HOW to WEAR, HOW to ENJOY!
鴨志田流着こなし術 Vol.14
私の推す生地 BEST OF BEST
December 2022
今回、鴨志田氏が選んだ生地はいずれも氏がスミズーラで仕立ててきた服の中からだ。紳士の定番とされる生地の中で自分らしさを楽しむ。そんな氏のBEST OF BEST。
text YUKO FUJITA
photography SETSUO SUGIYAMA
My Best Fabrics 01(左)
ドラッパーズのサキソニーハウンズトゥース
リヴェラーノ&リヴェラーノのサキソニーハウンズトゥースジャケット、ベルナール ザンスのトラウザーズ、コモリのボーダーカットソー、カルミナのアリゲータービットモカシンという合わせ。「自分の華奢な身体に合うからなのかな。ハウンズトゥースは最も好きな柄です。特にこのモノトーンベースの黒×クリームがかった白のサキソニーが、小粋な60年代のフレンチらしさが感じられて気に入っています。梳毛のハイカウントヤーンだと柄がクリアに出すぎるのに対し、サキソニーはミルドされているから、柄がいい感じにぼやけてちょうどいい塩梅なんです」。すべて property of Yasuto Kamoshita
My Best Fabrics 02(右)
ゼニアのヴィンテージフランネル
リヴェラーノ&リヴェラーノのスーツ、シャルベのシャツ、エルメスのタイ、リヴォルタのチャッカブーツ。「このゼニアのヴィンテージグレイフランネルは、リヴェラーノの大崎さんから薦められて選んだのですが、打ち込みの密度がちょうどいい塩梅で、大変気に入っています。英国のものは往々にして硬すぎるきらいがあって、まあ着込んでいけばいいんですけど、逆にイタリアのものは華奢すぎて。これは英国とイタリアのいいところが上手く掛け合わさっているなって。ネイビー、ブラウン系のフランネルも好きですが、やっぱり王道のグレイがいちばんかな」。すべて property of Yasuto Kamoshita
「ソラーロ、グレイフランネル、それと夏のシアサッカーが自分の中での究極で、極端な話、この三つの生地があれば1年を過ごせると思います(笑)。あとはネイビーブレザーかな。重衣料の生地に関しては、長く愛用できるものを選びたい気持ちが最初にあります。それは飽きのこなさとか、ある程度の丈夫さもそうですし、色や素材感のちょっとした違いも私の中では大切です」と鴨志田氏。
「90年代に初めてソラーロを見たとき、随分ととっつきづらそうな生地に思えました。ただ、セルジオ・ロロピアーナ氏を筆頭としたイタリアの洒落者たちのソラーロの装いを見ているうちに、自分も着てみたくなり、もう25年以上着続けているわけです。今日まで継承されてきた生地にはそれぞれにストーリーがあり、人を魅了し続けるだけの理由があります」
定番素材といってもたくさんあって、どれを選ぶかで自分らしさが出せるとも。例えば、メンズクロージングの王道素材でありながら、昨今のクラシッククロージングの既製服の世界では意外にもあまり見られなくなっているウールギャバジン。鴨志田氏は本連載でもたびたび同素材の服を着用していて、氏らしい素材というイメージが定着している。
「自分らしさを出したいからといって奇を衒う必要はないんです。そうではなくて、オーソドックスなものの中から自分らしくいられるものを選べるようになることが、お洒落になるコツなのかな」
My Best Fabrics 03
スミス ウールンズのソラーロ
リヴェラーノ&リヴェラーノのスーツ、シャルベのシャツ、エルメスのタイ。「自分がクラシコイタリアを学び始めた90年代、最初に知ったのがソラーロで、これは英国の生地なんだぞと、イタリア人からこの生地のよさを教えてもらった思い出があります。今でこそソラーロはポピュラーになりましたけれど、独特な玉虫の色合いゆえ、当時は着ていてよくとても怪しげな目で見られましたね(笑)。もはや刺激はなくなりましたが、逆に安心して着られる、私にとって欠かせない社交服です」。すべてproperty of Yasuto Kamoshita
My Best Fabrics 04
ヴーコテックスのウールギャバジン
ムゼッラ デンベックのスーツ、ヒルディッチ&キーのシャツ、マイケル J. ドレイクのタイという合わせ。「ミラノのムゼッラにあった生地で仕立てたスーツです。自分の持っているヴィンテージ生地の中でいちばん好きかもしれません。本物のギャバに見られるバネのあるタッチで、仕立て上がりのドレープ感も見事ですし、なんといっても色がいい。ベージュカーキともちょっと違って、生地でオーダーしたようなものです。モードな目線においてのギャバジンのカッコよさというのがここ数年ありますよね」。すべて property of Yasuto Kamoshita
My Best Fabrics 05
1950年代のヴィンテージ グレンプレイド
ルビナッチのスーツ、シャルベのシャツ、ポール・スチュアートのタイ。「90年代の終わり頃に、ナポリのルビナッチの店に積んであった中から自分で選んで作ってもらったものです。当時からルビナッチの生地のストックは圧巻でしたね。マリアーノさんは恐らく50年代頃のヴィンテージではないかと言っていました。グレイとチャコールの掛け合わせは、白×黒のグレンプレイドとはまた雰囲気が異なり、アンダーステートメントな薫り、控えめなところがエレガントで男らしいなって思うんです」。すべて property of Yasuto Kamoshita