あなたを若く、スマートに見せてくれる・・・
でも着心地はいい、フレンチ・モードの服。

text  kentaro mastsuo

 

　シトロエンから独立し、ひとつのブランドとなったDS（ディーエス）は、シトロエンと比べ、より高級で、エクスクルーシブな存在を目指している。その戦略は大当たりし、日本市場における売上げは、2016年に30%も伸びたという。その立役者が、今回紹介する同社の主力車種、DS3である。

 

 

　まず目を奪われるのは超個性的なエクステリア・デザインだ。2ドアハッチバックで、強くシェイプされたフォルム、流線型のメタルパーツを配したフロントデザイン、3D風に奥行き感のリアランプ、Bピラー以外をブラックアウトし、ルーフが浮いているように見えるフローティングルーフなど、アクの強い要素を、卓越したセンスでまとめている。

 

　フローティングルーフをよく見ると、ルーフだけでなく、サイドウィンドウのトリム上部まで同色に塗られているから芸が細かい。まるでSF映画に出てくる小型の宇宙船のようである。これはブランド名の由来ともなった1955年に発表された初代DS19にも通じるコンセプトである。

 

 

 

　インテリアもフューチャリスティック、かつラグジュアリーだ。ダッシュボード、トリム、各種ボタン類には、不思議な曲線を描くエクスクルーシブ・パーツが数多く使われており、このクルマが大衆車とは一線を画す存在であることを主張している。

 

　しかし日本車やドイツ車のようにウッドやレザーを模したパネルを多用しているわけではない。あくまでも斬新なデザインとテクスチャーが醸し出すラグジュアリーである。背後から太陽光が入るスリット入りのメーターフードなど、珍しい意匠も多い。

 

 

 

　運転席に座ると、ペダル類が近く、ハンドルが遠い。そこでイスを下げ、背もたれを起したアップライトな姿勢でステアリングを握ることになる。このへんはフランスの小型車らしい。しかしヘッドクリアランスは優秀で、上体を起こした状態でも（筆者は身長180cm）拳ひとつ半以上の空間が確保されている。

 

　デザインはアヴァンギャルドだが、パッケージングは、実によく詰められている。フロントおよびナビシートまわりが広大であることはもちろん、2ドアであるにもかかわらず、リアシートも大人が十分寛げる広さだ。ラゲッジスペースも270ℓと、クラス最高レベルである。DS3の室内はその外側から想像する以上に広々としている。外観の印象と内部空間の落差が激しい。

 

 

 

　走らせてみると、さらにごく真っ当なクルマであることがわかる。1.2ℓ3気筒ターボエンジンは、PSAグループ（プジョー、シトロエン、DSが所属する自動車企業体）が社運をかけたものだけあり、小型軽量にもかかわらず、馬力、トルクとも十分だ。

 

　都市部における使い勝手は最高だ。外見はあれだけ尖っているにもかかわらず、運転席からの見切りはとてもいい。狭い道や車庫入れなどで、苦労することはないだろう。ハンドリングもフランス車らしいキビキビ感があり、レーンチェンジや合流で、遅れをとることはない。ワインディングを攻めてどうか、と問われれば答えに窮するが、多分このクルマで箱根を攻めようという人はいないだろうから、これでいいのだ。

 

　DS3の魅力、それはアヴァンギャルドな内外装のデザインにある。しかし、それ以上に魅力的なのは、これに乗っている人を、少し特別な存在にみせてくれるところだろう。DS3に乗る人は、決してさえないサラリーマンだとは思われない（実はさえないサラリーマンだったとしても）。きっと売れっ子クリエイターやアーティストだと思われること請け合いだ。

 

　しかし実際に乗ってみると、実に真っ当な小型車なのだ。DS3は、よくできたフレンチ・モードの洋服に似ている。あなたを若々しく、スマートに見せてくれるが、シャープな見た目と裏腹に、その着心地はとてもいいのだ。

 

 

アヴァンギャルドな内外装と、ごく真っ当な走行性能を併せ持つDSのベストセラーモデル。日本車ともドイツ車とも一線を画する、フランス流のシックを堪能したい。全長×全高×全幅：3965×1715×1455mm、車両重量：1170kg、エンジン：直列３気筒DOHC 1199cc、最高出力：110ps/5500rpm、最大トルク：205Nm/1500rpm、燃費：19.8km/ℓ（JC08モード） ￥2,537,037 DS

 

DS ブランドサイト

www.dsautomobiles.jp/index.html