HOW TO STYLE A V-NECK SWEATER
Vネック・セーターをどう着るか
February 2022
Vネック・セーターは、そのルーツであるスポーツウエアから長きにわたり愛されてきた。
往年のスターたちのスタイルを参考に、この万能セーターの着こなしを探ってみよう。
by JOSH SIMS
Vネック・セーターと聞いて思い出すワンシーンがある。映画『氷の微笑』(1992年)で、マイケル・ダグラスがナイトクラブの人混みの中からシャロン・ストーンを見つける場面だ。彼はVネックのセーターを、シャツやTシャツの上からではなく、素肌に直接身に着けていた。女性の服装によくあるスタイルだ。
衣装デザイナーによるこの選択はひどいものだったが、その後多くのフォロワーを生んだことを鑑みると、多くのファッション評論家が言うほどの大失態ではなかったのかもしれない。ありがたいことに、これによってVネック・セーターというアイテムが無くなってしまうようなことはなかった。
この着こなしには、実は前例があった。映画『9月になれば』(1961年)の中で、ロック・ハドソンが白い靴、白いチノパンにパウダーブルーのVネックを素肌に着て、ランブレッタを乗り回していたのだ。こちらのほうは、なぜか実にスタイリッシュだ。
かつてVネック・セーターは、中産階級のゴルフ好きでコンサバティブな中年男性のマストアイテムだった。スラックスとモカシンのように、ファッションを知らない男たちにとって安全で簡単なチョイスだった。
その起源は、クリケット、テニス、そしてゴルフなどのスポーツにあり、今日のスウェットシャツと同じような役割を担っていた。プレイ中やプレイ後に羽織る暖かいレイヤリングとして、Vカットはセーターの着脱を容易にしていた。またネックラインにはそれぞれのカレッジカラーが配されていた。
Vカットはシャツとネクタイを合わせることも容易で、これはよく俳優のロナルド・コールマンがやっていたスタイルだ。多くの男子学生のユニフォームとなったのもこの理由からで、ハリー・ポッターがもっともいい例かもしれない。
Vネックのボディは多様であった。ケーブルニットは週末のスタイルの定番で、ケーリー・グラントがスカーフを合わせていた。またフェアアイルはウィンザー公がゴルフ場に着てきたことで一大ブームとなった。1960年代に入ると、ライル&スコットのようなゴルフウェア・ブランドが、アーガイルをVネックの定番柄とした。
Vネック・セーターの魅力の本質はいつも変わらない。カントリークラブでのレジャーや、男たちの寛ぎの時間を象徴するのだ。アルフレッド・ヒッチコック監督の『めまい』(1958年)では、ジミー・スチュワートがオープンネックの白いシャツにプレーンなVネックを着ていたが、そのキャラクターをよく表現していた。
その後Vネック・セーターは、しばらくはトラディショナルなアイテムとして扱われていたが、トレンドの振り子は再び揺れ動いた。モッズがポロシャツの上に着るというエッジィなスタイルを好むようになったり、セルジオ・タッキーニやフィラのVネックを取り入れたイタリア風の着こなしが流行したのだ。
映画『007 スカイフォール』(2012年)では、ダニエル・クレイグがシャツとネクタイの上に着用していた。『007 ゴールドフィンガー』(1964年)でショーン・コネリーが着ていたマルーン色のスラセンジャー製のVネックにオマージュを捧げたのかもしれない。
このように、Vネック・セーターはシンプルなアイテムだが、その変遷は実にさまざまなのである。