POCKET GUIDE: ALESSANDRO PALAZZI

一杯が繋いできた大きな友人の輪

Tuesday, March 30th, 2021

ホスピタリティが鍵になるような業界は2020年、歴史的な転換期を迎えたように思われる。

うつむいている暇はない。

ロンドンにいるバーテンダー、アレッサンドロ・パラッツィは依然、軽快であった。

 

 

text rikesh chauhan

translation wosanai

photography kim lang

 

 

 

Alessandro Palazzi

アレッサンドロ・パラッツィ

ロンドンのメイフェアに位置するデュークス・ホテル内にある「デュークス・バー」のヘッドバーテンダー。1970年代より、バーテンダーとしてのキャリアをスタート。パリの「リッツ パリ」やロンドンの「ザ マイルストーン ホテル」、「マンダリン オリエンタル ハイドパーク ロンドン」など数々のラグジュアリーホテルを経て、2007年にバー・マネジャーとして現在勤めるバーへ。

 

 

 

 マティーニで世界的に有名なロンドンの「デュークス・バー」。アレッサンドロ・パラッツィは1970年代からこの“オモテナシ”業界に身を置いている。彼のその一本筋の通ったような芯の強さは魅力のひとつであり、ここに通うゲストもまた、そんな彼が作るお酒を愛してやまない。彼のスタイルセンスも同様にブレがないのだが、彼は自身のスタイルを「外向的でアクロバティック、そしてカリスマティック」であるとチャーミングに語る。

 

 休日の彼に会うことはそう滅多にないのだが、彼はいつもと同様に軽快なトークで我々を楽しませてくれた。話は「リッツ パリ」、「デュークス・バー」とつづき、新型コロナウイルスによるパンデミック渦中の業界の話に移った。

 

 

「このカフリンクスはティファニーのものです。クリスマスの日に友人にもらいました」

 

 

 

 もちろん深刻かつ皆が心を痛ませている世界的大事であることは言うまでもないが、パラッツィの声はどこか楽観的で、緊張感を和らげてくれた。

 

「もうこの業界には45年います。ホスピタリティはどうしても人と人との繋がりですから、良い行いもまた返ってくるものなんですよ」

 

 彼は自身のスタイルの根幹にフレンドシップがあるとも語る。アーモリーのシティ・ハンタージャケットは友人(マーク・チョー)が着ていたから購入したもので、トラウザーズはポメッラ ナポリのジャンルカ・ミリアロッティが仕立ててくれたもの(使われたフォックス ブラザーズの生地はパラッツィ フランネルと呼ばれている)だという。さらにポール・フェイグからもらったアンダーソン&シェパードのポケットスクエアはマティーニがモチーフになっている。すべてが思慮深い。愛があるとは思わないだろうか?

 

 

左:眼鏡はオリバーピープルズのもの。「ペルソールの眼鏡を買おうと思い店に入ったのですが、この眼鏡を手にしていました。オリバーピープルズのものだと知ったのもずいぶん後だったくらいです」。/右:弊誌でもおなじみのハリウッド映画監督のポール・フェイグが監修した「ARTINGSTALL’S BRILLIANT LONDON DRY GIN」。このジンをパラッツィが認めたということは、誰にとっても間違いない選択になるということだ。

 

 

 

左:「ドレイクスのこのブーツは発見でした。イタリア製だから少し値は張りますが、それほどの価値がある一足です。我々のマティーニ同様、一度経験したらその違いを知るんです」。ポメッラ ナポリのトラウザーズは彼自身の名前がついたフォックス ブラザーズのフランネルで仕立てられた。/右:「ジン以外でしたら、ウイスキーも大好きです。スコッチですね。2015年にその権威であるニック・モーガンからメールがあり、私がKEEPER OF THE QUAICHの称号を頂くことになりました。そのメールを5回は読み返しましたね。このメダルは私のキャリアで最も偉大なものかもしれません。通常バーテンダーが頂けるようなものではありませんから」

 

 

左:「この本はバーテンダーにとってバイブルのようなものです。特にこの一冊は、著者であるヘンリー・クラドックが1930年代に友人や顧客に直接渡したものです。その顧客が亡くなり、この本が私の義理の父の元にやってきたのが1980年代でした。当時彼はTHE SAVOYのGMをしていたため、“30年代、40年代のTHE SAVOYの復興に尽力してくれたこと、とても感謝しております”という直筆のメッセージが書かれています」/右:「私の先祖はヴァチカンに納める税を集める仕事をしていました。そのときのリングが世代を超えて受け継がれ、私の祖母が常に結婚指輪と同じ指に着けていました。私がお婆ちゃん子だったものですから、亡くなる前にこの指輪を私に託してくれました。私はジュエリーを着けるタイプではなかったのですが、結婚を機に着けるようになりました」

 

 

「数年前に子供に残せる時計が欲しくなり、WATCHES OF KNIGHTSBRIDGEというオークションを運営している友人がこのオメガの時計を紹介してくれました。素晴らしい買い物になりました。人類が月面に到着したとき、私は学校で、クラス全員でテレビにかじりついて見ていたという思い出もあり、この時計を持つことに感傷的な意味を見いだしています。ストラップはトラウザーズと同じパラッツィ フランネルで作ってもらいました」

 

 THE RAKE JAPAN EDITION issue39