'I HAVE A FIGHT WITH LIAM NEESON…KNEEING HIM IN THE NUTS. IT WAS A GREAT EXPERIENCE'

俳優コナー・マクニール、人生で最高の瞬間

March 2024

アイルランド人の俳優コナー・マクニールは、ドラマ『インダストリー』や『ザ・ツーリスト 俺は誰だ?』に出演し、ここ数年大きな注目を集めている。THE RAKEは、そんな彼にインタビューを試みた。彼が体験した、撮影人生最高の瞬間とは?

 

 

by charlie thomas 

photography robin hunter blake 

styling tom o’dell

 

 

 

 

 ロンドン北部のイズリントンにあるアルメイダ劇場でコナー・マクニールに会った。彼はマリーナ・カーの脚本による舞台『ポーシャ・コフラン』に出演していた。作品のテーマは、死、強迫観念、自己破壊である。「呪術的」、「めちゃくちゃ」、「荒涼とした」、「不穏な」というのが、何人かの批評家がこの作品を表現するのに使った言葉だ。ヘビーな内容だが、楽屋で話をするマクニールは温厚でにこやかだった。それには理由がある。

 

 北アイルランド出身のこの俳優は、ここ数年、超売れっ子なのだ。舞台、TVドラマ、映画に立て続けに出演し、リーアム・ニーソン、ジェイミー・ドーナン、ティモシー・スポールらと共演を果たした。

 

 複雑なキャラクターやダークな題材を扱うことは、彼にとって初めての挑戦ではない。2023年は若い教会関係者が無力な被害者ふたりを毒殺する実録ドラマ『The Sixth Commandment』に出演した。

 

 2020年からのドラマ『インダストリー』では職権乱用で女性嫌いの副社長ケニー役を演じ、同僚をこき下ろした。同番組でのケニーの振る舞いは、実際の路上で人々から怒鳴られるほどで、多くネット・コミュニティでも話題になっている。近々公開される『ザ・ツーリスト 俺は誰だ?』シーズン2での役柄も、それに劣らず難しい。

 

 

 

 

 それらの仕事の後、アルメイダ劇場での6週間の公演に入った。彼は超多忙な年末を過ごすことになった。

 

 マクニールは、もともと俳優になりたかったわけではない。

 

「本当はレコード会社のA&R(アーティストの発掘とプロデュースをする仕事)になりたかったんだ。世界中を旅してバンドを立ち上げるなんて、最高にクールなことだと思っていた」

 

 14歳で劇団に参加し、毎年夏になるとその劇団に戻っていた。だんだんと重要な役を演じるようになり、いつの間にか有名なプロジェクトに多く参加するようになっていた。

 

「『レクイエム』(2009年)という映画に出演した。そのままルパート・グリントの映画に出て、さらにジム・スタージェスとベン・キングズレーの映画にも参加した。それで、演劇学校へは行かず、23歳のときにロンドンに出て来て、そのまま留まったんだ」。

 

 次の作品はリーアム・ニーソン主演のアクション映画で、マクニールが身長193cmのニーソンに膝蹴りを食らわせるのだという。俳優としての心の持ち方を聞いてみよう。

 

 

 

 

 

―役柄に没頭しているとき、ひとつの役から次の役へ、どうやって気持ちを切り替えるのですか?

「僕の役は、『Sixth Commandment』のように非常に重い題材のものが多い。そのあと出演した、『ツーリスト 俺は誰だ?』のテーマもヘビーだった。自分を燃やし尽くしてしまったようだった。それから2週間休んで、アルメイダでのショーを始めたんだ。休養を取るのは本当に大切なことだ。友達と会ったり、この業界と関係ないことをしたり。スイッチをオフにしないとね。僕はそれが苦手なんだけど、うまくできるように学んでいるところだよ」

 

―どうやってスイッチを切るのですか?

「変わった奴だと思われると心外なんだけど、実は毎日瞑想をしているよ。ジムにもよく行く。運動するのが大好きなんだ。それから、仲間や子供連れの友人に会うのも好きだね。田舎や海にもよく行く。海を愛している。『ザ・ツーリスト 俺は誰だ?』の撮影では、ダブリンの海から数分のところに滞在していた。海に飛び込むと、一週間が変わるんだ」

 

―そのようなダークで複雑なキャラクターに惹かれるのはなぜですか?

「若い頃は本当にそういう役柄に惹かれた。なぜなら自分の能力を確かめることができるから。演技を深く掘り下げる必要がある。ケニーのようなキャラクターは、ダークというよりは複雑なんだ。ひどい人間だが、同時になぜそんなことをするんだという疑問が生まれる。脚本ではそれを掘り下げている。だから面白いんだ。僕は本当に人間が好きで、ごく普通の人がどうやって危機的な状況に陥っていくのかに興味があるんだ。なぜ自分がそういうことに惹かれるのか、それはわからない。でも、僕が演じてきたどのキャラクターも、どこかにそういう人間らしさを持っていて、それがとても魅力的なんだ」

 

―BBCのドラマ『ザ・ツーリスト 俺は誰だ?』について話してもらえますか?

「僕が演じるのは、ルアイリ・スレーターという役だ。彼はアイルランド警視庁の刑事なんだ。ジェイミー・ドーナンが演じる主人公は、シーズン1から自分が何者なのかを思い出そうとしている。彼はヘレン役のダニエル・マクドナルドと一緒にいる。僕は彼らの話に巻き込まれ、想定外の場所に引きずり込まれてしまう。僕の演じるキャラクターはちょっと不器用なバカで、堅物で、面倒なことになると見て見ぬふりをする。彼は警官としてのシンプルな考え方が好きなんだ。しかし実は彼は、私生活に大きな秘密を抱えていて、その秘密は彼や彼の周りの人々の人生を狂わせていってしまうんだ」

 

―あなたに最も大きな影響を与えた人物は誰ですか?

「ジュリー・ハーキンというキャスティング・ディレクターがいる。彼女はプロフィールや名前、その他もろもろに関係なく、その役にふさわしい俳優を見抜くことができる人だ。彼女は僕を『インダストリー』や『Sixth Commandment』に抜擢してくれた。それらは僕がこれまで一度もやったことのないタイプの役だった。彼女は僕のキャリアに計り知れない影響を与えてくれたし、人間的にも素晴らしい人だ」

 

「両親が僕のすることを応援してくれたのも大きかった。僕はベルファスト西部の労働者階級の出身なんだ。父は僕が学位を取ることをずっと夢見ていたんだと思う。しかし僕が『リスクを犯してでも俳優を目指す』と言ったとき、多くの親よりもずっと冷静で本当に協力的だった」

 

 

 

 

―人生で得た最大の教訓は何ですか?

「『仕事をしろ。いい人になれ。嫌な奴になるな』ということ。ある人に言われたことがあるんだ。『仕事は真剣にやれ、でも自分は真剣になるな』ってね。僕はそれを少し実践している。仕事はもちろん真面目にやるけど、ここで誰かの命を救っているわけじゃないからね」

 

―世界一だと思う都市は?

「僕としては故郷のベルファストを1番に挙げなければならない。でも最近、バレンシアに行ったら、想像以上によかった。だからベルファストが1番で、次がバレンシアだね」

 

―ロンドンで好きなレストランは?

「たぶんTrullo(イズリントン)かな。ここのカチョ・エ・ペペは最高だ。とてもシンプルな料理だけど、大好きなんだ。食べたいものをいつも的確に提供してくれる」

 

―ベスト・パブやバーは?

「ストーク・ニューイントンのThe Auld Shillelagh。ギネスが本当においしいんだ」

 

―今年(2023年)公開された映画で、誰もが見るべき作品は?

「ロンドン映画祭でサザーランド賞を受賞した『パラダイス・イズ・バーニング』を観たばかりだ。本当に特別で、エキサイティングな作品だと思った」

 

―最近お気に入りのアーティストは?

「イェ・バガボンズというアイルランドのフォークバンド。先週ハックニーでライブを見たんだ」

 

―最後に、2024年に最も楽しみにしていることは何ですか?

「いくつかのプロジェクトで脚本を書いていて、それが軌道に乗ればいいなと思っている。ジェイミー・ドーナンと共同執筆したプロジェクトがあるんだ。2024年に公開される『In the Land of Saints and Sinners』という映画で、リーアム・ニーソン主演のアクション映画なんだ。リーアムとの戦いは、武器を使ったものから素手での殴り合いまで、目にも止まらない速さだよ。彼のスタントチームと一緒に、何週間もトレーニングをしたんだ。身長差もあるし……彼はすごく大きい。ドネガルでの金曜の夜、バーでリーアムに向かって銃を撃ち、体当たりして彼の股間に膝蹴りを食らわせたんだ。正直に言えば、あれは僕の撮影人生で最高の瞬間だったね」