Farm to Table: ENOWA YUFUIN
ファーム・トゥ・テーブルを提供する由布院のウエルネス・リゾート
September 2023
text kentaro matsuo
「ファーム・トゥ・テーブル」をご存知だろうか? 直訳すれば「農場から食卓へ」。2010年代のアメリカ西海岸から広まった食に対する考え方だ。レストランのすぐ近くに農園を作り、採れたてのハーブ・野菜をサーブするスタイルのことである。オーガニック栽培された新鮮な食材は何より美味だし、口にするのも安心だ。そのアイデアは世界中に広まり、多くのミシュラン星付きレストランに取り入れられた。
2023年6月に九州・大分県にオープンした「ENOWA YUFUIN」は、本格的にファーム・トゥ・テーブルを導入したツーリズム施設である。日本を代表する湯の町・由布院の4万4千㎡にも及ぶ自然に囲まれた敷地内に、10棟のヴィラと9つの客室のほか、レストラン、温室、サウナなどが設えられている。各客室は78〜165㎡もの広さを誇り、100%源泉かけ流しの露天風呂を備えている。ヴィラ棟にはインフィニティ温泉プールがある。
ここのウリは、何といってもレストラン「JIMGU」で供される食事である。ニューヨーク郊外のミシュラン2つ星店「ブルーヒル・アット・ストーンバーンズ」で経験を積んだチベット出身のエグゼクティブ・シェフ、タシ・ジャムツォ氏が、九州一円の選び抜いた生産者の食材使った料理を提供する。ハーブや野菜を育てている畑は、開業の3年前から来日し、土作りから携わったという。
「私が作りたいのは、大量生産や消費のための品種改良には背を向けた、本来のチカラを持っている食材なのです」とジャムツォ氏は語る。
JIMGUには決まったメニューはなく、その日いちばんの材料を見極め、ときにシンプルに、ときに大胆に調理をしていくという。大地の恵みを、そのまま体内に取り入れることを目指している。
ENOWA YUFUINは、由布院ならではの大自然と豊富な温泉に、ファーム・トゥ・テーブルの考え方をプラスした、新しい時代のウエルネス・ツーリズム施設として、国内外から熱い注目を浴びているのだ。