My First Love Shoes, J.M. WESTON
ジェイエムウエストンは私の初恋だった靴
December 2020
さて、そんなジェイエムウエストン青山店には、かつて名物店長Y氏がいた。ジェイエムウエストンへの愛は誰にも負けないと胸を張っていた。靴の話をすると止まらなくなる人だった。
「こんなに儲からない商売はないですよ。ウチの靴は4ミリピッチでサイズが揃えてある。しかもモノによっては、それぞれのサイズごとに最大7つもウィズがある。それらを保管するだけでも膨大な場所が必要なんです。これを最初に上司に話したら、『1軒の靴屋に、なぜそんなに大きな倉庫が必要なんだ』と言われました。しかし、どうしても“本物”を持って来たかった・・」と25年前に話されていたのを覚えている。
当時の日本の百貨店の常識では、靴のバリエーションとストックヤードの広さが、どうしても釣り合わなかったのだ。Y氏の情熱が、渋る上司を説得し、日本初の本格輸入靴店を実現させた。
「こんなにお得な靴はないですよ」という、Y氏の言葉が耳にこびりついている。
事実今でも、ジェイエムウエストンはリーズナブルな靴屋だと思う。25年前と比べると、高級ブランド靴の値段は、びっくりするほど高くなった。2倍、3倍は当たり前である。それは主に革の値段と人件費が上がったから、ということらしいが、その点ジェイエムウエストンは良心的だ。夢にまで見ただけに、私は当時の値段をはっきりと覚えているが、値上げ幅は抑えられていると思う。
ジェイエムウエストンの工房にて。ソールレザーは自社で鞣したもの。©Vincent Leroux
本記事は2018年12月7日に公開された記事を再掲載したものです。
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