NASU MUKUNONE AUBERGE

話題の水庭をいつでも楽しめる全14棟のオーベルジュ「那須 無垢の音」

May 2024

ここ数年、那須塩原でひときわ話題になっているスポットがある。建築家・石上純也氏の緻密な計算とその豊かな感性によって作り上げられた「水庭」だ。そんな水庭を眺めながら美酒美食を楽しみ、さらには木の温もり溢れるスイートヴィラにステイできるオーベルジュがこの4月にリニューアルオープンした。周囲の環境と共存するこの新しいオーベルジュには、那須の穏やかで美しい自然に包まれる豊かな時間が流れている。

 

 

text yukina tokida

 

 

 

 

 都心より少しひんやりした風に、耳を澄ませると聞こえてくる鳥の囀りやせせらぎ、目線を上げると飛び込んでくる雄大な山の稜線。この場所に降り立つやいなや、日常から切り離された、豊かな時間が流れていることを感じられるだろう。

 

 東京から車で約2時間、最寄りの那須塩原駅から約30分のところにある、3万5000平米という広大な敷地に誕生したこの場所は、建築家の石上純也氏によって生まれた「水庭」に、フレンチコースを楽しめるレストランとスイートヴィラ14棟が併設されたオーベルジュ「那須 無垢の音」だ。

 

 ここでいう「水庭」とは、約300本の木々と160個におよぶ小さな池から成る人工的に作られた庭のこと。思わず深呼吸したくなるような趣があるこの神秘的な場所が、かつては水田で、そのあとは砂利敷の駐車場だったと聞けば、誰もが驚くに違いない。

 

 

夏の水庭。青々とした苔に差し込む日差し、水面の反射が美しい。160個の池はすべて地下で繋がっており、小川から引いた水は、元の小川へと流れていく仕組みとなっている。

 

 

 

 作者である石上氏が当初強く抱いていたのは、「木々を再配置することで、森のような樹木の密度がありながらも、地面に太陽の光が届くような明るい環境を作りたい。そして元々この場所にあった素材で作りあげたい」という思い。

 

 この思いは随所で大切にされており、たとえば水田があった当時使われていた水門は、復活を遂げてこの池の水源に。約300本という木はすべて元々この場所に生えていたものであるし、周りを囲む石垣や、庭の中を移動するための敷石も、少しだけ形を変えて最大限に活用されている。元々の自然を整えることで生まれた作品なのだ。

 

 とはいえ、いずれも簡単に成し遂げられたというわけでもなく、とりわけ木の移植においては非常に手間がかけられている。日本に3台ほどしかないという重機を使って、通常される*根巻きをせず、1本につき数時間以内に行うことで、既存の生態系が消滅することを防ぎ、木の生存率を上げることに成功した(一般的に、樹木を移動すると半分くらいが枯れてしまうというが、今回はわずか数本に抑えられたという)。

 

*根巻き=運搬時の保護や保管などのために、樹木の根部に荒縄を巻いて包むこと。

 

 

 

冬の水庭。モノトーンのなかに青空が映える。木々が重なってしまうことなく、見事に配置されている。

 

 

 

 実は人の手が加わると、ここまでバラバラに植えることは難しいという庭づくり。模型とコンピューターでの実験で自然に見えるような配置を追求し、光測量によって厳密に設計したことで、人工的な方法であるにもかかわらず、あくまでも自然に見える庭を完成させた(木の配置の誤差として許されたのは数ミリまでだったという)。

 

 夏にかけては新緑と苔の青々とした景色に、秋には色づいた葉が池にたまり、冬にはモノトーンな風景に一変する。季節によって池の水と陸の草、光と影が混ざるように移りゆくその姿は、一度見ると忘れることはないだろう。

 

 

客室は適度な距離感で点在している。各バルコニーは森に面しているので、人目も気にならない。夜には温かなライティングで幻想的な雰囲気に。

 

 

 

 緻密な計算によってようやく誕生した水庭を滞在中いつでも楽しめるオーベルジュの宿泊施設とレストランも、この地の自然と呼応するような空間となっている。

 

 宿泊施設は、いずれも約68㎡の室内と14㎡のテラスからなる、全14棟15室(内ひとつがコネクティングルーム)のスイートヴィラ。室内には無垢材がふんだんに使用されており、窓の外に広がる緑豊かな自然と調和する心地よい空間が広がる。半露天風呂や開放感のあるテラスにいても、すぐそこの小川のせせらぎが聞こえてくる、粋な配置がなされている。

 

 特筆すべきは、すべての客室の蛇口から、徹底した安全管理のもと地下水源から汲み上げられた那須の天然水を楽しめること。ゆったりとしたお風呂でのバスタイムにはその優しい肌触りを、客室でのティータイムにはピュアですっきりとしたその味わいを堪能してほしい。

 

 

客室の窓はすべてオープンすることも可能。バルコニーにもすべて無垢材が使用されている。

 

 

客室は入り口のある階にベッドルームが、5段の階段を降りたところにリビングエリア、左手にバスルームがある。天井高を生かした開放感のある空間だ。(筆者撮影)

 

 

客室には遊び心溢れるさまざまなゲームも用意されている。デジタルデトックスするのにも最適。(筆者撮影)

 

 

 

 1棟だけある、2室使用できるコネクティングルームは4名まで宿泊可能。この部屋だけの特権もいくつか用意されており、たとえば石垣で囲われたテラスのおかげでプライバシーをしっかりと確保。またバスルームには檜風呂とミストサウナを、テラスには暖炉を完備している。冬には実際に木を焚べることができる粋な設えだ。

 

 

上2点:敷地内で唯一のコネクティングルーム。2名で泊まったとしても4名の宿泊料金となる。いずれも客室も中学生以上のみ滞在できる(子供向けの料理は用意されていない)。

 

 

 

 オーベルジュの主役でもあるレストランの料理長を務めるのは、都内含めさまざまなダイニングで腕を磨いてきた千葉拓海氏。那須の豊かな自然の中で育まれた食材を中心としたフレンチを、世界中から集められた上質なワインとともに楽しめる。

 

 筆者が訪れた日のディナーは、アミューズブーシュから始まり、「フェンネルと縞鯵のマリネ」「鮑のポワレ グリーンアスパラのグリル 鮑の肝ソース」「白甘鯛の松笠焼き 山菜と芹 菊のスープ」「ブラッドオレンジのグラニテ」「とちぎ和牛フィレのロースト 黒トリュフとソースヴァンルージュ」「黒胡麻ムースと黒羽茶のアイス 熟成本みりんのソース」「小菓子」という構成だった。食材のよさを最大限に活かした、旬を感じられる贅沢なコースとなっていた。3月末だったということもあり、その日の朝に採れた山菜もふんだんに用いられていた。

 

 

レストラン内観。奥に見えるのが水庭だ。

 

 

アミューズブーシュの一例。ハーブを使ったマヨネーズを敷いたタルト。上に載っているのはシャキシャキのスナップエンドウ。(筆者撮影)

 

 

「フェンネルと縞鯵のマリネ」。縞鯵の上にはフェンネルの茎の部分と合わせたきゅうりのピクルスを、周りにはフェンネルの茎の部分を使ったオイルを添えて。(筆者撮影)

 

 

あわびのポワレ。イタリア産のグリーンアスパラと地元農家のプチベールとともに。肝ソースをかけて。(筆者撮影)

 

 

白甘鯛は鱗までぱりっと焼き上げられている。下に敷き詰めているのは地産のアスパラなど。魚のあらなどでとった出汁がベースのとろみのあるソースは、せりをつかって春の香りをプラス。温かいうちに楽しみたい一皿。(筆者撮影)

 

 

 

 メニュー作りはすべて、この地を拠点とする生産者との出会いから始まっているという。たとえばオーベルジュから車で30分ほどの場所にある「千本松牧場」のヨーグルトやミルク、作りたてのフロマージュブランや子牛の肉、茶臼岳に位置している「今牧場」のシェーブルチーズや「稲見商店」の那須御用卵まで、ホテルで提供されるのはいずれもシェフ自ら足を運び厳選したもの。

 

 この地で育まれたフレッシュな食材は、那須塩原ならではの味わいを生み出してくれると料理長の千葉氏は語る。「東京とも異なり、すぐ近くにさまざまな生産者さんがいてくださるおかげで、地元の旬に合わせてメニューを順次変えていきます。特に夏には夏野菜、秋はサツマイモやきのこ。そして冬は大根をはじめとする根菜類が豊富です」。

 

 

朝食の一例。

 

 

 

 朝食には、地産の新鮮な高原野菜のサラダをはじめ、那須の「味恋トマト」を使ったトマトジュース、先述の千本松牧場のヨーグルトやミルク、チーズ、ハムやベーコン、さらには地鶏の卵料理、自家製のパンやジャムまで楽しめる。水庭を眺めながら時間を忘れてゆっくりと堪能する朝食は、人生の豊かさを再認識させてくれることだろう。

 

 千葉氏によって厳選された食材同士が奏でるハーモニーは唯一無二のもの。都内ではなかなかお目にかかれない那須塩原の旬の食材を存分に堪能してほしい。

 

 より気軽に水庭を楽しめるB&Bも7月にオープン予定。軽食やコーヒー、アルコールを楽しめるラウンジも備えるという。現在は開業記念プランとして、スイートヴィラ1泊2食付きプランが20%オフになるという特典も。6月末までというから、この機会にぜひ。

 

 

那須 無垢の音

栃木県那須郡那須町高久乙2294-3

TEL.0287-73-8122(予約専用)

https://mukunone.jp/

 

<本連載の過去記事は以下より>

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