古き良き顔のイタリア靴：フラテッリ ジャコメッティ

photography yuko fujita

フラテッリ ジャコメッティの靴は、イタリア語で「兄弟」を意味する「フラテッリ」の名の通り、兄ルイジーノと弟ロベルトのジャコメッティ兄弟を中心に、約40名の職人によって手がけられている。柔らかな銀付きスエードに控えめで上品な色合いのゴールドバックルがあしらわれており、オン ザ ラストのハンドモカが大変美しい。すくい縫い工程を手縫いで行う九分仕立てのグッドイヤーウェルテッド製法。￥114,400 F.lliGiacometti／Afterhours

　クラシックなイタリア靴の魅力は、ローマのガットやランピン、ミラノのバリーニやメッシーナの靴がかつてそうだったように素朴さにあって、イタリア靴の一般的なイメージである、グラマラスさと化粧によるセクシーさとはおおよそかけ離れたものだ。そんな優しさと温もりに満ちたクラシックテイストのイタリア靴が今、改めていい。

　イタリア北部のバッサーノ・デル・グラッパ近郊の街ロッサーノ・ヴェネトで手がけられているフラテッリ ジャコメッティのシングルモンクは、そんな往年のイタリア靴の薫りを今に残す名作だ。ここは数々のメゾンブランドの靴を手がけていることもあり、モデリストのロベルト・ジャコメッティ氏の全体をきれいにまとめる手腕は非常に高く、職人の腕も実に秀逸だ。

　ローファー木型の設計になっているので履き口が広くなっており、いうなればモンクローファー。着脱もラクで、足が入ったときの収まりも大変よい。往年のイタリア靴の素朴さを残しながら、高貴な薫りを漂わせていて、その絶妙な塩梅が、“今”を存分に感じさせてくれるのだ。