OTTAWA WINTERLUDE
冬のオタワがエキサイティング!
April 2023
text yuko fujita
©Fairmont Château Laurier
空港から一歩外に出た瞬間、ピーンと頬が張り詰める。ほどなくして鼻毛が凍り、まばたきするたびにバリバリに凍ったまつ毛の感触が伝わってくる。
2月3日午前10時。気温は零下25度。体感温度に至っては零下37度だという。
カナダの首都オタワは、僕の人生の中でいまだ味わったことのない寒さを用意して温かく迎えてくれた。
2月のオタワの体感温度は零下40度を下回ることもままあるそうだ。風が強いオタワの冬は実際の温度よりも常に体感温度のほう低くなるので、オタワのウェザーニュースは実際の温度と体感温度のふたつを発表しており、外出時は体感温度を参考に防寒するのがオタワ市民の基本だという。オタワが用意してくれた体感温度零下37度は、僕へのジャブ替わりの挨拶だと、僕は受け取った。
これからたっぷり味わう未知の寒さを果たして受け入れられるのか。未体験の寒さの中でオタワでの4日間を楽しめるのか。期待と不安が入り混じったなかで、僕は迎えのクルマに乗り込んだ。
今回オタワで宿泊するホテルは、1912年に創業したフェアモント・シャトー・ローリエ。空港からは30分弱で到着した。国家元首や王室、政治家、そして数々のセレブリティたちが宿泊してきた、歴史と権威あるホテルだ。オタワの主要観光スポットはほぼ徒歩圏内にあり、周囲には素晴らしいレストランがひしめいている。オタワ観光においては最善のロケーションにあると専らの評判の、素晴らしいホテルだという。
ホテルのフロントに設置されたタブレットによると、2月3日午前10時43分のオタワの外気温はマイナス25度、体感温度マイナス37度。この寒さをエンターテインメントとして楽しめれば、オタワ観光は素晴らしいものになるに違いない。
そう自分に言い聞かせて、僕のオタワ観光はスタートした。
まず最初に、オタワってどんなところ?
カナダの首都オタワは国土の南東部に位置し、カナダ最大の都市トロントや世界三大瀑布のひとつナイアガラフォールズがあるオンタリオ州に属する。同州の面積は107万㎢と、日本の約3倍近い国土面積を誇る。東京からトロントまでのフライトは約12時間。オタワへは、トロント空港で国内線に乗り継いで、約1時間で到着する。
市の人口は約101万人。およそ26%が外国生まれといい、さまざまな国をルーツにもつ人たちが集まっている。オタワ川を隔てたすぐ隣はフランス語圏のケベック州ということもあり、訪れたフレンチ系レストランはどこも大変おいしく、ときに独自の発展を遂げた素晴らしい料理を堪能できたりと、オタワの多様性が織りなす“食”の世界は、同都市を訪れる大きな魅力のひとつになっている。
素晴らしいミュージアムが充実しているのも、オタワの特筆すべき点だ。”グループ・オブ・セブン”と呼ばれるカナダの画家たちの作品や先住民族イヌイットの伝統工芸品、ゴッホやルーベンス、ゴーギャン、クリムトといった巨匠たちの作品が揃う国立美術館をはじめ、カナダで最初の国立博物館である「カナダ自然博物館」、ファースト・ピープルズ・ホールが見ごたえたっぷりの、カナダ最大で最も人気のある「カナダ歴史博物館」は必見だ。
見ごたえたっぷりの「カナダ歴史博物館」では、ウィンタールードの期間に合わせ、パウワウのイベントが行われていた。
宿泊しているシャトー・フェアモント・ローリエからすぐの国会議事堂は美しいネオ・ゴシック建築でも知られ、これはオタワ観光でもっとも目を奪われる建築物のひとつでもある。
冬のオタワはカナダの冬の風物詩、「ウィンタールード」に合わせて訪れよう
オタワの食やミュージアム、素晴らしい建築群を楽しむのにあえて真冬に来る必要もないのでは、と思われるかもしればいが、何故これほどまでに寒い時期を選んだのか?
それは、オタワの魅力を多くの人に知ってもらうべく、オタワ市が毎年2月の第1週から開催している北米最大規模の冬の祭典「ウィンタールード」を楽しむためだ(今年は2月3日~2月20に開催され、2024年は2月2日から2月19日までの開催を予定している)。
「ウィンタールード」の期間中は街のあちこちでさまざまなイベントが催されることもあり、カナダ国内外から、この時期に合わせて毎年60万人もの人々が訪れ、大きな盛り上がりを見せる。
その盛り上がりを自分も味わってみようということで、冬のオタワを選んだのだ。
ウィンタールード期間中は、街のあちこちで氷の彫刻が飾られる。
まず楽しみたいのは、2007年にユネスコ世界文化遺産に登録されたリドー運河でのアイススケートだ。冬のあいだ運河は凍り、ダウンタウンから約7.8kmにも及ぶ世界最長の天然スケートリンクへと様変わりするのだ。世界遺産の上でスケートを楽しめるなんて、とびっきりの贅沢なこと! オタワの人々は老若男女を問わず皆スケートに慣れ親しんでいる。スケート靴はレンタル可能で、トイレやロッカー、出店などもリンク上に用意されている。
リド―運河が世界最長の天然スケートリンクに! ©Fairmont Château Laurier
夕方のリドー運河も幻想的だ。奥に見えるゴシックリヴァイヴァル様式の建物は、国会議事堂。銀世界のオタワもまた幻想的で美しい。©Ottawa Tourism
ウィンタールードはオタワ市とオタワ川を渡ったケベック州ガティノー市で共同開催されている。家族連れで訪れるなら、ケベック側のジャック・カルティエ・パーク内でイベント“スノーフレーク・キングダム”をオススメしたい。子供たちはスーパースノースライドに夢中! オトナの自分が滑っても、非常にエキサイティング! ©Ottawa Tourism
零下30度の世界だというのに、老若男女を問わず、外で陽気に楽しむ。音楽に合わせてこのあと踊り出す人たちもいた。オタワの人は皆フランクで陽気なのが印象的だった。
スノーフレーク・キングダム内のスノーパズルでパチリ。Uniqloのヒートテックの下着に、超極暖ヒートテック、Svevoのタートルネックニット、Aspesiのダウンベスト、Mandelliの薄手ダウンジャケット、Monclerのダウンジャケット「パリス」という、ダウン3枚、計6枚の態勢を今回の基本防寒スタイルとした。ボトムスは友人からとても暖かいとオススメされたUniqloの防風エクストラウォームイージーパンツ。その下にサーマルタイツも穿き、シューズはDescenteのアクティブウィンターブーツを用意。帽子は2枚重ねで、グローブは写真のペッカリーグローブの上に、もう1枚ウールカシミアのグローブを2枚重ねて臨んだ。そして、Joshua Ellisのエスコリアルマフラー!
ちなみに翌2月4日の気温は零下31度、体感温度零下41度まで冷え込んだ。どうやら僕は、オタワにおもいっきり歓迎されているようだ。それに応えるべく上記の防寒態勢で臨んだおかげか、滞在期間中に寒さを感じることは一度もなかった。薄着で過ごしがちな東京の冬のほうが、きちんと防寒していないぶんよっぽど寒さを感じるほどである。レストランや美術館に入る際はダウン3枚を一気に脱げば、暑さを感じることもなく、実に快適! 真冬の北海道で食べる味噌ラーメンがこの上なくおいしいように、外と室温の気温差が50度以上にもなるオタワの食事はどれもすこぶるおいしく感じられた。
次回は宿泊したホテル「フェアモント・シャトー・ローリエ」をはじめ(これ以上なく便利だった)、オタワの食、見応えたっぷりのミュージアム、ウィンタールード開催中の魅力的なイベントについてもご紹介したい。
フェアモント・シャトー・ローリエからすぐにある「ソーシャル(Social)」というレストランで食した、同じオンタリオ州の地元マリポーサファーム産の鴨のコンフィ“Mariposa Duck Confit”は超絶美味だった。またぜひ食べたい!
オタワ ウィンター ジャズ フェスティバルもウィンタールードの初日から2日間にわたって開催された。トロントを拠点にしているアフロキューバンジャズの“OKAN”のライブは、実は東京から最も楽しみにしていたイベントのひとつだったのだ。
取材協力
オンタリオ州観光局 https://www.destinationontario.com/ja-jp/japan
カナダ観光局 https://jp-keepexploring.canada.travel/