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鴨志田流着こなし術Vol.21:ワイドラペルとワイドパンツが最新ムード

April 2025

クラシックなテーラードスタイルに新鮮さを注入できるのは、ワイドラペルとワイドパンツの組み合わせだ!

 

 

text yuko fujita

photography setsuo sugiyama

 

 

鴨志田康人/Yasuto Kamoshita

1957年生まれ。ビームスを経て1989年、ユナイテッドアローズの設立に参画。クリエイティブ ディレクターを経て現クリエイティブ アドバイザー。2008年に「カモシタ」を始動。ポール・スチュアート、フェリージの日本におけるディレクター、バンコクのザ・デコラムのプライベートレーベルのディレクターも務めている。

 

(右)堅苦しくない今の気分の新しいクラシック

「しっかりした仕立てで上質さは保ちつつ、もっと遊びで着られ、タイドアップもできる。そんな気分にピッタリな、ワイドラペルと裾幅24cmのワイドパンツのセットアップを作ってみました。肩パッドが入っていますが、胸周りが軽やかなので、堅苦しくないでしょう?」ジャケット¥92,400、トラウザーズ¥33,000 both by Camoshita / United Arrows Roppongi Hills ローバックスのヴィンテージシャツ、シャルベのブートニエール、カルミナのビットモカシンproperty of Yasuto Kamoshita

(左)70年代後半からのニューヨークトラッドスタイル

「70年代後半からポール・スチュアートが先陣を切って新しいアメリカンクラシックを創り上げたその象徴が、6年前に私が関わり始めてからずっと提案し続けているワイドラペルの2Bスーツです。社会性を大切にして着る自然な肩線の服でありながら、平凡でないのが魅力の一着です。フェアアイルベストを合わせるのもニューヨークトラッドらしいですよね」。ウールモヘアスーツ¥198,000、ベスト¥59,400、タイ¥19,800 all by Paul Stuart シャルベのシャツ property of Yasuto Kamoshita

 

 

 

「1960年代後半から70年代にかけて、社会に帰属する人たちの象徴だったスーツが、抑圧されてきた社会に対するアンチテーゼとして、従来のビジネスエリートのための服ではなく、遊びや踊りに行くための服だったり、ミュージシャンが着たりと、多様化していったんですよね。そのスーツの象徴がワイドラペルやワイドパンツであり、コンケーブしたショルダーだったのですが、それが今改めて刺激的だなって。時代の空気感が当時と被るんですよね。私はクラシックスタイルの中に常に刺激を求めるので、そのためには少しずつ変えることはしたほうがいいと思っています。パンツのシルエットを太くするのを恐れずに。今日穿いているパンツの裾は24cmですからね」

 

 

オーラを放つ伝説のリトリコ

ローマの伝説アンジェロ・リトリコの恐らく1960年代後半のスーツ。ミラノのヴィンテージショップで購入。「1960年代、メンズはパリが中心だった時代に、ブリオーニとともにローマを代表する存在だったリトリコが、ポストクラシックを打ち出した頃の服です。ワイドラペルでコンケーブしたショルダーラインをもったグラマラスなカッティングは独特で、唯一無二の色気がありますよね。イタリアのサルトリアの矜持が詰まった、素晴らしい一着です」。スーツ property of Yasuto Kamoshita

 

 

 

氏の定番の合わせもシルエットで新鮮に

「チェーサレ アットリーニに2004年にスペシャルオーダーしたシルク100%のスーツです。当時、長く続いていたクラシコイタリアに対して新鮮な空気を取り入れたい気分だったこともあり、大胆にも長く付き合いのあったアットリーニで、なだらかにコンケーブしたショルダーをリクエストし、パンツの裾幅も太くしてもらうなど、かなり無理なお願いをしてしまいました。出来上がりを着用したときはアットリーニファミリーの前でサタデー・ナイト・フィーバーのポーズをとって笑わせました(笑)」。シューズ¥88,000 Carmina / United Arrows Roppongi Hills スーツ、ポール・スチュアートのシャツ property of Yasuto Kamoshita

 

 

 

コンケーブした肩の特別なアットリーニ

「ソブリンのカシミア100%の1Bハウンズトゥースジャケットは、自分の中でクラシコイタリアがマンネリ化していた2004年頃に、次を模索していて仕かけたものです。ちょうどトム・フォードがカッコいいと思っていた時期です。それに、最近アネモネで購入した70年代製ウールフランネルパンツを合わせました。作りはクラシックですが裾幅は26cmです(笑)。オーセンティックなスタイリングであっても、シルエットが変わるだけで凄く新鮮な気持ちになれます」。ジャケット、トラウザーズ、シャルベのシャツ、マリアーノ・ルビナッチのタイ、クロケット&ジョーンズのシューズ property of Yasuto Kamoshita

 

 

 

70年代のいなたいチェックが新鮮

「Mc Sherryというブランドの、Arbiterという店の別注のモデルだと思います。中にフェルラ社の生地ラグが付いていて、いなたいツイードのチェックとワイドラペルがいかにも70年代っぽくて、今回のテーマのベースとなったまさに当時に作られたものだと思います。それをデイリーに合わせるのがとてもカッコいいかなって」。合わせているのは、ドルモアのタートルネックニット、リーのジーンズ、オールデンのタッセルスリッポン。ジャケット、ニット、ジーンズ、オールデンのシューズ property of Yasuto Kamoshita

 

 

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