Ariston by the Bay

アリストン創業105周年記念 クルージングイベント開催

June 2025

4代続くナポリの名門生地マーチャント、インパラート社の創業105周年を記念したクルージングイベント「Ariston Night」が東京湾で開催された。4代目CEOのジャンパオロ・インパラート氏へのマルキシ 岸 秀明社長のインタビューとともにレポート。

 

 

text yuko fujita

 

 

レインボーブリッジを背景に、美しく映える「シエル・ブルー」。

 

 

 

 世界のサルトリアを魅了し続けるナポリのプレミアム服地ブランド「アリストン(Ariston)」のブランドホルダーであり、4代にわたって家業を守り続けるファミリーマーチャントのインパラート社(Imparato S.p.a.)が、創業105周年を迎えた。

 

 この特別な年を祝うために「Ariston Night」が開催された。舞台となったのは、東京湾に浮かぶラグジュアリークルーザー「シエル・ブルー」。約50名のゲストとともに日の出ふ頭を出港し、お台場・豊洲沖を巡るナポリスタイルのクルージングパーティが幕を開けた。

 

 開会の挨拶に立ったのは、インパラート社代表のジャンパオロ・インパラート氏。インパラート家が代々受け継いできた、仕事への情熱と審美眼、そして「艶」と「洒脱」へのこだわりを語った。続いて、ファッションジャーナリスト矢部克已氏が祝辞と乾杯の音頭を取り、この夜にふさわしい華やぎを添えた。

 

 

インパラート社4代目CEOのジャンパオロ・インパラート氏(中央)。

 

 

ファッションジャーナリスト矢部克已氏の祝辞と乾杯の音頭のあと、船上は大いに盛り上がった。

 

 

 

 

 クルーズ中盤には、MCとヴォーカルを務めたキアラ・テルスオロ氏のリードにより、ライブ演奏がスタート。ピアニストのモレノ・ブッソレッティ氏とヴァイオリニストのポール・フローレア氏とのトリオで奏でられた音楽は、まさにナポリの夜を思わせるような官能と洗練を湛えていた。

 

 招かれたのは、全国から集まったオーダースーツ業界やファッション業界の関係者たち。誰もがこの非日常の空間のなかで、アリストンの世界観とナポリの美学に浸りながら、“贅沢なひととき”を楽しんだのだった。

 

 さて、船内でマルキシの岸 秀明社長からジャンパオロ・インパラート氏にインタビューが行われたので、その中身を。

 

 

船上パーティの主催者であり、インタビュアーとなったマルキシの岸秀明社長と、ジャンパオロ・インパラート氏。

 

 

 

1. ナポリ大学に進学されましたか? 何を専攻されましたか?

 

 私は古典派の高校で学び(古代ギリシャ語とラテン語を専攻)、その後ナポリ大学の経済商学部を優等で卒業しました。

 

 

2. 大学卒業後すぐにインパラート社に入社されましたか? それとも他社で働いた経験がありますか?

 

 大学最後の年が終わる前、海軍で兵役に就いていたあいだに、既に自分の将来は家業にあると決めていました。繊維の世界は急速に変化しており、私は伝統に革新をもたらす新しいアイデアで貢献できると感じていたのです。

 

 

3. アリストンというブランドはいつ立ち上げたのですか?

 

 1990 年代に働き始めたとき、私はブランド作りに集中することを決めました。祖父ジョヴァンニ・インパラートが使用していた生地の耳(セルヴィッジ)を調べていたところ、「Ariston」の文字が入った1960年に織られた耳を見つけました。この言葉はギリシャ語の「Aristos(最高・優れている)」に由来します。祖父が同じ名前のタバコを吸っていたこともあり、もしかするとその時にブランド名を思いついたのかもしれません(笑)。そこに「Napoli」の文字を加え、「Ariston Napoli」が誕生したのです。

 

 

4. インパラート社およびアリストンの特徴。生地を選ぶ際に最も重視することは?

 

 新しいコレクションを準備する際には、過去に作ったものをすべてリセットし、新シーズンに向けて新しい色、趣向、感覚を追求します。メンズのテーラードスーツ市場はクラシックを基盤としつつも、ファッションの流れに合わせて急速に変化しています。アリストンのコレクションにとっての「レシピ」は、徹底したリサーチ、妥協なき品質選定、そして強い個性です。私は、他の人が踏み込まないような道を探検するのが好きなのです。

 

 

5. 日本人が「クールなナポリの男」のように着こなすには?

 

 朝、仕事に向かうとき、私は世界で最も美しい湾のひとつをクルマで通ります。美しい海に寄り添いながら、太陽と素晴らしい景色に包まれていると、エレガントに、カラフルに、そして洗練された装いをするのが自然と楽しくなります。私たちのお客様がどこに住んでいようとも、美しいものに囲まれることを好むと信じています。「クールなナポリの男」のように装うということは、美の中に身を置き、自分自身の個性を表現するということです。オーダーメイドの服を着る人の特徴、それは「唯一無二」であることなのです。

 

 

 

 

 数ある生地マーチャントの中でも、アリストンの生地は実にナポリらしい華やかさで、確かに強烈な個性を輝かせている。アリストンの生地を纏うことは、まさにジャンパオロ氏のいうように美の中に身を置き、ナポリのエレガンスを纏うことなのである。