“Perfect Synergy” at The Ritz-Carlton,Tokyo

ザ・リッツ・カールトン東京の贅沢なスパメニュー“パーフェクト シナジー”

July 2023

text kentaro matsuo

 

 

 

 

 ホットタブに浸かりながら、建ち並ぶ、数えきれないほどのビルを俯瞰する。東京ミッドタウンの46階に位置するザ・リッツ・カールトン スパ 東京は、六本木の街の上空に浮かんだ別天地である。地上の喧騒が嘘のような静けさの中で、サウナや温浴施設を楽しみ、心と体を解放することができる。

 

 特に有名なのは、提供される数々のトリートメントである。英国の高級スパ・ブランドESPA(エスパ)がプロデュースするメニューは、極上の癒しを得られると評判だ。スパといえば女性のためのものという常識はもう古い。ここでは利用者の半数が男性であり、年齢層も20〜60代と幅広い。

 

 そんなザ・リッツ・カールトン スパ 東京に、新しく“パーフェクト シナジー”と名付けられたメニューが加えられた。これはESPAのカスタム フェイシャル トリートメントに、独自のフットケアが組み合わされたコースである。ふたりの施術者により、顔と足を同時に(60分で)ケアしてしまおうというスピーディ&ラグジュアリーな内容だ。

 

 

 

 

 施術前にサウナで身体を温めていたら、驚いたことに知人のM木氏にばったりと出会った(お互い丸裸である)。聞けばM木氏は、ここの10年来のメンバーであるという。赤坂に事務所を構える氏にとって、

 

「ここは地の利がある。都内をクルマで動いている私にとっては、最高の場所だ。駐車場からのアクセスもいい。プールでひと泳ぎできるし、ジムも充実している。週末以外はあまり混んでいないので、いつもゆっくりとできる。景観まで考えると、会費はリーズナブル」だそうだ。

 

 

 

 

 トリートメントは、スパに併設された個室にて行われる。プライバシーは完璧に保たれている。フェイシャルは日本人女性、フットケアはフランス人男性が担当した。和やかなムードのなか、ベッドに身体を横たえる。

 

 フェイシャルは、まず入念なクレンジングからスタートする。回転式のブラシで毛穴の奥に詰まった汚れを取り除き、スチームで皮膚を柔らかくする。施術中の香りは、フローラルとミントの2種類より好みの方を選ぶことができる。

 

 クリームを塗り、手技によるフェイス・マッサージが行われる。顔面の血行やリンパの流れをよくし、小顔効果もあるそうだ。あまりの気持ちよさに、うとうとしてしまう。私はこういった人間の手による施しが好きだ。巷ではマッサージ・ガンなど、機械による刺激がトレンドだが、やはり人の手にまさる道具はない。

 

 マスクをして肌に潤いを与え、頭皮や首周りのマッサージも行われる。仕上げのオイルを塗って、フィニッシュだ。ガサガサだった顔面が、モチモチになっている。普段手入れをしていない私のような人ほど、効果を実感できそうだ。

 

 

 

 

 顔に併せて、フットケアも同時進行で行われる。施術者は、フランスの“ペディ:マニ:キュア スタジオ バイ バスティアン・ゴンザレス”に所属するブノワ・ペリエ氏である。ペリエ氏は、“ポディアトリスト”という耳慣れない資格を持っている。これはフランスの国家資格で、足医学専門家の意味である。アナトミー(解剖学)に対する深い造詣が必要で、取得には通常4年間もの就学が義務付けられ、本国では歯科医と同じほどのステイタスがあるらしい。

 

 ペリエ氏いわく、

 

「日本人は明治の時代まで、草履と下駄を履く文化でした。だから足に関するトラブルが少なかったのです。古くから革靴を履いていたフランスでは、足の問題を専門に解決する術師が必要でした。それがポディアトリストなのです」

 

 靴擦れ、ウオノメ、イボ、角質除去などの表面的な治療から、外反母趾、歩行矯正、インソール製作など筋肉・骨格に関するものまでを幅広く扱う。フランスでは足にトラブルを抱えたら、まずはポディアトリストの門を叩くのが常識なのだという。

 

 ペディ:マニ:キュア スタジオ バイ バスティアン・ゴンザレスは、足専門医としての知識とビューティ・トリートメントを合体させたノウハウを開発し、世界中に支店を広げている。ただし、日本でこの施術が受けられるのは、今のところザ・リッツ・カールトン スパ 東京だけなのだ。

 

 

 

 

 まずは丁寧な足の爪切りから始まる。人に爪を切ってもらうのは、幼児の頃、母親にしてもらった以来かもしれない。その後甘皮をはぎ、パールパウダーが混入されたクリームで爪を磨き上げる。使われている道具は、ヤスリやピンセット状のものなど、歯科医院で目にするものに近い。

 

 角質や皮膚の硬くなった部分を擦り上げ、なめらかに仕上げる。この際、ウオノメなどがあれば、痛みを伴うことなく治療が可能だという。足全体にクリームを塗り込み、実に気持ちのいい足裏とふくらはぎのマッサージを経て、施術完了である。

 

「クリームは、100%天然の成分から出来ています。人工的なツヤ出し剤を塗るネイルとは、根本的に違うのです。爪そのものに光沢を持たせるため、爪が伸びるまで輝きが持続します。クリームは爪の表面のみならず、内側の皮膚にまで潤いを持たせるのです」とペリエ氏。

 

 

 

 

 術が施された後の爪は、自然で健康的な光を放っている。これなら男性でも気後れせず、取り入れることができるはずだ。爪の輝きが増すだけで、足全体が若々しく見える。夏のリゾートシーンなどで、効果を発揮するだろう。これはもちろん、手指にも施すことが可能だ。

 

「私にはアルチザンとしての誇りがあります。日本にポディアトリストの文化を広めたいと思っています。いまは東京のみですが、いずれザ・リッツ・カールトンのネットワークを使って、全国に広めたいと願っています」そう言って、ペリエ氏は胸を張った。

 

 ザ・リッツ・カールトン スパ 東京は、天空に浮かぶ美と癒しの城である。地上200mからの絶景を眺めつつ、心身を解きほぐし、リラックスすることができる。

 

 またそこでは、唯一無二のトリートメントを受けることが可能だ。今回生まれて初めて、パーフェクト シナジーにおいて、ポディアトリストによる施術を受けたが、これは一度体験してみる価値があると思う。そこには医師のみならず、卓越したテーラーやシューシャイナーに通じる、プロフェッショナルとしての技術と矜持が感じられるのだ。

 

 

パーフェクト シナジー(60分) ¥43,065

予約・問い合わせ先:ザ・リッツ・カールトン スパ 東京

トリートメント提供時間:10:00~20:45(最終受付)

TEL.03-6434-8813(7:00~22:00)

www.ritzcarlton.com/jp/hotels/japan/tokyo/spa