Salon de Plus: The Intersection of Classic and Mode

サロン ド プリュスのお洒落術:クラシックとモードの「いいとこ取り」

September 2024

photography natsuko okada

 

 

伊藤哲也氏
1978年、東京都生まれ。サロン ド プリュス代表。ブランドの経営・企画・接客のすべてを担当する。有名セレクトショップ勤務20年超を経て、2018年に神宮前にサロン ド プリュスをオープン。研ぎ澄まされたセンスと明るい接客で、急速にそのファンの数を増やしている。

 

 

 

 神宮前のビルの一室にひっそりと店を構える会員制オーダーサロン「サロン ド プリュス」が洒落者の間で話題になっている。特に2023年9月、THE RAKEに特集記事が掲載されてから、客足は大きく伸びたという。その実態と人気の秘密を、代表の伊藤哲也氏にうかがった。

 

 

―サロンドプリュスとは、どういったお店なのですか?

「オーダーメイドによるファッションアイテムをご提供するサロンです。完全予約制でパーソナルなショッピングをお楽しみ頂けます。ジャケットやスーツなどのトラディショナルなアイテムに加え、Tシャツ、ニット、ブルゾンなどカジュアルのMTMも可能なところが他とは違う点です。またモードのエッセンスを取り入れているところも特徴だと思います」

 

 

 

 

―お客様にはどのような方がいらっしゃいますか?

「THE RAKEに取り上げられてから、今までクラシックなテーラーでオーダーをされていた方が数多く来店されました。カジュアルでモードなアイテムをオーダーできるという点に惹かれたのだと思います。もちろんサロン ド プリュスでは、きちんとしたスーツやジャケット、ドレスシャツもお作り頂けます。間口が広く、ジャンルレスなお店なのです。また逆に、メゾン系のラグジュアリーブランドでお買い物をなさっていた方にも興味を持って頂くことができ、30代の若いお客様も増えました。こちらの方々にとってはクラシックが新鮮なようですので、エドワード グリーンなどをご紹介しています。サロン ド プリュスはクラシックとモードのいいとこ取りをしたような存在なのです」

 

 

 

 

―どういったスタイルを提案していますか?

「サロン ド プリュスのスタイルとしてまず挙げられるのは『ニュアンスカラー』です。これはグレー、グレージュ、ベージュなどの中間色をグラデーションで合わせるというテクニックです。コントラストの強い組み合わせではなく、各アイテムの色を少しずつズラしていって、優しいトーンで全身を包むのです。それぞれのアイテムの素材感を際立たせ、コーディネイトに奥行きを出すことができます。それから『モード&シック』です。基本となっているのはクラシックですが、モードなテイストを加えています。例えば人気アイテムであるハリントンジャケットは非常に古くからあるアイテムですが、素材を換えたり、メタルボタンをチョイスしたりしてクラシコ臭をおさえ、新鮮な表情に仕上げています。今季からは定番色であるネイビーもコレクションに加えましたが、いわゆる茄子紺ではなく、ミッドナイトネイビーやグレイッシュブルーなど今までになかったカラーに挑戦しています」

 

 

―どのようなものが売れていますか?

「ダントツに売れているのはアラシャンカシミアで仕立てたラグランスリーブのコートです。アラシャンカシミアとは、内モンゴル産の最高級カシミアで、素晴らしい肌触りを持っています。シングルではなく、圧倒的にダブルブレステッドをお選びになる方が多い。軽く温かく着やすく、サロン ド プリュスを象徴するような1着です。それからウルトラスエード(人工スエード)でできたハリントンジャケットも人気です。まるでスエードのような風合いですが、軽く伸縮性があり丈夫で、何より水洗いできるのが魅力です。真夏以外は毎日着られるカジュアルジャケットです。オリジナルブランド『SEELO』のニットやTシャツも好評です。首元、身幅、着丈を細かく調整することができ、メジャーリングして、ぴったりのサイズのものをオーダーして頂けます」

 

 サロン ド プリュスは、王道のクラシックにモードなテイストをかけ合わせ、とびきりのセンスで提案している。THE RAKEに掲載された全身コーディネイトをそのまま購入していくお客様も多いという。ここからは、伊藤氏がこだわり抜いたアイテムと、具体的なコーディネイト例を見ていくことにしてみよう。

 

 

コート¥680,000、ハリントンジャケット¥154,000、ニット¥28,000〜、トラウザーズ¥66,000(すべてMTM価格)Salon de Plus

 

 

 

 サロン ド プリュスを象徴するような中間色=モカグレーのアラシャンカシミア製コートを中心にしたコーディネイト。生地はイタリア屈指の老舗ミル、ピアチェンツァ製だ。ラグランスリーブでダブル仕立て。ゆったりとしたドレープを描くシルエットが美しい。内側に合わせているのはスモークグレーのウルトラスエード製ハリントンジャケット。ハリントンはインナーとしても活躍する。インナーのニット、ナチュラルストレッチのコットントラウザーズまで、全身をマイルドに仕上げている。

 

 

ジャケット¥176,000、ニット¥28,000〜、トラウザーズ¥66,000(すべてMTM価格)Salon de Plus

 

 

 

 メタリックグレーのベルベットコーデュロイ製ダブルジャケット。メタルボタンがモダンなアクセントとなっている。「シワにならず、美しいドレープを描くコーデュロイは、コットンとしては秋冬のイチオシ素材」と伊藤氏。特にサロン ド プリュスがチョイスしているイタリアの有名マーチャント、カルネ社のコーデュロイは品質が高く、カラーバリエーションも豊富だ。合わせているツープリーツ、ドローコードつきトラウザーズは、ブラックデニム製である。

 

 

ハリントンジャケット¥198,000、ニット¥28,000〜、トラウザーズ¥48,000(すべてMTM価格)、エドワードグリーンのシューズ¥235,400 Salon de Plus

 

 

 

 ハリントンジャケットはその誕生を1930年代まで遡るクラシックなショートジャケットだが、サロンドプリュスの手にかかると、モダンな1着に生まれ変わる。ブラックネイビーのウール素材は世界最古の生地マーチャント、ドーメルが開発した「ミレニアル」。ウール100%だが、ナチュラルストレッチ性を備えている。トラウザーズは2インプリーツ、ドローコードつきの定番シルエット。足元は英国の名門エドワード グリーンのローファー「デューク」である。サロン ド プリュスの別注で、ブラックのユタカーフとスエードのコンビ。この靴もベストセラーとなっている。

 

 

ジャケット¥176,000、ニット¥28,000〜(すべてMTM価格) Salon de Plus

 

 

 

 サロン ド プリュスがネイビーブレザーを手掛けるとこうなる。グレイッシュブルーの落ち着いた色味を持つベルベットコーデュロイに、メタルボタンでアクセントをつけ、モダンな表情に仕上げている。生地はイタリアの有名マーチャント、カルネ社が扱うもの。インナーにはブラックのコットン100%ニットを合わせている。

 

 

コート¥880,000、ハリントンジャケット¥154,000、ニット¥28,000〜、トラウザーズ¥66,000(すべてMTM価格)Salon de Plus

 

 

 

 グレージュ系のニュアンスカラーで全身をまとめた例。主役はイタリア、ピアチェンツァ製のアラシャンカシミアで仕立てたラグランスリーブのダブルコートである。サロン ド プリュスのシグネチャーアイテムだ。これは同じアラシャンカシミアでも3本の糸を撚り合わせた「3プライ」となっており、素晴らしい保温性を誇る最高級品である。インナーにはサンドベージュのウルトラスエード製ハリントンジャケット。トラウザーズのスモークグレーが他アイテムのマイルドな色を引き立てている。それぞれの素材感が際立つように、丁寧に色を合わせていくのがコツだ。

 

 

フィールドジャケット¥400,000、ニット¥28,000〜(すべてMTM価格)Salon de Plus

 

 

 

 ベースとなっているのはクラシック・カジュアルを代表するアイテム、ミリタリーフィールドジャケットだが、素材を換えることでまったく違った1着に仕立てられている。名門ドーメルが供給するベビーアルパカ70%✕ウール30%のラグジュアリーな素材を載せ、機能性はそのままに、ラグジュアリーなアウターとして生まれ変わった。定番のアイテムの素材を載せ替え、新しい表情を引き出すのはサロン ド プリュスの得意技だ。

 

 

ジャケット¥480,000、ニット¥28,000〜、トラウザーズ¥66,000(すべてMTM価格)、エドワードグリーンのシューズ¥235,400 Salon de Plus

 

 

 

  モカグレーのピアチェンツァ製アラシャンカシミアをジャケットとして仕立てた例。アラシャンカシミアはコートのみならず、ジャケット素材としても最高である。インナーにはコットン100%のモックネックニットをさらりと合わせて。トラウザーズはイタリア・ビエラの高級服地メーカー、ドラッパーズのコットンストレッチ素材を使用。2プリーツのテーパードシルエットはサロンドプリュスの十八番だ。足元はエドワードグリーンのブラックローファーで引き締める。このローファー、実はラバーソールであるところも人気の秘密である。

 

 

コート¥880,000、ハリントンジャケット¥176,000、ニット¥28,000〜、トラウザーズ¥66,000(すべてMTM価格)Salon de Plus

 

 

 

 シグネチャーアイテムであるアラシャンカシミアのダブルコートの中でも、さらに一番人気なのが、3プライのキャメルカラーだそうだ。これをグレーのアイテムと合わせる。実はキャメル✕グレーは、実に相性の良い色合わせなのだ。インナーに着たハリントンジャケットは、ナポリの生地ブランド、カチョッポリのピンウェール・コットン製。トラウザーズもカチョッポリの起毛コットン製。微妙に素材感を変えるのがコツだ。キャメルには淡いグレーを合わせがちだが、あえて濃いめのグレーを合わせれば、「こくまろ」なコーディネートが完成する。

 

 


 

今シーズン注目のおすすめ素材

 

<アラシャンカシミア>

ダブルコート(プレーン)¥680,000、ダブルコート(3プライ)¥880,000(すべてMTM価格) Salon de Plus

 

 

 

 サロン ド プリュスを代表する素材であるアラシャンカシミア。アラシャンとは中国内モンゴル地区の地名で、そこで採取される高品質なカシミアを指す。作り手のピアチェンツァはイタリア・ビエラにて1733年創業したイタリア有数の老舗。イタリアに初めてカシミアをもたらしたブランドだとも言われる。高級獣毛の扱いに長けており、その品質は間違いなく世界一である。ウロコ(光沢が出すぎること)をおさえた上品な発色と、アザミの実を使って毛羽立たせた自然な風合いが魅力だ。プレーン(460g)と3プライ(550g)の2種類が用意されている。

 

 

 

<「カルネ」のコーデュロイ「ベルヴィ」>

シングルジャケット¥165,000、ダブルジャケット176,000(すべてMTM価格)Salon de Plus

 

 

 

 クチュール界で愛されるイタリアの有名マーチャント、カルネ社のコーデュロイバンチコレクション「ベルヴィ」。カルネがデュカ ヴィスコンティ(DUCA VISCONTI DI MODRONE)に別注し、世界で最も美しい「コーデュロイ」として誕生した素材だ。圧倒的なカラーバリエーションは他に並ぶものがない。サロン ド プリュスでは太畝(左、370g、コットン100%)と細畝(右、380g、コットン98%✕エラスタン2%)が用意されている。「サロンドプリュスではオープン当初よりコーデュロイを手掛けており、アカ抜けた都会的なコーデュロイアイテムを得意としています」と伊藤氏。

 

 

 

<ウルトラスエード>

シングルジャケット¥148,000、ハリントンジャケット¥154,000(すべてMTM価格)Salon de Plus

 

 

 

 ジャケットやハリントンジャケットの素材として理想的なのがウルトラスエードである。日本の東レが開発した人工スエードで、普通の皮革と比べ、軽く、伸縮性に富み、発色がよく、耐摩耗性も高い。何より水洗いが可能なのが嬉しい。サロンドプリュスで扱っているのはアストンマーティンやマセラティなどの高級車の内装に使われているものと同じクオリティの最高級品である。洋服として縫製するのは難しく、国内で手掛けることができるファクトリーはサロン ド プリュスをはじめ数社しかない。約20色のカラーバリエーションが揃う。

 

 

 

<オリジナルニット「SEELO」>

¥28,000〜(MTM価格)Salon de Plus

 

 

 

 サロン ド プリュスのオリジナル・ニットブランドが「SEELO」である。Tシャツまでオーダーできるというのは珍しく、サイズ感にこだわる方にとっては朗報だ。伊藤氏によるメジャーリング、及びそれぞれの好みに合わせて、身幅、丈などを細かく調整することが可能。首元もクルー、モックネック、Vネックなどから好みのデザインを選ぶことができる。イタリア、アルビニ社の油分をたっぷりと含んだ糸が使われており、コットン100%であるにもかかわらずゴワゴワしない。編地はしっとりした質感で、美しいドレープを描く。カラーバリエーションは40色以上あり、まとめ買いする顧客も多いという。納期は3週間以内。

 


 

 

 ここに挙げた以外にもサロン ド プリュスでは数多くの素材、アイテムが用意されている。完全予約制のプライベートが確保された空間で、卓越したセンスを持つ伊藤氏のアドバイスを聞きながら、ゆうゆうとしたショッピングを楽しむことができるのだ。

 

 サロン ド プリュスは、THE RAKEが自信を持っておすすめする、パーソナル・オーダーサロンなのである。

 

 

サロン ド プリュス

東京都渋谷区神宮前3-6-4 フォーラムビル3F

TEL.03-6434-0470 ※完全予約制(定休日:月曜日)

https://salondeplus.com/