HOW TO WEAR SHORTS
ショーツの履き方
July 2021
ショーツをいかにRAKISHに履くかを考えてみよう。
夏の暑い時期に、とても実用的なこのアイテムは、もっと世の中に受け入れられていい。
by christian barker
ヨットに乗ってくつろぐジョン・F・ケネディ大統領(1962年頃)。
今から6、7年前の夏、私はパリのメンズ・ファッション・ウィークを訪れていた。アル バザールのシアサッカーのダブル・ジャケット、ブルックスブラザーズのオックスフォードBDシャツ、ストライプのレップタイ、赤白青のトッズのゴンミーノ、そしてラルフ ローレンのクレイジーマドラスチェックのショーツといった出で立ちだった。
ストリート・フォトグラファーたちは、このコーディネイトに大喜びしていた。しかし、サン・ジェルマンのカフェのメートル・ドテルが私のショーツを見て、「残念ながら、それでは当店には入れません」と高慢に嘲笑したことで、私は完全に落ち込んでしまった。
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ここ数十年でドレスコードは大幅に緩和され、それは悲劇的とも言えるレベルになっている。現在では、紳士にジャケットとネクタイの着用を求めるレストランやホテルはごくわずかだ。ジーンズは、ブルーカラーの仕事着から、日本製の職人が手織りしたセルビッチデニムを使った、高級デザイナーズ・ウェアになり、事実上どこでも受け入れられるようになった。ザ・リッツ・メイフェアでさえ、100年来のデニム禁止令を緩和した。スニーカーも、今では特定のナイトクラブを除いて、ほぼどこでもOKだ。
しかし、ショーツはどうだろう? それは水辺や砂地以外の場所では、ほとんどの人がカジュアルすぎると考えている最後のメンズ・アイテムだ。
スーツを着ていれば事実上、どのようなドレスコードであっても入場を断られることはない。しかし、安くてサイズの合わないスーツを着ているよりも、上手にカットされたジーンズ、Tシャツ、スニーカーといったスタイルの方がかっこよかったりする。
ショーツも同様だ。一概に否定することはできない。着こなし方によっては、それは素晴らしく見えるものなのだ。
私がパリを訪れたのと同時期にTHE RAKEに寄稿した服飾評論家G・ブルース・ボイヤーは、こんな提案をした。
「シャンブレーのシャツ、こざっぱりしたシルク製のボウタイ、ライトウエイトのブレザーに、パッチワークのマドラス・ショーツを合わせてみてはどうだろう? あるいは、柔らかく折り目のついたタバコ色のリネン・ショーツに、クリーム色のサファリジャケットを合わせ、首には鮮やかなバンダナを結ぶのはどうだろう?」
その数週間前に伊フィレンツェのピッティで撮影されたストリート・スタイルの写真を見ると、ボイヤー氏の提案と同じような格好をした男性がたくさん写っている。
POMMELLA NAPOLI | POMMELLA NAPOLI |
最近のランウェイやストリートでは、ボリュームのあるプリーツ入りのショーツが多く見られる。裾は膝上でウエストラインが高めになっている。これは、5年ほど前から見られる、太ももの真ん中あたりの長さで、よりスリムにフィットしたデザインに対する反動のようだ。正直なところ、どちらのシルエットもありだと思う。
最近のメンズウェア・ショーでは、あらゆるシルエットのショートパンツが、同じように多様なスポーツコートやブレザーと一緒に提案されている。ショートパンツに関しては、膝下丈のデザインを避けるべきということ以外は、難しいルールはない(膝下丈だと、カプリパンツのようになってしまうので、ソックスとサンダルの組み合わせのように、長年にわたってNGなのだ)。
ショーツに適した靴とソックスについて言えば、これもまた何でもありだ。ソックスなしでカジュアルに、ボートシューズ、ドライビング・モカシン、ホワイトバックスなどがいい。またはシンプルなクラシック・スニーカー、コンバースのオールスターやジャックパーセル、ヴァンズのオーセンティックやスリッポン、アディダスのスタンスミス、ルーディック・ライターのテニス、サントーニのロートップなどもおすすめだ。ペニーローファーは、ソックスを履いても履かなくてもOKだが、ソックスを履いた場合(特に白を選んだ場合)は、古風でプレッピーな“Take Ivy”の雰囲気を醸し出す。
ファッショニスタのニック・ウースターは、重厚なブローグでもショートパンツとうまく組み合わせられることを示しているが、このスタイルはおそらく上級者のみが試すべきだろう。ファレル・ウィリアムスのようなショーツ+タキシードも同様だ。
フォーマリティを保つには、英国領バミューダの男性を参考にするといいとボイヤーは言う。そこでは1950年以降、男性がブレザー、シャツ、ネクタイ、ショートパンツ、ニーハイソックスを着用し、それは9時から5時までの立派なビジネス・ウエアとして認められている(個人的は、ハイソックスはない方が良いと考えているが……)。
「バミューダの男性がショーツを見事フォーマルに着こなせることを示すまでは、ショーツはミリタリー、アスレチック、あるいは非常にカジュアルなリゾートアイテムだと思われていた」とボイヤーは述べている。
私たちが知っているショーツは、19世紀末から20世紀初頭にかけて、アフリカやアジアに駐留していた英国軍が採用したもので、初期のものはネパールのグルカ兵の制服をモデルにしていた。ゆったりとしたプリーツと幅広の脚、そしてハイウエストのバンドを特徴とする現代のショーツは、この時代の熱帯地域で着用されていたものにインスパイアされ、ミリタリー・オリーブカーキに加え、さまざまなトロピカル・カラーが揃っている。
MAGNUS & NOVUS | MAGNUS & NOVUS |
ショーツはミリタリーからアウトドア、スポーツ、レジャーへと浸透していった。1950年代までには、アメリカの高級カントリークラブでもショーツが着用されるようになり、多くの洋品店がセミフォーマルな“ショーツ・スーツ”を提供していた(今日のトム ブラウンのように)。
1960年代から80年代にかけて、写真家スリム・アーロンズは、“美しい場所で、美しいことをする、美しい人々”を撮影していた。被写体は育ちの良いジェットセッターたちだったが、その多くが、ショーツを美しく着こなしていた。
ここにある画像を見てほしい。着心地がよく、暑い季節には実用的で、正しく着こなせば極めてエレガントにもなるショーツを、見直すべき時が来ているのだ。#FreeTheKneeキャンペーンはここから始まる。