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鴨志田流着こなし術 Vol.18:ニュートラルでいられるリネンジャケットがいま気分

August 2023

鴨志田氏は夏の代表素材であるリネンについて、ジワジワと気になり始めているという。が、そこにはもちろん、氏ならではのこだわりが!

 

 

text yuko fujita

photography setsuo sugiyama

 

 

 

トルソーのリネンジャケットは、左から1930年代頃のサクスフィフスアヴェニュー、30~40年代のアメリカもの、そして50年代頃のフレンチ。着用しているのは、30~40年代頃の恐らくイタリアもののジャケットで、それにオーチヴァルのボーダーカットソー、ヴィンテージのミリタリーコットンパンツ、アメリカの田舎町で昔に購入したサンダルという装い。「生成りのリネンジャケットは昔の映画でよく目にしますが、今の時代とあまりにかけ離れていることもあり、着るとコスプレになってしまう気がして敬遠していたんです。が、年齢からか、時代がそうさせているのか、今年はそこに違和感がなくなっているんですよね。夏に白のリネンを着るって素直にカッコいいなと。来春夏はこれらのアーカイブをベースに、自分のブランドやポール・スチュアート コレクションのカッティングに取り入れて製作中なんです。こういうのを肩肘張らずに着られたら、とっても素敵かなって」すべてproperty of Yasuto Kamoshita

 

 

 

 夏の代表的な素材といえばリネンだが、意外なことに鴨志田氏は、夏の装いに関しては、これまでどちらかというとリネンよりもコットンのジャケットで過ごすほうが好みだったという。

 

「リネンってひと癖あって、軽やかに着るのは意外とハードルが高いんです。特にリネンのテーラードって、“ザ・紳士の夏の装い”のような、妙にキメている感じに見えてしまうところに抵抗があって、そこまで積極的には着ていませんでした。だから、リネンのジャケットを着る際は、いかにそう映らないかを考えていましたね。リネンはゆったりしたフォルムで着るととても相性がいいですし、リネンのイメージであるアーシーな色やオフホワイト、くすんだ色というのが時代の気分というのもあるんでしょうね。新しいリネン製品のシワは、最初こそ角が立つような硬さがあるんですけれど、使い込んだリネンのシワはナチュラルで素敵なんですよね。ポケットチーフもそうですが、使い込んで繰り返し洗っていくうちに、どんどん育ってよくなっていくんです」

 

 

左:リヴェラーノ&リヴェラーノで仕立てたリネンスーツに、アンナ マトゥオッツォで仕立てたオープンカラーシャツ、エトロのポケットチーフ。「ベージュのリネンスーツには、白かサックスブルーかベージュ系のシャツを合わせるのが基本の中で、ピンクって世間ではあまりしない色合わせだと思うんです。そこが新鮮でいいなって。シャツの綿素材はシモノ ゴダールのヴィンテージで、これが素晴らしいんです」 ベルト ¥17,600 Maison Boinet / United Arrows Roppongi Hills ジャケット、ベルト、チーフ property of Yasuto Kamoshita

中:マドラスチェックのジャケットの素材は一瞬インド綿かと思わせるが、100%リネンで、ソブリンのもの。シャツはポール・スチュアート、タイはトム・フォード、パンツはカモシタ、ベルトはJ&M デヴィッドソン。「リネンだとリヴェラーノ&リヴェラーノのネイビーブレザーがお気に入りで長く愛用していますが、パッと見た感じではリネン素材だと感じさせないこのマドラスチェックもリラックス感があって大好きです。アーシーな色合いでまとめて着るのが好きですね」すべてproperty of Yasuto Kamoshita

右:アナトミカのリネン素材のドルマンジャケット、カモシタのボーダーTシャツ、ノンネイティブのパンツ、ボードイン&ランジのベルジャンシューズ、ヴィンテージのスカーフという合わせ。「ジャケットは15~20年前に購入したもので、とても存在感がありながら今のフレンチの薫りもあって、ずっと愛用している一枚です。ブラックデニムやホワイトジーンズ、クリースの入ったトラウザーズ、靴もアナトミカらしくオールデンからサンダルまでいけてしまう懐の深さも魅力です」すべてproperty of Yasuto Kamoshita

 

 

 

<鴨志田康人プロフィール>

1957年生まれ。ビームスを経て1989年、ユナイテッドアローズの設立に参画。クリエイティブディレクターを経て、2018年よりクリエイティブ アドバイザーに就任。2008年にスタートした自身のブランド「カモシタ」がワールドワイドの人気を集めているほか、2019 年からはポール・スチュアートの日本のディレクターも務めている。

 

 

 

THE RAKE JAPAN EDITION issue 52