JOY COMETH IN THE MOURNING

【追悼】エリザベス2世女王陛下
私たちは、深い悲しみの中にいる

September 2022

昨年のフィリップ王配の逝去と、今年のプラチナジュビリーについて記事を書いたことを思い出す。

私は女王が作った詩的でキャッチーで巧みな言葉をたくさん見つけた。

そしてそれらを、女王がこの世を去るときまで、忘れずにいようと心に誓ったのだ。

 

 

text: TOM CHAMBERLIN

 

 

 

 

 私は多くの人と同じように、女王はまだまだ生き続けるだろうと思い込んでいた。

 

「王室が女王の健康状態に懸念があると発表したって? 心配ないさ、きっと元気になる。こういうことはこれからまだ何度かあるはずだ」

 

 フィリップ王配が危篤状態に陥ったときのように、そう思った。こんなにも早く、女王が亡くなられてしまうとは思ってもみなかった。しかしそうなってしまった。大変なショックを受けている。

 

 私たちは最も愛された女王を失うという国民的トラウマを抱えてしまった。私たちは強くあらねばならないが、このトラウマがいつまで続き、どう対応していけばいいのかは予測するのが難しい。

 

 

 

 

 かつて女王はこう言った。

 

「あなた方を戦場に導くことはできません。法や正義を与えることもできません。しかし、それ以外のことはできます。私の心を、そして献身を、この古い島々と兄弟関係にあるすべての国の人々へ与えることはできます」

 

 この愛こそが、70年もの間、傑出した人生の重要な要素であった。女王の治世を支えたのは愛であり、その愛は人々へ返された。かつて女王が賢明に述べたように、私たちが感じる悲しみは、その愛に対して支払う代償なのである。

 

 世界中で悲しみの声が上がり、哀悼の意が示されている。そして人々は、尊厳と気品の模範を示した偉大な婦人の死によってもたらされた喪失感を噛みしめている。政治的な混乱と不確実性が蔓延するこの世の中で、私たちは女王に慰めと安定のための言葉を求めた。すると女王はいつもその期待に完璧に応えてくれた。

 

 

 

 

 聖書には、“一晩中泣いて悲しんでも、朝とともに喜びがやって来る”とある。しかし私たちは、未だ夜明け前の深い悲しみの中にいる。エリザベス・レジーナの生涯は悲劇ではなく、喜びとともに記憶されなければならない。

 

 この女性はもともと王位継承者ではなかった。伯父の国王退位という偶然によって、女王になったのである。しかし、「神の介在」について説く人は、20代半ばで女王になった女性の存在を、その完璧な例として挙げるだろう。

 

 女王のファンには、外国の高官や指導者も多い。かつてビル・クリントン元米大統領はこう言った。

 

「女王陛下は、生まれつきの事情がなければ、政治家か外交官として成功していたと思います。しかし、そのどちらともいえない状態で、両方をこなさなければならなかったのです」

 

 女王の頭の回転の速さと先見性は、しばしば指摘されていた。2003年、当時内務大臣だったデイヴィッド・ブランケットの盲導犬がウラジーミル・プーチンに吠えかかった。ブランケットが女王に謝罪すると、こう返事が返ってきた。

 

「犬には興味深い本能がありますね」

 

 

 

 

 そして今、私たちは新しい国王を得た。私たちの厳粛な忠誠心はチャールズ3世に移る。国王は愛する“マミー”を失ったばかりだが、今こそ君主の役割を果たさねばならない。この難しい時代と未来に安定をもたらすのだ。

 

 まずは私たちがエリザベス女王を追悼し、感謝の念を抱くことから始まる。女王を勝利の場所へと導くのだ(その場所がどこであれ)。そして願わくば、その場所で、もう一度出会うことができることを夢見ている。

 

God Save the King.