究極の夏向けアンコン・ジャケット“ザッコ”

ナポリで作られ、熱帯の暑さにも対応するザッコのジャケット。

超軽量で快適なこのジャケットは、この夏最も注目される服かもしれない。

 

 

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Alexander Hascher

アレクサンダー・ハッシャー

シンガポール在住のドイツ人。20年にわたる数々のラグジュアリーファッションブランドでの経験を経て、2018年、サヴィル・ロウで作られたパターンをナポリで縫製するという独自のスタイルのブランド、ザッコを創業。シンガポールでも着用できる、超軽量のアンコン・ジャケットで一躍話題に。

 

 

 

　ザッコの創業者のアレクサンダー・ハッシャー氏は、メンズクラシック・スタイルにおいて革新といえる、世界で最も軽いジャケットを生み出した。

 

「私はシンガポールで育ちましたが、幼い頃から仕立て服、特にジャケットが大好きでした。ポルフィリオ・ルビロサやジャンニ・アニェッリのように、真夏の南仏でもカラチェニのジャケットを着こなすスタイルに憧れていました。10代の頃は、夕方になるとブレザーやスポーツコートを着て外出しました。シンガポールの気候には不釣り合いでしたが、私にとってジャケットは、自分自身を尊重すると同時に他人を尊重するという“マナー”でした。ポケットにはいつもあるものを入れていました―純銀製のシガレットケースと、祖父のデュポン社製のライターです。美しい女性に会う度に、癒やしの一服を提供していました。それに、いつもエレガントでありたいという気持ちが強かったので、常にジャケットを着ていました」

 

　彼は笑いながらこうつけ加えた。「夜が明ける頃には、暑さで全身汗びっしょり。そこで、もっと軽いジャケットを作れないかと考えたのです。余計な裏地がなく、通気性に優れているもの。ザッコのジャケットのアイデアは、クラシックなスタイルと、過酷な暑さの中でも快適さを持たせたいという願望から生まれました」。

 

Sky Blue Unlined Single-Breasted Patch Pocket Jacket	Green Unlined Single-Breasted Patch Pocket Jacket

 

 

 

　ザッコのジャケットが“軽い”というのは、非常に控えめな表現だ。ハッシャー氏の実験と魔法により、ジャケットは見事なシェイプと質感を保っているが、指でつまんで持ち上げてみると、まるで無重力のように、ほとんど重さを感じないのだ。

 

「難しかったのは、スタイリッシュで完璧なフィット感を保ちながら、シャツのような着用感を実現することでした」

 

　構造上の軽さを追求したジャケットはもちろん初めてではない。裏地や中綿、ホースヘアやキャンバス地を取り除き、軽さに注力したサルトは、ナポリのテーラーを筆頭に数多く存在している。

 

 

ザッコのジャケットは、肩パットや芯地を極力排したアンコン仕立て。もちろん裏地はなく、アクセントのあるアズールブルーのパイピングが施されている。

 

 

 

「ナポリのテーラーが手がけた軽量ジャケットを何着も試しましたが、やはり軽かった。あの美しい街の気候にぴったりです。とはいえ、熱帯雨林気候においてはまだまだ。ザッコのジャケットは、エレガンスを保ちつつ、軽さという概念を極限まで追求した結果、気温35度、湿度60％というシンガポールの日常でも快適な唯一のジャケットを生み出すことに成功しました」

 

　その魅力は、暑さ対策だけではない。小さく折り畳んで収納でき、軽く振るだけで元の完璧な形に戻るという点において、ジェットセッターにも最適だ。あるいは、テーラーリングに魅了されながらも、昨今のカジュアル化により、より柔らかく、リラックスした服を着たいと思っている人にも理想的な一着だろう。シンガポールを拠点とするTHE RAKEの創刊編集者クリスチャン・ベーカーは、次のように述べる。

 

「ザッコのジャケットは私がこれまで着た中で最も軽く、今日の消費者にとってなくてはならないもの。シンガポールでも屋外で着用できるので、マーケットで唯一無二の存在となっています。柔らかなジャケットは、着こなしの幅を広げます。ドレスアップしても、Tシャツとジーンズでドレスダウンしても様になります」

 

 

Light Brown Unlined Single-Breasted Patch Pocket Jacket	Purple Unlined Single-Breasted Patch Pocket Jacket

 

すべてにおいて100%イタリア製のジャケットは、ヴィターレ・バルベリス・カノニコ社のホップサック生地で作られている。コロゾボタンなどディテールにもこだわりがみられる。

 

 

 

　ハッシャー氏はこう話す。

 

「夏にジャケットを着るのは魔法のようなもの。自分のスタイルをさらに高めることができるからです。ジーンズにTシャツ、エスパドリーユでも、ジャケットさえ羽織れば高級レストランやバーでも違和感なく過ごせます。私のクライアントには、ヴィンテージのコンバーチブル・ポルシェのグローブボックスに、ザッコのジャケットを入れている人がいます。アマルフィ海岸をドライブしているときに、ちょっといいレストランでディナーを楽しみたくなったとしても安心だそうです。その構造と撚りの強い素材により、A4書類の大きさに折り畳んだり、丸めたりしても、すぐにシワひとつない完璧な状態に戻り、羽織ることができるのです」

 

　誕生するまでには、さまざまな困難があった。ハッシャー氏はこう説明する。

 

「私が望む品質と構造を作ってくれる工場を探すのは大変でした。イタリアで数え切れないほどの工場を訪問しましたが、いつもこう言われました。『ナポリ人に聞いてくれ。ノウハウを持っているのは彼らだけだ』。そうしてたどり着いたのがナポリのある工場だったのです。驚いたことに、出荷準備中のラックに“Rubinacci for The Rake”と書かれたジャケットがずらりと並んでいました。私は特別な場所に運良くたどり着いたのだと思いました。彼らを説得するのは簡単ではありませんでしたが、私は粘り強い人間なので説得を続け、数カ月後には完璧だと思えるジャケットを手に入れることができました」

 

 

 

Navy Unlined Single-Breasted Patch Pocket Jacket	Black Unlined Single-Breasted Patch Pocket Jacket

 

 

 

 

　そういって彼はジャケットを1着取り、裏返しにしてこう説明した。

 

「このジャケットは、アイロンによる成形がすべて。キャンバス地も、中綿も入っていないからです。しかしまだ秘密があります。それは生地です。ヴィターレ・バルベリス・カノニコ社のホップサックを使っていますが、これは強撚の4プライ・ウール。驚くほど形が整い、自然な弾力性があり、美しいドレープを描きます。通気性も非常に優れています。高価ですが、これなしでは成り立ちません。現在は、カーディガン感覚で着られる秋冬ジャケットを作るために、フランネル地を使った実験をしていますが、重要なのは、すべての布がザッコのジャケットに適しているわけではないということ。ジャケットの袖にはあえて裏地を付けないことで、驚くほどの動きやすさを実現しています。袖をたくし上げても、裏地が目立たないようになっています」

 

　ザッコのジャケットは価格がお手頃だ。

 

「他の高級ブランドのシャツの価格と同じくらいです。まずはこのジャケットを買って、魔法を体験してみてほしい。どんな暑さでも快適に過ごせるのに、こんなにもスタイリッシュに見えることに気づいたら、もう後戻りはできないと思います」

 

　ハッシャー氏は続ける。

 

「このジャケットを12色のバルベリス・ハイツイスト・ホップサック・クロスで作ったのは、男性にいろいろなカラーを試してもらいたいから。多くの人は、ピンクや赤、アクアブルーのジャケットを普段買わないかもしれませんが、この価格なら楽しんでもらえるはず。鮮やかな色のジャケットを着ると、気分が高揚しますよね。また、若い人たちにも手が届くものであることが重要でした。この1年を経て、誰もが“価格に見合う価値”に敏感になっていると思います」

 

 

 

Red Unlined Single-Breasted Patch Pocket Jacket	Light Grey Unlined Single-Breasted Patch Pocket Jacket

 

 

 

 

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