GIACOMO MISSONI -Interview-

創業65周年を迎えた
新しい世代のミッソーニ

Wednesday, July 10th, 2019

伊ミッソーニは1953年の創業以来、「色の魔術師」と讃えられ、

デザイナーズ・ブランドとしての名声を欲しいままにしてきた。

その三代目に、ファミリーの伝統と未来へのヴィジョンを伺った。

 

text kentaro matsuo photography susumu tsunoda

 

Giacomo Missoni  ジャコモ・ミッソーニ

1988年生まれ、ミラノ出身。NABA(新美術アカデミー)にてマーチャンダイジングの学位を取得。ファッションリテール全般における専門的な経験の後、25歳でイタリアに戻り、ファミリービジネスに専念。現在ではメンズウェア、レディスウェア、ビーチウェア、子供服を含むミッソーニの全コレクションのマーチャンダイザーとしての役割を果たしている。

 

 

 1948年、オッタヴィオ・ミッソーニは、イタリアの陸上選手としてロンドン・オリンピックに出場した。その姿にひと目惚れした女性がいる。後に彼の妻となるロジータだ。ミッソーニの歴史は、こんなロマンチックな逸話から始まる。53年に夫妻で創業し、66年にミラノ・コレクションでデビューすると、カラフルで斬新なニット・アイテムが絶賛され、「色の魔術師」との異名を取る。以来、現在に至るまで、第一級のデザイナーズ・ブランドとしての地位は揺るぎない。今年、ミッソーニは創業65周年を迎えた。今回ご登場いただいたジャコモ・ミッソーニ氏は、創業者夫妻の孫にあたる人物だ。

 

「ミッソーニは、今でもファミリーによる経営を貫いている数少ないブランドです。われわれのブランドの歴史は、ファミリーの歴史そのものです。会社の理事会は、皆で食卓を囲みながら行います。『週末は、どこへ行くの?』といった話をしつつ、会社の運営についても話し合うのです」

 

 偉大なデザイナーであった祖父母は、彼にとっては優しいおじいちゃん、おばあちゃんだったようだ。

 

「私がまだ小さかった頃、祖父が使っていたペンでそこら中にラクガキをしてしまったことがありました。祖父には怒られましたが、しばらくして彼は木製の大きなテーブルとカラフルなペン、真っ白な紙を用意してくれました。そして『ここだったら、いくら描いてもいいぞ』と言ってくれたのです。孫たちは大喜びで、テーブルいっぱいに絵を描いたのです。その後、そのテーブルには祖母によって大きなガラス板が載せられ、今でもファミリーの食卓として使っているのですよ」

 

キッチンにて仲良く料理を作る、ミッソーニ創業者の故・オッタヴィオ・ミッソーニとロジータ夫妻。ファッション業界随一のおしどり夫婦として知られていた。

 

 

 ミッソーニ夫妻の孫たちへの深い愛情が感じられると同時に、アートに対する豊かな教育が窺えるエピソードだ。

 

 ミッソーニにとって、食卓は切っても切れないものだという。今回、創業65周年の記念事業の一環として、“ザ・ミッソーニ・ファミリー・クックブック”を出版したのも、そこにファミリーのルーツがあるからだ。

 

「レシピはファミリーが昔から食べてきたものばかりです。ミッソーニ家にはたくさんの客人が来ていて、祖母はいつも手料理で彼らをもてなしていました。彼女の料理は、シンプルだけどすごくおいしいんです。なにしろイタリア人は、食べることが大好きですから(笑)」

 

ブランド創業65 周年の記念事業の一環として発売された“ザ・ミッソーニ・ファミリー・クックブック”。かつてロジータが客人をもてなした、ファミリーに伝わるレシピが紹介されている。出版元: Assouline / 発売元: assouline.com

 

 

 今ではミッソーニ・ファミリーの主要メンバーとなり、世界中を飛び回っているジャコモ氏。ビジネスの話になると、その弁舌はがぜん熱を帯びる。

 

「あるジャーナリストが、『ミッソーニは、着ることができるアートだ』と言ってくれました。われわれはそんなブランドのDNAを守っていくつもりです。例えば、いま私が来ているジャケットは、ロンドン・オリンピックの際、祖父がイタリア選手団のユニフォームを作ったときと同じ織機で織られているのです。しかし伝統と同時に、ブランドには若さも必要です。これからはSNSを駆使してマーケティング活動をしたり、中国など新しい市場にも進出していきたいと思っています」

 

 日本の市場については、どうですか?との質問には、「日本は、われわれが最も重要視しているマーケットです。ムードボード(デザインの方向性を共有するためのコラージュ)を作る時や、型紙を起こすときも、常に日本人の好みや体型を考えているのですよ。それに……祖母が作ってくれるイタリア料理は大好きなのですが、実は私が一番好きなのは、和食なのです(笑)」

 

 そう言って片目をつむってみせた。新しい世代が牽引していくミッソーニから、ますます目が離せない。

 

昔ながらのニッティング・マシーンで織り上げられるミッソーニのニットは、誰にも真似のできない、複雑なカラーリングが魅力だ。まさに「色の魔術師」の面目躍如である。キャップ¥57,000、ニット・ジャケット¥229,000、ジップアップ・ブルゾン¥150,000、ポロシャツ¥63,000 all by Missoni(三喜商事 TEL.03-3238-1308)