Kona Village, A Rosewood Resort
ハワイ島の息吹を感じる、「コナ ビレッジ ローズウッド リゾート」の休日
August 2025
スティーブ・ジョブズをも魅了した伝説のハワイ島のリゾートが、「ローズウッド ホテルズ&リゾーツ®」によって蘇った。ここは、ただ美しいだけの場所ではない。大地の鼓動に寄り添いながら、サステナブルな未来と、本質的なラグジュアリーを体現する唯一無二の楽園。青い海をのぞみ、どこまでも続く星空を仰ぎ、波の音や動物の声に耳を澄ませる──そんな休日が、人生には必要だ。
text aya hasegawa
2025年3月、「ローズウッド宮古島」がグランドオープンした。同ホテルは、グローバル ライフスタイルおよびホスピタリティー経営グループであるローズウッド ホテル グループが手がける日本初となる施設で、ラグジュアリーを超える“ウルトラ・ラグジュアリー”を標榜する「ローズウッド ホテルズ&リゾーツ®」のホテルだ。ブランドのスタートは1979年。テキサス州ダラスの由緒ある邸宅を、ホテルにリノベーションし、「ローズウッド マンション オン タートル クリーク」が誕生した。現在は、全世界21か国に34の施設を展開している。
その「ローズウッド ホテルズ&リゾーツ®」が掲げているのが、「A Sense of Place(センス・オブ・プレイス:土地や地域の文化への敬意)」というスローガンだ。各地の文化や歴史、そしてその土地の個性に根ざしたつながりを、独自の解釈で、デザインや料理、サービスに落とし込んでいくというその哲学は、最新の施設である「ローズウッド宮古島」をはじめ、すべてのホテルに反映されている。
アールデコの遺産を継承したニューヨークの「ザ カーライル ローズウッド ホテル」、九龍(カオルーン)のウォーターフロントに建つ「ローズウッド香港」、元産婦人科病院と歴史建築であるサンタルチア聖堂の2つの建築物で構成される「ローズウッド サンパウロ」など、同グループが手がけるのは、いずれも個性が際立つ、唯一無二のホテルばかり。「ローズウッド宮古島」も、琉球諸島の豊かな歴史と文化から着想を得た空間デザインを踏襲していると聞く。温かみのある琉球石灰岩と日本の侘び寂びの精神が見事に調和。スタッフのユニフォームには宮古麻織が用いられているそうだ。
前置きが長くなったが、今回、紹介したいのは、2023年7月にオープンした「コナ ビレッジ ローズウッド リゾート」だ。前身は1965年にこの地に誕生した「コナ ビレッジ リゾート」。東日本大震災の際に津波によって壊滅的な被害を受け、休業していたが、7年の歳月をかけて修復工事を行い、サステナビリティの要素、そして、ウルトラ・ラグジュアリーなホスピタリティーを同居させるかたちで2023年に開業した。
「コナ ビレッジ ローズウッド リゾート」だが、まず立地が素晴らしい。穏やかであると同時に土地の持つ息遣いを感じる、そんな場所にある。コナ国際空港から車で10分ほどでアクセスできるとは、にわかには信じられないくらいに静かな時間が流れている。
鬱蒼としたヤシ林の中に、ポリネシアン様式のバンガローが点在していた「コナ ビレッジ リゾート」は、世界のセレブリティをも魅了してきた。客室に、時計、電話、テレビはない。それどころかカギもない! コナという土地が持つ歴史と自然をいかした設えやホスピタリティ──。多くのゲストは、そんなところに安らぎや高揚を感じていたのだろう。かのスティーブ・ジョブズもお気に入りだったという。ちなみに、現在はカギはもちろん、Wi-Fiも完備しているのでご安心を。
そんな伝説の「コナ ビレッジ リゾート」が、「ローズウッド」の名を冠し、12年ぶりに復活を果たした。デザインを手がけたのは、ハワイ育ちの建築家グレッグ・ワーナーと、サンフランシスコに拠点を置くインテリア・デザイン会社ニコルホリス社だ。再開発にあたっては、地元の専門家や職人、アーティスト、環境活動家、エンジニアなどが知見を集結。「コナ ビレッジ」の歴史を尊重し、敷地内に自生する樹木や天然の溶岩大地を可能な限り保ちいかした。茅葺き屋根をはじめ往時の建物のデザインを可能な限り継承。同時に、天然の茅ではなく、プラスティックのリサイクル素材を利用するなど、伝統文化とサステナビリティの両立を図っている。
スタッフと何気なく言葉を交わしていると、興味深いエピソードが飛び出してくる。こういった気づきこそが、ローズウッドが掲げる「センス・オブ・プレイス」なのかもしれない。リゾートが位置するカウプレフという街はかつては漁村だったこと。かつては大きな汽水の湖があり、そこで魚も育てていたそうだ。冬場(12~3月くらい)にはクジラを見ることができる日もあること。すぐそばをハイウェイが走っているが、ハワイ島に5つある火山のひとつ「フアラライ」から流れ出した溶岩により喧騒からは隔絶されること──。
敷地面積は33万平方メートル(東京ドーム7個分)。かつて女神が舞い降りたという伝説もある海岸沿いの敷地に、三日月型を描くように150軒のハレ(ハワイ語で「家」)と呼ばれる客室とレストラン、スパ、プールなどを配した。
客室に置かれているアメニティは最低限ではあるが、いずれも上質だ。そして、客室内でも、かの地の歴史的・文化的な側面を大切にしているホテルの想いを感じる取ることができる。たとえば、一部の客室に配された、ダークカラーのコンクリートで作られた洗面台やバスタブは、溶岩流をイメージしたものだという。
今回、筆者が宿泊したのは、ラナイ(バルコニー)付きの客室だ。ラナイからは海がのぞめ、晴れた日には満点の星空が降り注ぐ。滞在中、ずっと自室にこもっていたい衝動にかられるが、それももったいない。
![]() |
![]() |
マストで足を運びたいのは、マウナケア火山を目の前に横に広がる平屋設計で、溶岩地に面した「アサヤ・スパ」だろう。レセプションからトリートメントルームへは、溶岩石のなかに設えられたウッドデッキを歩いていてアプローチする──と、ドラマチックな演出が憎い。さらに、トリートメントルームの外にも溶岩石が! さまざまなトリートメントを用意しているが、ここを訪れたからには、温めた溶岩石を使ったホットストーンマッサージと、ロミロミマッサージの技術をかけ合わせた「ポハク・ストーン」で、溶岩のエネルギーを全身で感じたい。
![]() |
![]() |
リゾートには2つのレストラン、3つのバーがあり、料飲施設も充実している。旧施設の初代オーナーが使用していたスクーナー船を活用した「シップレックバー」では、カクテルのほか、鮨も提供。「別にハワイで鮨を食べなくても」と思うかもしれない(筆者も思った)が、ハワイ近海で獲れた魚介は、日本のそれとは異なる美味しさをたたえている。また、敷地内には自家農園のほか、野菜養蜂場もあり、自分たちで作ったものを積極的に利用しているのも、なんとも“サステナブル”だ。
“サステナブル”な観点でいえば、リゾート運営に必要な水は、逆浸透膜システムと廃水処理設備によってリサイクルしている。電力も8000枚のソーラーパネルによる自家の太陽光発電でまかなっているそうだ。ラグジュアリーとサステナビリティは両立するのだと、今回の滞在を通して実感した。
なお、大きな木々に囲まれた広場では、週1回、「アイランド・ルーツ・ディナー」というディナーイベントが行われている。古くから使われてきた石の竈を使い、ハワイ産の肉や魚介、野菜を炭火で仕上げた伝統的な料理を、ほかのゲストと一緒にロングテーブルでいただく。このイベントの開催日に合わせて、宿泊の予約を入れる人もいるほど人気があるとか。タイミングがあえば、ぜひ参加してみたいところだ。
その土地の歴史や特性にくわしくなくても、その物語やパワーを心で、体で感じることができる休日は、癒されると同時に、生きていく力のようなものをチャージできる。風と波、動物の鳴き声が聞こえるなか、日本では見たことのないような色をたたえる海を眺めながら、本当に豊かさとはなんなのかと思考を巡らせる、その時間を愛おしく思う。
コナ ビレッジ ローズウッド リゾート
72-300 Maheawalu Drive, Kailua-Kona
TEL. 808-865-0100
www.rosewoodhotels.com/en/kona-village






















