EDWARD GREEN : BRITISH SHOEMAKING BRILLIANCE

足元はやっぱり英国靴
エドワード グリーン

July 2020

 

静かなるクリッキングルーム

 

 他のブランドと比較した場合、エドワード グリーンの有名なクリッキング・ルーム(アッパー工房)は、小さく静かだ。そこはカーフスキンの選択に続き、靴作りが始まる場所である。靴のアッパー用部品は、手で切断される。大きな工業用の打抜き機は使われない。

 

 主に使用されるのはイタリア製とフランス製のカーフスキンだ。ベテランのクリッカーの役割は革を精査し、革の成長の跡と欠陥を目ざとく見つけることだ。次に靴のパターンに応じて、独自のツールを使用して、最も適したエリアからアッパーを切り出す。

 

 セント・ジェームズとポールモールの間にある、昔の商店やホテルが立ち並ぶ美しい路地。シティ・オブ・ロンドンのイングランド銀行脇にある交差点……。エドワード グリーンの有名な“ピカデリー”ローファーを履いているスタイリッシュな紳士がいるのはそんな場所だ。

 

 エレガントで洗練されたモデルは、アンティークカーフ・レザーが使われており、大きなサドルピースおよび、オーク、トウヒ、ミモザの樹皮の溶液でなめされたレザーソールが特徴だ。

 

エドワード グリーンのもうひとつの代表作である“ドーバー”。アッパーに施された手仕事によるスキンステッチが、この靴の白眉だ。

 

 

なぜノーサンプトンだったのか?

 

 このような特別な素材が使われていることにこそ、ノーサンプトンが靴作りの中心となった理由を見いだせる。なめし用のオークの樹皮と水が入手できたこと、地元の牛市場から皮の供給があったこと、イングランドの中心に位置していて商取引に便利だったこと、これらが靴作りの中心となった理由だ。

 

 エドワード グリーンは、チェルシー・ブーツであれ、オックスフォード・タイプであれ、熟練の技で作られている。エレガントな202ラストを中心とするキャップトウのオックスフォードは、ゴテゴテとした装飾よりも、頑強でシンプルなデザインがいかにいいものであるかを示している。それは、あらゆる紳士のシューズ・キャビネットに必要なものだ。

 

 よく手入れして保存すれば、靴はその価値を長期間保つことができる。彼らは今でも、30年前に購入したクライアントから靴を持ち込まれている。愛情を持って、正しいケアをすれば、新しく購入したときと同じ満足感で、ずっと着用できる。そこが英国靴の魅力なのだ。

 

 

 

HISTORY

エドワード グリーンは、同じ名前を持つ男によって創業された。エドワードは12歳のときに靴作りを学び始めた。それは彼がアッパー職人になった年齢だった。才能はすぐに開花し、彼は多くの人に知られるようになり、1890年に自らの名を冠したアトリエを開いた。当初は3人の息子たちとともに、軍用ブーツなども製作していたという。その後、1970年代より経営は不安定になり、1983年、イタリアの靴デザイナー、故ジョン・フルスティック氏が買収。ブランドはモダンにアップデートされ、現在のエドワード グリーンとなったのだ。

 

 

 

エドワード グリーンの代表作BEST6

数あるラインナップの中でも、特に人気のモデルをピックアップしてみた。

 

CHELSEA(チェルシー)

エドワード グリーンを代表する一足で、日本においては不動のベストセラー・モデルだ。ややラウンド気味の202ラストは、主張しすぎず、すべてにおいてバランスがいい。一針一針仕上げられたダブルソールは、他に類を見ない美しさ。ベジタブルタンニングで仕上げられたレザーソールはクッション性に富み、包み込まれるような履き心地である。 Edward Green 

 

 

DOVER(ドーバー)

チェルシーと並んで、エドワード グリーンの代名詞ともいえる靴。専用ラスト32が使用されている。最大の特徴はモカ部分に施されたスキンステッチ。これはアッパー革の内側を手で縫い進んでいく縫製方法で、数ある縫製の技巧のなかでも非常に難易度が高い。これを行える職人は、技術力を誇るエドワード グリーンにも数えるほどしかいないという。Edward Green

 

 

CADOGAN(カドガン)

メダリオン等の装飾が美しいセミブローグモデル。定番の202ラストが使われている。古くからラインナップされているカドガンは、このラストの美しさを最も引き出すモデルだと言われている。丁寧に手仕事で仕上げられた穴飾りは、実に美しい仕上りだ。徐々にエイジングをしていくしなやかなアッパーは、長い年月をともに歩めるだろう。Edward Green

 

 

BERKELEY (バークレー)

クラシックなオックスフォード。スワン・ネックのステッチが施され、ブローギングが施されたパンチドキャップトウが特徴だ。このラストは82で、202に比べややロングでスマートな印象。アッパーはアンティーク加工がなされている。今では当たり前となった着色加工だが、これを始めたのは、グリーンの中興の祖、ジョン・フルスティック氏だとされている。Edward Green

 

 

PICCADILLY(ピカデリー)

クラシックなオックスフォード。スワン・ネックのステッチが施され、ブローギングが施されたパンチドキャップトウが特徴だ。このラストは82で、202に比べややロングでスマートな印象。アッパーはアンティーク加工がなされている。今では当たり前となった着色加工だが、これを始めたのは、グリーンの中興の祖、ジョン・フルスティック氏だとされている。Edward Green

 

 

CAMDEN(カムデン)

シャープなデザインが光るサイドゴア・ブーツ。使われているラストは82で、ジョイントラインからトウの部分にかけて大きくカーブした形状となっており、非常にシャープな印象を与えてくれる。グリーン独自のユタカーフとよばれる素材が使われており、柔軟で足入れがよく、オイルド加工されているためダイナイトソールと相まって雨や雪にも強い。Edward Green

 

 

 

エドワード グリーンの魅力 BEST3

①アッパーの繊細な装飾

 

② コンパクトでエレガントな意匠

 

③ オークバークによるソールの味

エドワード グリーンは特にファッション関係者の間で、ファンが多いといわれる。その魅力は、まず、繊細さである。例えば、アッパーに施されたスキンステッチやアンティーク仕上げは、今ではどの靴ブランドにも見られる意匠だが、グリーンはそれらの先駆けとされる。それから、コンパクトな作りである。必要以上にコバやヒールが張り出しておらず、スマートなシルエットを身上としている。特にヒールカップの小ささは有名で、日本人の小さな足に合うといわれている。加えて、オークバークといわれる底材である。これはオーク(ナラ・カシの仲間)を使って鞣されたソールのことであり、柔らかく耐久性にも富むという。何よりその、しっとりした色がいい。他の英国靴に比べ、一際エレガントなところが、ファッショニスタを惹きつけてやまない理由である。

 

 

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