DETOX, RETOX, REPEAT at W OSAKA

目的地となるホテル、W大阪

February 2022

御堂筋のど真ん中に位置する「W大阪」が老若男女を問わず多くの人々を魅了している。

昨年3月ついに日本初上陸を果たしたWホテルの全貌をレポートする。

 

 

 

 

Wのアイコニックなデザインであるホテルロゴ。先世界のホテルにあるが、ひとつとして同じデザインはないという。ここ大阪は、何百個ものクロームボールが使用されている。海外出身のデザイナー曰く、クロームボールの一見“きっちり”整列しているが、ひとつ外すとすごく弾ける点を日本人らしさに重ねたという(遊び心もあるけど、外ではしっかりしているということだとか)。

 

 

 

 

 世界最大のホテルチェーンとして知られる米マリオット・インターナショナルが展開する30のホテルブランドのなかのラグジュアリーブランドのひとつ「W(ダブリュー)」は、クラシックなラグジュアリーホテルとはひと味もふた味も違う。

 

 Wホテルが誕生したのは、1998年のこと。ニューヨークのカオスな(混沌とした)世界のなかで、ゲストに刺激を与えたい、という思いのもと生まれたホテルブランドである。ゲストが持つ、思い切り楽しみ、日常の繰り返しに反発したいという強い願望に火をつけ、ゲストの“生”への渇望を解き放つことを目指すとともに、ゲストの価値観を大事にしながら、常に進化し続けるラグジュアリー=“ニューラグジュアリー”をゲストに提供してきた。そしてそのユニークな考え、そして世界観に共鳴する大人たちから、絶大なる支持を受けている。

 

 そんなWホテルの58軒目として日本初上陸を果たしたのが、昨年の3月16日にオープンした「W大阪」だ。大阪のラグジュアリーホテルとしては最大の規模を誇り、ビル一棟丸ごとが同ホテルという最近では珍しい贅沢な造り。客室は、全337室のうち50室がスイート。安藤忠雄氏が外観デザインを手掛け、内装の約8割をアムステルダムのコンクリートというデザイン事務所が担当した。

 

 建築コンセプトは「大阪商人の羽織」。江戸時代に商人たちが贅沢を禁止されていた時、彼らは羽織の外側は黒などの控えめな設えにし、その一方で内側を鮮やかなデザインにして個性を表現していたとか。そこからインスピレーションを得た同ホテルの外観は黒一色。そんなシンプルなホテル外観とは裏腹に、館内には驚きと刺激、そしてエキサイティングな要素に満ちている。数多くあるユニークなポイントのなかでも、注目すべき3つに絞って紹介したい。

 

 

 

大阪の街並みに現れた“ブラックボックス”「W大阪」。真っ黒な外観に、白いWロゴが映える。

 

 

 

 まずは、到着したゲストが最初に足を踏み入れるアライバルトンネル。日本の折り紙や切り紙、桜の花びらに着想を得た3000個以上のプレート(いずれも手仕事によってランダムに角度がつけられている)が壁からアーチ状の天井を覆っており、桜の季節にはピンク、夏には海を思わせるブルー、秋には銀杏並木の黄色と、季節に合わせた鮮やかな色に染まる。これから始まる滞在へのワクワクをさらに盛り上げてくれるだろう。

 

 

ゲストを最初に出迎える「アライバルトンネル」。桜の季節にはピンク色に染まる(写真)。

 

 

 

 次は、ロビーフロアに位置する「リビングルーム」だ。Wの心臓部分ともいえるこの場所には、バーやダイニングだけでなく、W大阪でしかお目にかかれないであろうDJブースや漫才ステージまでもが集まっている。道頓堀のネオンからインスパイアされた、カラフルな色使いの座席が目を引くかと思えば、頭上に配されている提灯は、真っ白のシンプル仕様。その傍らには、いろいろな世界のゲストをお招きしたいという想いを込めて、様々な顔をしたオリジナルのコケシが飾られている。このフロアだけでも、何度訪れても飽きることのないほどに、多彩な顔を見せてくれる。

 

 

 

「リビングルーム」の中央にあるのは漫才ステージ。状況を鑑みて、今後はさまざまなイベントが開催される予定。奥に見えるDJブースだけは、現在も毎日稼働中。W大阪のミュージック アンド エンターテインメント ディレクター吉山勇樹氏による音楽が空間を彩る社交場だ。

 

 

 

 そして3つめが客室。日本という土地柄を表現すべく、ベッドルームとバスルームを分けるのはドアではなく障子が着想源の引き戸。開けておくとひとつの空間に、閉めるとプライベートな空間になる、という日本ならではの美しい文化を改めて実感させてくれる。また、畳を新しい形で生かすべく、畳の素材で作ったクッションも備えられている。

 

 

スタンダードタイプの客室「ワンダフルルーム(キング)」。窓側にあるのがバーカウンター。大阪の夜景を一望しながらプライベートなカクテルタイムを楽しめる。ベッド&リビングルームとバスルームは、障子が着想源の引き戸を閉めれば、それぞれの空間に分けられる。

 

上段右から2番目が「エスケープ」ボタン。夜になったら、ぜひこのボタンを押してみてほしい。

 

 

 

 そんな客室において他のどのホテルよりもユニークなのが、ベッドサイドにある「エスケープ」というボタン。このボタンを押すだけで、テレビの背面の壁にストライプ状に取り付けられた照明が点灯する。偶数のフロアは海をイメージしたブルー、奇数のフロアは桜の花をイメージしたピンク色がアクセントとなる空間に変身し、客室にいるだけでも昼と夜、全く違う雰囲気を楽しめるのだ。

 

 また、多くのホテルがF&B(フード&ビバレッジ)と呼んでいる部門をあえて“B&F(ビバレッジ&フード)”と呼ぶほど、ドリンクに対して強いこだわりを持つ同ホテルを象徴するのが、全客室に配されている本格的なバーカウンターだ。外を眺めながらカクテルタイムを楽しむことができ、本格的なシェイカーやリキュールも豊富に揃っている。

 

 50室あるスイートルームの中でも、特筆すべきは最上ランクの「エクストリームWOWペントハウススイート」。最上階に位置しており、広さは200平米、天井高は4.5メートルと、一歩足を踏み入れただけで思わず“Wow”と言ってしまいたくなる空間だ。エントランスエリアでは日本庭園を思わせる緑豊かなスペースが迎えてくれ、バスルームにはシャンパンボウルをイメージした特注の浴槽、さらにキッチンやDJブースまで設置されている。窓の外には御堂筋が真っ直ぐ伸びており、夜には煌めくイルミネーション、秋には黄色に染まる銀杏並木を独り占めできる。

 

 一見ひとつの空間にみえるこのスイートだが、こちらも日本の伝統的な家屋に着想を得ているため、スライド式の扉によって5つの部屋に分けることも可能。自由なスタイルに変えられるため、友人たちを招いてのパーティなどにも最適だ。

 

 

 

 

 

 

 全6つのダイニング&バーを擁している同ホテルだが、ディナーには、大阪の食文化を存分に堪能できる鉄板焼ダイニング「MYDO(まいど)」をおすすめしたい。ひとつのダイニングの中でエリアが3つに分かれており、遊び心溢れる“粉もん”を中心とした「FUN(ファン)」、高級食材を大胆に組み合わせたクリエイティブな料理が楽しめる「LUXE(リュクス)」、そして大阪発祥の割烹に鉄板のテイストを取り入れた「KAPPO(かっぽう)」から選ぶことができる。

 

 

 

「MYDO」の内観。写真は「KAPPO」のエリア。金色が多用された華やかな空間だ。

 

 

 

 食事に華を添えてくれる内装は、グラマラスの森田氏によるもの。そして氏による内装をさらに唯一無二にしているのが、黒田征太郎氏によるアートワークだ。いずれの作品も黒田氏が実際にひとつひとつこの場で描いたもののため、同じものはひとつとしてない。ユニークで、大胆で、活気に溢れる大阪を感じてもらえる場所にしたいと、大阪出身の二人が抜擢されたという。

 

 現在は、3月27日(日)までの金・土・日限定で『Art of MYDO』と題したスペシャルディナーを提供中。本コースでは、FUN、LUXE、KAPPOの3つのカテゴリーを超えて料理を楽しめる、なんとも贅沢なもの。尾崎牛のタルタルとキャビアに始まり、松葉蟹のしゃぶしゃぶや極太巻き寿司、明石焼きやシャトーブリアンのステーキ、さらには牛出汁ラーメンまで、それぞれのカテゴリーのシグニチャーメニューを凝縮した全15品が提供される。“天下の台所”といわれたこの土地らしさを感じてほしいと、ステーキが供される際には、ゲストが自らステーキ用の“包丁”を選択できるというサプライズも。ビビッときたものをチョイスして、その切れ味とステーキの美味しさを存分に楽しんでいただきたい。

 

 

 

「極上太巻き寿司 いくらのせ」は、KAPPOの一品。仕入れ状況によって変更の可能性もあるというが、筆者がお邪魔した際には大間の天然本鮪やエビ、ホタテや金目鯛、子持ち昆布、そしてせりや黄韮、赤水菜など、10種類以上の食材が一本に巻き上げられていた。

 

「尾崎牛のタルタルとキャビア」。フィンガーライムの酸味とタルタルの甘み、そしてキャビアの塩気が口の中で絶妙に合わさる。

 

コースの締めのひとつ「牛出汁ラーメン」。醤油ベースの牛出汁スープと、つるりとした麺、そして、程よい大きさの霜降り肉のバランスが抜群だ。

 

 

 

 もうひとつのダイニング「Oh.lala…」は、アジアのレストラントップ8に選ばれた「La Cime(ラシーム)」の高田シェフが監修している新感覚のニューブラッセリー。伝統的なフレンチダイニングであるラシームともまた異なるフレンチを堪能できる。スイーツ好きは、ピエール・エルメ・パリ出身のシェフが常駐している「MIXup」も要チェック。

 

 

「Oh.lala…」は、“丸”を多用した空間。ずらりと並んでいる銅鍋や鮮やかなブルーから、フランスの香りが漂う。

 

 

 

 美味しいものをたらふく食べて、身体を動かしたくなったら4階へ。最先端の機材が豊富に揃うジムはもちろん、朝・昼・夜で異なる雰囲気に包まれるプール、そして都心の喧騒を忘れてただただリラックスできるWホテルオリジナルのアウェイ・スパまで、ウェルネスに関する施設すべてがこのフロアに集結している。多彩なアクティビティの中には、「瞑想体験」も用意されているため、宿泊を機に新しい何かを始めてみるのもいいだろう。

 

 

左のLEDワークは、道頓堀を代表するあのサインからインスピレーションを得たもの。ジム内にも大阪らしさが散りばめられているのだ。テクノジムの最新鋭のマシンが揃う。

 

幻想的な雰囲気を楽しめる屋内プール。ネオンライトによる演出で朝・昼・夜で雰囲気が異なる。

 

 

 

 W大阪が大阪にあるから、大阪に行こう!そんな気持ちにさせてくれる、圧倒的にユニークなホテルだ。ホテルが掲げている「DETOX. RETOX. REPEAT.」、つまりワークアウトしたり、プールで泳いだり、スパでデトックスして、美味しい飲み物や食べ物を楽しむ。そしてそれをひたすらに繰り返すことで心と身体に栄養を与え、いつの間にかエネルギーチャージできているだろう。ホテルの中にいるだけで充実した時間を過ごせるのはもちろん、他のどんなホテルでも得られない刺激を与えてくれるのが、W大阪なのだ。ニューラグジュアリーを体験したいのならば、ここに訪れれば間違いない。