Interview - Frederic Dufour, CEO of Ruinart

メゾン「ルイナール」がつくりだす
コンテンポラリーアートの世界

Tuesday, January 14th, 2020

text miyako akiyama

 

 

 世界最古のシャンパーニュメゾンであるルイナール。1729年の創設以来、繊細でフレッシュ、丸みのある豊かな味わいのルイナール ブラン・ド・ブラン(シャルドネ100%のシャンパーニュ)は、コート・デ・ブランとモンターニュ・ド・ランスで収穫された最高品質のブドウにこだわるスタイルから「シャンパーニュの宝石」とも呼ばれ、ワイン愛好家たちからの称賛を浴び続けてきた。

 

 フレデリック ドュフール氏は20年余にわたってシャンパーニュのビジネスに携わり、2011年にルイナールの社長に就任。このほど、国際的な写真祭「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2019」に続いて、東京で開催している「TOKYOGRAPHIE 2019」にも、ルイナールとアーティストとのコラボレーション作品を東京で出展するため来日したドュフール氏に、アートとルイナールの関わり、そして今後の展望を聞いた。

 

 

 

フレデリック・ドュフール/Frederic Dufour, CEO of Ruinart

ルイナール社長。フランスHEC 経営大学院でMBA修了後、アンダーセン・コンサルティングを経て1996年モエヘネシー グループに入社。モエ ヘネシー アジア パシフィックの事業開発ディレクター、モエ ヘネシー ディアジオ 香港の社長など要職を経て、2011年より現職。

 

 

―ルイナールは毎年アーティストをメゾンに招待し、コラボレーション作品を制作する「アート・イン・レジデンス」など芸術に深い理解を寄せてきました。それはいつから? そして、どのような目的なのでしょうか?

 

「それはとっても古い話になりますよ(笑)。ルイナールは芸術を愛し、アーティストをサポートするメゾンです。1896年にアール・ヌーヴォーを代表する芸術家アルフォンス ミュシャに広告ビジュアルを依頼したことが始りで、2000年以降は世界最大の現代アートフェアであるArt Baselをはじめ年間30以上ものアートフェアに協賛してきました。これまで2011年には佐藤オオキ氏、2014年には陶芸家の新里明士氏など日本人のアーティストともコラボレーションをし、多くの現代アーティスト達に刺激を与え続けています。

 

 シャンパーニュに限らず、上質な商品をどのように消費者に伝えるか、そのコミュニケーションのあり方はいろいろあると思いますが、我々の場合にはアート、それも現代アートがもっとも我々らしさを表現できると考えたのですね」

 

 

―「ルイナールらしさ」、とはどんなものなのでしょうか?

 

「まずは世界最古のシャンパーニュメゾンであることですね。仏シャンパーニュ地方には大小合わせて5,000以上の造り手がいますが、我々はそのフロンティアでありました。

 

 次に、シャルドネに特化している、ということ。メゾンを象徴する『ルイナール ブラン・ド・ブラン』、よりプレミアムな『ドン・ルイナール』ともに最高品質のシャルドネを100%使用し、すっきりと洗練された飲み口のシャンパーニュを造っています。

 

 最後に、このボトルのフォルムでしょうか。これも18世紀の吹きガラスだったころのボトルの形状をいまに継承しているものです。つまり、我々の歴史と伝統、またシャルドネのエキスパートであるという矜持は他の追随を許すものではありません。これらをそのまま表現するのではなく、コンテンポラリーアートを媒介にしてコミュニケーションをとるのが我々のスタイルなのです」

 

 

―それは日本という国と似ているかもしれません。京都のような数千年の歴史をもつ街と、東京の混沌。侘び寂びの文化と、フランスでも人気の“漫画”に代表されるポップカルチャー……非常に対照的ですね。

 

 

ルイナールのカウントダウンプロジェクトのため製作された、仏人男女のデュオアーティストMouawad Laurierによる巨大インスタレーション。©Ruinart

 

 

「そう! そのコントラストがクールでしょう? ルイナールは2029年には創業300周年を迎えますが、今年(2019年)よりカウントダウンプロジェクトが始まりました。つまり今年は300周年マイナス10年、来年は300周年マイナス9年……というわけです。そのカウントダウンプロジェクトももちろんアート。

 

 今年はまず、我々のクレイエルに仏人アーティストのユニットMouawad Laurierがブドウの根からインスピレーションを得た巨大なインスタレーションを造ってくれました。これから2029年までさまざまなアートピースが我々のメゾンを彩ってくれると思うとワクワクしませんか。なかには日本人アーティストも……いるかもしれませんよ(笑)」

 

 ルイナールという、世界最古のシャンパーニュメゾンとコンテンポラリーアート。意外な組み合わせにも思えたが、シャルドネというブドウ品種を極め、厳しい大地から洗練されたシャンパーニュの一滴を生み出すというそのプロセスこそまさに芸術ともいえるものなのだろう。

 

 過去の遺産にとらわれることなく、常に数歩先を見据えているドュフール社長の眼にはどんな未来が見えているのか――今後がますます楽しみだ。