HOW to WEAR, HOW to ENJOY!

鴨志田流着こなし術 Vol.12
軽やかに持ちたい愛用のバッグたち

June 2022

鴨志田康人氏の鞄選びにもまた、装いの大きなヒントがある。

ここでも意識しているのは、やはり“エフォートレス”だという。

 

 

text yuko fujita

photography natsuko okada

 

 

 

愛用のクラッチバッグは

柔らかな雰囲気のものを

サルトリア ダルクオーレで仕立てたハイツイストウールのダブルブレステッドのスーツは、美しいブルーと軽やかな仕立てが気に入っている。ピンクのオックスフォードボタンダウンシャツはブルックス ブラザーズ、タイはドレイクス、白リネンチーフはシモノ ゴダール、そしてシューズはジョン ロブのスリッポン。合わせたボックスカーフのクラッチバッグは、25年以上前に購入したエルメスの「ジジェ」。「クラッチバッグはそのときの用途に合わせてサイズを選びますが、やはりどこか柔らかな雰囲気のあるものが好きですね」。 スーツ、シャツ、ネクタイ、チーフ、シューズ、クラッチバッグ すべて property of Yasuto Kamoshita

 

 

 1990年代のクラシコイタリア全盛期はサルトリアで仕立てたスーツに合わせてカチッとしたクラシックな革のブリーフケースを持ち歩いているイメージもあったが、鴨志田康人氏のスタイルは、鞄に関していうと、ずっと長らく手ぶら、もしくはクラッチバッグの印象が強い。

 

「バイヤー時代は書類をたくさん持ち歩いていましたから、ブリーフケースを使うことも多かったです。ただ、その後ビシッと3ピースで決めたような人たちがたくさん出てきて、そこからちょっと抜け出したいと思うようになったんです。今思えば、その頃に私のモットーである“重厚な印象のものは軽く”というエフォートレスに見せるスタイルが生まれたんですよね。遡れば学生時代はVANヂャケットの紙袋を持つのがステイタスでしたし、ミスタードーナツのデカい粉袋を抱えて鞄代わりにしていましたから(笑)、今愛用しているクラッチバッグはその延長かな」

 

 

 

休日のちょっとした

お出かけの際はボンサック

7~8年前に購入したというドリス ヴァン ノッテンのキャンバス製ボンサックは、ラフでありながら品のあるところが気に入っていて、週末のちょっとしたお出かけの際などに愛用しているという。鴨志田氏のスニーカースタイルはなかなかレアだが、気のおけない仲間と一緒の際には、こんな感じのスタイルも見せる。今季購入したお気に入りというロエフのラムレザーブルゾンに、ナイキのスウェット、ノンネイティブのコーデュロイパンツ、ニューバランスのUA別注「M1700」をコーディネイト。レザーブルゾン ¥110,000 Loeff/United Arrows Harajuku() スウェット、パンツ、スニーカー、バッグ すべて property of Yasuto Kamoshita

 

 

 

1泊の旅行時に

よく愛用しているボストンバッグ

見た瞬間に素材と色の組み合わせ、フォルムに惚れ込んで、15年くらい前に購入したというフランスのアズディン・アライアのボストンバッグ。こういったブランドからも素晴らしいものを探し出すところが、さすが鴨志田氏である。リネンのブルゾンはアナトミカの大定番「ドルマン」。オーラリーのスウェット、シャルベのシルクスカーフ、ポール・スチュアートのジョッパーズパンツとブーツという合わせ。

 

 

 

鴨志田スタイルの

主役を担うのはクラッチバッグ

普段使用しているのは、ほとんどがクラッチバッグ。上から時計回りに、「封筒型のものは文房具店で購入し、自分でステッカーを貼りました。ブランド名はわかりません(汗)」。ハラコ素材のものはドリス ヴァン ノッテン。シセイで去年オーダーした革袋は、クルクル丸めて紙袋のようにして使っている。深緑のミニクラッチはジル・サンダー。最も活用頻度が高いとか。ゴヤールは昔のキャンバス素材のもので、ブリーフケースだったものをアジオカの社長にスケッチを描いてクラッチにリメイクしてもらった。同社のブランド、ガンゾの「リメイクプロジェクト」というサービスで、一般からも受け付けている。すべて property of Yasuto Kamoshita

 

 

 

ブリーフケースは

クラッチバッグのように持つ

左は、新品で購入してから長年使い込んでいい感じにアジの出てきたエルメスの「ガーデンパーティ」。中央は、パリのクレニャンクールで運よく見つけたというエルメスの「キリウス」。右の赤茶のブリーフケースはデルヴォー。「バッグの色が効果的に使われると、黄色や赤茶はトータルコーディネーションの際に威力を発揮するんです。例えば、ソラーロのクラシックスーツを着ていても、赤いバッグを合わせれば、それだけで従来のクラシックの重々しさから解放されてフレッシュに装えます。ただ、ハンドルを持って使うことはもうなく、クラッチバッグのように脇に抱えて持つ感じかな」。すべて property of Yasuto Kamoshita

 

 

<プロフィール>

鴨志田康人/Yasuto Kamoshita

1957年生まれ。ビームスを経て1989年、ユナイテッドアローズの設立に参画。クリエイティブ ディレクターを経て2018年よりクリエイティブ アドバイザーに就任。2008年にスタートした自身のブランド「カモシタ」が世界で人気を集めており、2019年からはポール・スチュアートの日本のディレクターも務めている。