。後編(前編はこちら)はクルーズ旅の満足度を左右する美食と寄稿地ツアーについて紹介する。

 

 

text misa yamaji

photography oceania cruises, misa yamaji

 

 

ミルフォードサウンドを海から眺める。

 

 

 

満足度を大きく左右するクルーズの食

 

 クルーズ船の旅の満足度を左右するのは食事のクォリティと寄稿地ツアーの内容といっても過言ではないだろう。

 

 まず“食事が大切“というのは、旅の期間中、ほとんどの朝と夜の食事は船になるからだ。というのも、航海中はもちろん、寄港地観光をする際にも出航時間が夕方に設定されていることが多い。つまり、毎日夕食前には船に戻ってこなければならないのだ。おのずと夕食は船内で食べることとなる。

 

「レガッタ」を持つクルーズ会社、オーシャニアクルーズは「洋上最高の食事を提供する」と非常に評判が高いのだが、リピーターが多いのは、そんなところにも理由があるのだろう。

 

 

レストラン「トスカーナ」の料理の一例。

 

 

 

 オーシャニアクルーズの料理監修は元ドゴール大統領の料理人だったジャック・ペパン氏が務めている。「熱いものは熱く、冷たいものは冷たく。鮮度の良いフレッシュな食材からすべてを作る」ことを信条にしており、パンをはじめとする料理はすべて食材から仕込み、一から作る。水も食材も限られている船という条件下で、実はこうしたことはあたりまえではないのだ。

 

「レガッタ」の場合、メインダイニングルームの「グランドダイニングルーム」、ビュッフェスタイルのカジュアルダイニング「テラスカフェ」、スペシャリティレストランのステーキレストラン「ポログリル」、イタリア料理の「トスカーナ」、プールデッキでのグリルレストラン「ウェーブス・グリル」の5つのレストランがある。

 

「レガッタ」の料理長を務めるガブリエル・スプレアフィコ氏に話を聞いたところ、「レガッタ」の乗客MAX684名に対し、料理人はなんと68名乗船しているという。10人に1人料理人がつく換算だ。

 

 この数字からも、彼らの食への情熱を感じることができるだろう。メニューは15日間毎日違うものが提供され、料理はできたてにこだわる。そのほかにも、グルテンフリー、ベジタリアン、ヴィーガン、さまざまなアレルギーへの対応・・・。世界から集まる乗客たちのあらゆる制限にも丁寧に応えるためには、どうしても必要な人数なのだそうだ。

 

「テラスカフェ」はビュッフェ料理であっても、非常にクオリティが高いうえに品数が豊富だ。目の前で焼き上げてくれるステーキなど必ず“その場で作る”料理がある。

 

 また、大きな市場があるような港に寄港したときには、シェフチームが現地の食材を買いに上陸する。その夜には、“マーケットディナー”と称して、買ったばかりのローカルの魚や肉などが豪快に調理され、まるでお祭りの屋台のような臨場感でゲストの舌を楽しませる。

 

 

好きなものを好きにオーダーして、テラスで一人気ままに食べるディナーもまた最高。

 

 

 

 ディナーは、一人で気楽に食事をしたかったので、私はこの「テラスカフェ」が定番だったが、船内の90%以上を占める欧米のゲストのほとんどは、ドレスアップして、ゴージャスな内装の「グランドダイニングルーム」、そして、フルコースの料理を味わえるスペシャリティレストランに行っていた。

 

 

ドレスアップして訪れたい「グランドダイニングルーム」。

 

 

 

 というのも、昼間はカジュアルな格好で観光をして、夜は思い切りドレスアップして食事をする。それがクルーズ旅の醍醐味なのだ。

 

 ちなみに、クルーズ船によってはドレスコードにフォーマルがある場合があるが、「レガッタ」はそうした制限はない。とはいえ、ゲストたちは社交をするために毎晩ファッションもメイクも思い切り楽しんでいる人が多い。

 

 特に、常に満席のスペシャリティレストランでは、上級会員なら予約回数の優遇もあるため毎夜華やかな雰囲気が満ちている。船内で仲良くなると、「今日、ポログリルに席があるのだけれど、ジョインしない?」などと社交のきっかけの舞台となっているのだ。

 

 

スペシャリティレストラン「ポログリル」のステーキ。

 

 

 

クルーズ旅の楽しみ。知らない景色に出会える寄港地ツアー

 

 そして、クルーズの醍醐味といえば、寄港地ツアーだろう。

 

 今回はニュージーランドの南島、北島の主要観光都市に加え、あまり知られていない小さな町にも訪れることができた。

 

 朝起きて、部屋のカーテンをあけると、前日までとはまるで違う景色が目の前に現れる。それはまるで“どこでもドア”だ。訪れた港には、その場所でのさまざまなアクティビティや観光ツアーがいくつも用意され、ゲストは興味のあるものに申し込み、思い思いに1日を過ごす。

 

 

オゴダ半島サファリツアーで出会ったオットセイ。

 

 

 

 例えば、南島のダニーデンという都市。ここはスコットランド人の移民によって開拓された町で、ルネッサンス様式のダニーデン駅をはじめ歴史を感じる建物が多く残る場所だ。

 

 また、クルマで1時間半程度走れば、野生のオットセイやペンギン、アルバトロスが生息するオゴタ半島へも行ける。

 

 建物や歴史に興味がある人は、「ダニーデン・ハイライトツアー」に参加し、歴史と文化を知る旅へ。自然に興味があれば「オタゴ半島サファリツアー」に申し込み、野生動物たちの生態を専属ガイドから聞いて楽しむ。そんなふうに自分の興味関心によって選ぶことができるツアーが1寄港につき7〜8本用意されている。

 

 もちろん、ツアーに参加せずに船でのんびり過ごすのもよし。シティーセンターまで送ってくれるバスは無料なので、場所によっては町まで出て、自分の足で歩くのも楽しい。そうすれば、自由に現地で気になるカフェやレストランでランチをすることもできる。

 

 

坂茂氏の紙の教会。

 

 

 

 私もクライストチャーチなどの都市はツアーにのらずに自分で街を歩いてみた。震災で崩れた大聖堂を訪ねたり、仮の聖堂となっている坂茂氏の“紙の教会”などを訪ねたりして、じっくりと自分のペースで見学した。

 

 また、ネイピアというと都市では、知り合いのワイナリー「シャトー・ワイマラマ」があったため、醸造責任者の方とシティセンターで待ち合わせをし、クルーズシップ出発の時間までワイナリーを見学させてもらった。

 

 

美しい渓谷にある、シャトー・ワイマラマ。

 

 

 

 小型船なら、小さな街を訪れることができるのも非常に大きな魅力だ。今回、ファンガレイという街に寄港したのだが、この港にとって初のクルーズ船を受け入れた記念すべき日だったようだ。

 

 のどかな街で楽しんだのは、乗馬。手つかずの、どこまでも広がる誰もいない美しい海岸線を馬にのって駆けるという夢のような体験が待っていた。

 

 

誰もいない広大な砂浜を、馬で闊歩するのは楽しい。

 

 

 

 こうした寄稿地ツアーを通じて、ほかの乗客たちと仲良くなるのもクルーズ船ならではの楽しみだろう。

 

 興味関心が同じ乗客同士は、何度もツアーで顔を合わせることになる。そうなると自然に会話が生まれ、“今晩一緒に食事をしない?”などと声を掛け合い、仲良くなっていくのだ。

 

 旅も終盤になると、「グランドダイニングルーム」などでは、10人近いテーブルがいくつも見かけられる。最初は夫婦や友人と二人だけだった食事が、仲良くなった人同士で食卓を囲み、グループで和気藹々と会話を楽しんでいる。

 

 私も、ニュージャージーからやってきた60代の女性二人組(40年来の友人同士だとか!)、テキサスからやってきた50代、60代の女性二人組(一人はお医者さん、一人は国防省にお勤め)、フロリダからやってきた83歳の一人旅の女性(元保険会社勤務)と仲良くなった。

 

 こうした旅先で出会った素敵な人たちと連絡先を交換し、友人としてやりとりが続いていくのもクルーズ旅の醍醐味。

 

 快適で優雅な“動く自室”を拠点に、知らなかった絶景や、人々や、街に出会う旅。上質で贅沢な旅のエッセンスを常に感じながら、地球はまだまだ未知の楽しさに溢れていることに気づけるのだ。

 

 日常から完全に離れられるクルーズ旅は、いとも簡単にまだ見ぬ冒険へと誘ってくれる。

 

 

 

問い合わせ先

オーシャニアクルーズ

https://jp.oceaniacruises.com/