TIWI ISLAND RETREAT

究極のオフグリッドへの逃避行

July 2023

 

text yuko fujita 

 

 

 

バサースト島の「ティウィ・アイランド・リトリート」。©Maxandfaye

 

 

 

 オーストラリア、ノーザンテリトリーの州都ダーウィンでの滞在を終え、いよいよノーザンテリトリーの偉大なる大自然へと足を踏み入れる日がやってきた。向かう先は、島民の約90%がアボリジナルの子孫だという、ダーウィンの北およそ80kmにあるティウィ諸島のバサースト島だ。

 

「ナショナル・ジオグラフィック」オーストラリア版の人気番組『アウトバック・ラングラー』でメインキャストを務めたマット・ライト氏は、2022年に公開されたNetflixの人気ドキュメンタリーシリーズ『ワイルド・クロック・テリトリー』で、一躍世界に知られるアウトバック ラングラーとなった。同番組では、ノーザンテリトリーを舞台に、人間の生活圏に侵入してきたクロコダイルを互いの安全を守るために捕獲し、別の場所へ移送する彼のライフワークにクローズアップしている。捕獲シーンで見られる巨大なクロコダイルのデス・ロール(360度回転)は、何度見てもブルブル震える迫力だ。

 

 映画『クロコダイル・ダンディー』のミックにリアルで勝ってしまうアウトバック・ラングラーなのだが、バザースト島で滞在する“ティウィ・アイランド・リトリート(Tiwi Island Retreat)”のオーナーは、なんとそのマット・ライト氏である。『ワイルド・クロック・テリトリー』の中では、アフリカから資材を取り寄せ、ロッジや露店風呂を自らの手で作っているシーンが幾度となく出てきた。

 

 ワクワクドキドキしながら見たドキュメンタリーの世界の中の広大な自然が広がるバサースト島に、僕は今から向かうのだ。そして、ライト氏がオーナーのリトリートに2泊するのである。ノーザンテリトリーの大自然とともに生き、魅力を誰よりも知るマット・ライト氏による滞在プログラムは、僕にエキサイティングな体験をもたらしてくれるに違いない。

 

 

 

ダーウィンからバサースト島まで軽飛行機をチャーターしてひとっ飛び

 

 

 ティウィ アイランド リトリートがあるバサースト島までは、ダーウィン国際空港から軽飛行機でのフライトになるため、ダーウィン国際空港のはずれにぽつんと佇むチャーター専門の航空会社「エア フロンティア」のダーウィンオフィスに向かった。

 

 

なんとこじんまりしていること! ここでは予約している名前を伝えただけでOKの返事。搭乗時のセキュリティチェックもなければパスポートチェックもなくて拍子抜け(笑)。

 

 

 

 

 パイパー・エアクラフト社が一般航空市場向けに設計し、1972年から1984年まで製造された双発プロペラ機「Piper Pa31-350 Chieftain」。きちんとメンテナスしながら約50年も飛行し続けているわけだから古くても大丈夫と信じ、いざ搭乗! ちなみに手荷物の許容重量は限られているのでスーツケースはダーウィンで預け、必要最低限の荷物で臨むべし。ダーウィン~バサースト島の往復フライトのチャーター料金は、4人までなら1300AUD。

 

 

 

 キャプテンとこの距離感(副キャプテンはいないので、機長にすべてを委ねる)。プロペラ音もダイレクトに伝わってきて、かなりの臨場感だ。自分が秘境に向かっていることを実感する。

 

 機体は無事離陸し、まったく揺れることなく安定飛行に入った。眼下にダーウィンの町、ティモール海が広がり、しばらくすると前方にティウィ諸島が姿を現してきた。美しい景色を眺めながら写真を撮っていたら、あっという間に30分が過ぎ、着陸態勢に。島が眼眼下に大きく広がるが、空港らしきものが見当たらない⁉

 

 

 

 

 と思ったら、舗装されていない赤土の滑走路が視界に入ってきた。空港の施設があるわけでもなければ、電気が通っているわけでもなく、あるのは赤土の一本道のみ。

 

 

無事着陸し、他のゲストを送迎したパイロットの皆さんと一緒に記念撮影。土の滑走路に着陸したのは人生で初めてだ。

 

 

 

 バサースト島ポートハードのエアストリップでティウィ・アイランド・リトリートのスタッフに出迎えられ、近くの桟橋まで荷物を運んでボートに乗り込み、マングローブが生い茂る中をティウィ・アイランド・リトリートへいざ出発!

 

 途中リトリートのスタッフが、指を差してあっちを見てごらん、というので目を向けると、クロコダイルが泳いでいるではないか! すぐそこに野生のクロコダイルがいることに興奮したが、バサースト島では水辺にクロコダイルがいるのを僕はこのとき知る由もなかった。

 

 

 

 

 15分ほどボートに乗っていると、ビーチのすぐ先に「ティウィ・アイランド・リトリート」が見えてきた。

 

 

 

 

 リトリートの目の前のビーチ前にもクロコダイルの姿が。奥にもう一匹。ケガしていたのを助けたら、それ以来住みついたとのことだが、野生なので近づきすぎないように注意。

 

 

 

 

 ビーチにボートを停めて、いよいよ島に上陸! テラスではゲストたちがリラックスした格好でビールやカクテルを飲みながら楽しそうに話している。バーカウンターもある! かなりいい感じ! ホテルのようなかしこまった感じでなく、スタッフが超フレンドリー。

 

 ありがたいことに、ここは、食事、アルコール類含めたドリンクはすべてインクルーシブになっている。フィッシングなどのアクティビティも宿泊パッケージ価格に含まれているので安心してさまざまなことに楽しめる(ただし、一部スペシャルなアクティビティは別料金)。

 

 ここで気を付けることは、3つのみ。ひとつはヤシの木の下を歩かないこと。なぜなら、硬く重たい椰子の実が頭上に落ちたら一発アウトだからだ。もうひとつは海で泳がないこと。手つかずの海洋保護区であるバザースト島の海にはたくさんのクロコダイル、サメや猛毒のボックスジェリーフィッシュ(ハコクラゲ)がいるからだ。それだけ豊かな生態系が形成されている証でもあり、イルカの姿を見ることもできた。最後はサンドフライと呼ばれる小さなハエだ。これに噛まれると猛烈なかゆみをともない、痕もなかなか消えないので、ダーウィンでサンドフライ用の虫よけスプレーを購入してから入島することをオススメする。

 

 

 

 

 ティウィ・アイランド・リトリートには12mのプールがあり、デッキチェアに横になりながらビールやワイン、カクテルを楽しみながら、日焼けし、読書して。泳ぐタイプのプールではないけれど、暑くなったら中に飛び込めば最高に気持ちいい!

 

 

 

 

 僕の部屋は、プールの目の前にあるオーシャンズルーム(2泊2名で3000AUD)。ここが最も一般的な部屋で、広さは20㎡もないのだが、ここに持ってきた荷物はトートバッググひとつだけだし、この島においてはこの広さで十分! 扉を開けると風が心地良く入り込んできて、プールの向こうには多種多様な魚が釣れる海が広がっていて、回りには自然以外に何もない。こういうリゾートってある意味究極の贅沢なのではないかと思えてくる。滞在中は部屋の扉を開けっぱなしでベッドに寝転んで本を読んだり。完全なリラクゼーションモードになれて、時間に追われない非日常に幸せの意味を再確認させられる、そんな環境なのである。

 

 ここは携帯電話の電波も入らないし、Wi-fiも基本的には使用不可(どうしても必要な人にだけパスワードを教えてもらえる)なので、否応なしにデジタルデトックスできるのもある種の贅沢である。

 

 

 

 

 夕方からは長く続く海岸をバギーで進み、宿泊者の皆でキャンプファイヤー。ビールやスパークリングワイン、赤や白ワインに、カナペをつまんで最高のアペリティフに。太陽が水平線に沈む時間帯になると、息を呑むほど美しいマジックアワーが現れる。

 

 

マジックアワーその2。夕陽は刻一刻と色彩がダイナミックに変化していく。この瞬間はティウィ・アイランド・リトリート滞在におけるハイライトのひとつだろう。

 

ちなみに日中はこんなのもアリ。しばらくボーッと眺めていると、海面にクロコダイルやイルカたちが姿を現す。

 

 

 

 

 ビーチバギーでのナイトクルーズでは、延々と続くビーチを走破! 運が良ければウミガメの産卵にも遭遇できる。空を見上げれば、幾千もの星のなんと美しいこと。リトリートに戻っても、夜はまだ終わらない。初日は椰子の実投げ大会、2日目はリンボーダンス大会といった感じで、毎晩イベントが催されている。そこで宿泊者の親睦が深まって、翌日からはもう友達!というわけだ。

 

 

 

 

 2日目は船を出してもらってみんなで釣りにでかけた。もちろん、こちらもインクルーシブの料金に含まれている。バサースト島はフィッシングスポットとしても有名らしく、沖に出ずとも大物がバンバン釣れる! 釣りに夢中で写真を撮り忘れたが、みんなで結構なサイズの魚を10匹近く釣りあげた。

 

 

 

 

 釣った魚はリトリートのスタッフがすぐに捌いてくれ、毎食のランチやディナーで出してくれる。アジアと先住民からの影響を多分に受けた料理で、アジアンスパイスやブッシュタッカーを多用し、オーストラリアンキュイジーヌを軸にしながらも、中華、タイ、ベトナムなど、多国籍なアジアンテイストをミックスした料理は、飾り気こそないが、とてもおいしいのだ。

 

 

料理はこんな感じ。専属シェフが腕によりをかけてふるまうメニューは、飾らずとも味はピカイチ! ワインも進む。

 

 

 

 

 食後も誰ひとり部屋に戻らず、リトリートの夜は長い。子ども連れで来ていたゲストもいて、みんなとても楽しそうにしていたし、ここは家族で訪れるのも大いにありだ。子どもにとっても、大変貴重な体験となるだろう。

 

 マット・ライト氏の宿だけあって、本当に素晴らしかった。頭も心もだいぶデトックスできたんじゃないかな。

 

 

TIWI ISLAND RETREAT

ティウィ諸島バサースト島の西側に佇む。2泊から4泊までのプログラムが用意されている。宿泊、食事、アルコールを含むドリンク、基本のアクティビティがすべてインクルーシブとなっている。

 

【大人2名2泊の料金】

Village Room 2400AUD

Ocean Room 3000AUD

Ocean Family Room 4000AUD

Luxury Glamping Tents 4400AUD(離れにあり)

 

https://tiwiislandretreat.com.au/

協力:ノーザンテリトリー政府観光局