HOW to WEAR, HOW to ENJOY!

鴨志田流着こなし術 Vol.5
今どきのフォーマルの楽しみ方とは?

February 2020

厳格なルールがあるフォーマルだが、インターナショナルな視点では、

最近その中身が少し変わってきている。

そんな今の時代、鴨志田康人氏はフォーマルをどう考えるのか?

 

 

photography tatsuya ozawa  text yuko fujita

 

 

鴨志田康人/Yasuto Kamoshita

1957 年生まれ。ビームスを経てユナイテッドアローズの設立に参画。2004 年からクリエイティブディレクターを務め、昨年よりクリエイティブ アドバイザーに就任。07 年、自身のブランド「カモシタ ユナイテッドアローズ」を始動し、世界中で人気を集めている。2019 年より日本におけるポール・スチュアートのディレクターにも就任している。

 

ディナージャケットの上にダッフルコートを合わせる粋

「偉大なるイヴ・サンローラン先生に経緯を表し、ジョシュア エリスの生地を使った黒の英国製ダッフルコートをディナージャケットの上から合わせました。こういう粋なドレスダウンって魅了されますよね。これに襟のステッチを排してフォーマルっぽさとモード感を備えたUAのオリジナルシャツを合わせました。フォーマルシャツを着る必要は全然なくて、こういう使い方もありかなと」。ダッフルコート ¥90,000、ディナージャケット¥65,000、トラウザーズ¥27,000、シャツ¥14,000 all by United Arrows/United Arrows Roppongi Hills(ユナイテッドアローズ 六本木ヒルズ店 Tel.03-5772-5501)  ボウタイ property of Yasuto Kamoshita

 

 

 本来フォーマルには厳密なルールがあるので、頭でっかちに考えてしまいがちだが、それはクラシックな服の装いと同じで、ルールを知ったうえで、それがどのような場なのかを考え、ときに崩したりして、装いを楽しめばいいと鴨志田氏は話す。

 

「ドレスコードって年々変化していっていて、昨今はブラックタイ指定のパーティでもブラックタイでないゲストもいて、崩れてきているところもあります。だから、イブニングのディナージャケット指定でも、あまり堅苦しく考えなくていいと思うんです。大切なのはちゃんと演出がされた装いであるかどうか、その場にふさわしい装いであるかどうかということなんです。

 

 その集いがどんな目的で、誰の主催で、どのような人が集うか、それを踏まえたうえで崩すかどうかを考える。今の時代、場合によっては中にカットソーやニットを合わせたっていいわけです。そこを考えるのが楽しさでもあるので、多少個性的であっても、私はそのほうが面白いのではと思っています」

 

 欧米ではまだまだブラックタイ指定のパーティは多いけれども、日本では減ってきてしまっているのが残念とも。

 

「個人的には今日着ているミッドナイトブルーのタキシードが最高にクールで、夜に最もふさわしいエレガンスを備えていると思います。カジュアル化が進んでいるからこそ、今日のようなフォーマルな装いに身を包むと気分が高揚します。極端に言ってしまえば、スーツをたくさんもっていなくても、タキシードを1着もっているライフスタイルのほうがカッコいいじゃないですか。結婚式で新郎がタキシードをレンタルするっていうのも寂しいですしね(笑)」

 

(左)ライトブラウンが新鮮なモード感のある装い

「カルーゾの2020年春夏コレクションのリネンシルク素材タキシードで、この色が最高です。これ見よがしでない程よいずらし感があり、今まで見たことない色ですけど、すごくセンスよくいいところを突いているなって。本来は夜の服ですけど、今ならデイフォーマルに着てもカッコいいでしょうね」。

ディナースーツ¥185,000(予定価格) Caruso、モックネックTシャツ¥8,000 United Arrows、チーフ¥6,500 Fratelli Luigi/all by United Arrows Roppongi Hills(ユナイテッドアローズ 六本木ヒルズ店 Tel.03-5772-5501)

 

(右)夜の光に合うベロアの色気タートルネックもあり!

「友人の結婚式の二次会にぴったりの装いです。ベロア特有の素材感が夜の光の中で妖艶な存在感を放ち、デカダンスな雰囲気が醸し出されると、大人のフォーマル感が生まれて素敵です。これに千鳥格子のトラウザーズを合わせて、フレンチっぽくクールな色気でまとめました」。

タートルネックニット¥16,000 United Arrows チーフ¥6,500 Fratelli Luigi/both by United Arrows Roppongi Hills ジャケット、トラウザーズ property of Yasuto Kamoshita(ユナイテッドアローズ 六本木ヒルズ店 Tel.03-5772-5501)

 

当然ながら黒のピークトラペルのディナージャケットも所有しいていて、そのときの足元はジョン ロブのガルニエが定番だ。それに、シャルベのドットのボウタイとカマーバンドを合わせるのが好み。靴、ボウタイ、カマーバンド property of Yasuto Kamoshita

 

 

<ディナージャケットの小物使いにも注目!>

 

 メイン写真で鴨志田氏が着用しているのは、2010年のカモシタ ユナイテッドアローズのコレクションから、ウールモヘアのミッドナイトブルーのタキシード。それにシャルベのシャツとボウタイ、ヴィンテージのリネンチーフ、オペラパンプスを合わせている。

 

「ディナージャケットでしか使われないショールカラーは、スペシャルな気分になれて好きなんです。一方で、ウイングカラーのシャツはどこか過剰な感じがして好きじゃない(笑)。日本人にはあまり合わないのではと思うんです。ダブルで遊び心に合うよう、洒落たオペラパンプスを合わせました」

 

 

<本連載の他記事は以下より>

Vol.1 春の装いは巻き物でアクセントを

Vol.2 ジーンズは程よいリラックス感で楽しむ

Vol.3 小物から考えるスーツの装い

Vol.4 2019年秋冬的フレンチトラッド術
Vol.5 今どきのフォーマルの楽しみ方とは?

Vol.6 今季気になっている春のアウター4選 

Vol.7 春にこそ着たいベージュ&オフホワイト
Vol.8 2020年秋冬、装いの変化は?