Chef’s Table by Katsuhito Inoue: Kyoto’s Elevated Culinary Experience

京都鴨川沿いの美食空間、井上勝人氏のシェフズ・テーブルがリオープン

December 2024

「ザ・リッツ・カールトン京都」に、井上勝人シェフが手がける特別なシェフズ・テーブルが新たな姿で登場。京都とその周辺の四季を映し出す料理と卓越した技が織りなす、至高の美食体験とは。

 

 

text yukina tokida

 

 

 

 

京都の旬と伝統を味わう

 

 鴨川の静かな流れを見下ろす「ザ・リッツ・カールトン京都」にあるダイニング「シェフズ・テーブル by Katsuhito Inoue」が、約2年の準備期間を経て、新たな装いで再始動した。

 

 生まれ変わった内装のテーマは「伝統と継承」。最大8名が着席可能な天然花崗岩のロングテーブルを中心に、卓上にはホテル専属の庭師・鈴木浩樹氏による草花や苔が配され、壁面には重厚感のある石材や木材が用いられるなど、京都らしい静謐な美しさと、自然が調和した空間だ。

 

 この空間のメインステージともいえるキッチンには、手元にスポットライトが当たるよう緻密に計算された照明が配され、その芸術的な手さばきや調理工程、香りや音は我々の食欲、想像力を掻き立て、口に運ぶまでの時間を最高潮まで盛り上げてくれる。

 

 

これまでとは異なり、靴のままディナーを楽しめる空間に。卓上にはシェフ自ら鴨川で見つけてきた石を再利用した箸置きが並び、その時期だけの京都らしさと季節の移り変わりを五感で感じさせてくれる。

 

 

 

七十二候と始末の心

 

 料理の軸となるのは、四季折々の移ろいを表現する「七十二候」と、京都に古くから伝わる「始末の心」。井上勝人シェフがゲストの目の前で作り上げる、京都とその周辺の食材をふんだんに使用した料理は、どれもシェフの集大成ともいうべきものばかり。食材を余すことなく使い切り、多彩な調理法で仕上げたコースを堪能できる。およそ13〜16品で構成されるが、いずれもポーションは小さめであり、リクエストに応じて量も調整してくれるためご安心を。

 

 ⾼級和⽜の⼩売店を営む祖⽗と、⼀流のステーキハウスを経営する⽗を持ち、ヨーロッパ有数のレストランで腕を磨いた井上シェフが京都に来たのは、およそ5年前のこと。それまでの彼の人生と、京都での5年間で彼が培った哲学やスタイルをギュッと凝縮させた約3時間は、幾度の感動や発見と巡り合わせてくれるだろう。

 

 

右から三番目が井上勝人シェフ。

 

 

 

10月、とある日のメニュー例

 

 今回は、リニューアルオープンしたばかりの10月に体験させていただいた内容の一部をご紹介したい。メニューは季節毎に異なるため、参考程度にご覧いただければと思う。

 

 この日は淡路の天然の車海老や渡り蟹、明石のサワラや鯛、岐阜の中津川のキャビア、さらには琵琶湖の鮎、富士山麓で採れた天然キノコなど、シェフのお眼鏡に叶った厳選食材が揃えられていた。ドリンクのペアリングに関しては、その時々のベストなものを合わせてくれる。

 

 取材時の七⼗⼆候は、第四十九候「鴻雁来 (こうがんきたる)」だった。一品目に登場した「ウニ 海藻メレンゲのメレンゲ 昆布締めリコッタ」は、10年熟成のみりんで仕上げたほろほろのメレンゲと昆布締めした自家製のフレッシュチーズに、濃厚なウニを合わせた一皿。磯の香りと旨味が溶け合う至福の味わいだった。

 

 4品目に登場したのは、「明石鯛の恵み 一口の純粋と深み」。握り寿司のように見えるこちらは、実はサラダのような一品。昆布と蒸留醤油で漬けた明石鯛の下に、伊根満開と梅のインフュージョンで漬けた梨を角切りにしたものと、京都の青レモンと合わせたすりおろした梨が隠れている。いずれも京都産の梨。多層的な甘味や旨味、さらには異なる食感に加え、添えられた安曇野山葵のスッキリ感も心地よい。

 

 

1品目の「ウニ 海藻メレンゲのメレンゲ 昆布締めリコッタ」。

 

 

4品目の「明石鯛の恵み 一口の純粋と深み」。

 

 

10品目の、自家製パスタを使った「冷製赤万願寺麺 淡路渡り蟹」。

 

 

 

 10品目の「冷製赤万願寺麺 淡路渡り蟹」は、赤鷹峯唐辛子を練り込んだ自家製パスタを使ったもの。炭火で焼いた渡り蟹の殻でとった出汁を使ったソースを絡め、上にはカニ身と昆布にトマトと出汁を加えた泡を添えて。非常に滑らかでクリーミーさを感じさせるソースなのに、動物性の油脂は一切使用していないという、驚きに溢れた一皿だった。

 

 その後魚料理と肉料理が続き、13品目に提供されたのは「天然茸のおじや」。富士山の天然キノコをたっぷり使い、今朝とったばかりの出汁でいのちの壱の新米を炊いたおじやは、旨みが凝縮されていながらも優しい味わい。

 

 デザートは全3品が供され、そのうちのひとつは、イチジクを使ったいちじくのデザート3種だった。城陽イチジクの葉を煮出して作ったシロップで真空にしたコンポートと、じっくりと炭火で焼いたイチジクをのせたミニタルト、そしてイチジクの葉のオイルを垂らした、イチジク葉でインフュージョンして香りをつけたジャージーミルクのジェラートと、旬のいちじくのおいしさを余すことなく味わわせてもらった。

 

 

左:大きな土鍋で炊き上げられた「天然茸のおじや」。右:イチジクを、そのまま、焼き、コンポート、ジェラートやオイルといった異なる方法で堪能できるデザート3種。

 

 

 

 日本の豊かな旬と、京都の魅力をとことん味わい尽くすことのできる、ここにしかない美食の舞台。訪れるたびに新たな感動をもたらし、進化し続ける井上シェフの料理哲学を堪能できる、他にはない空間だ。

 

 

 

シェフズ・テーブル by Katsuhito Inoue

京都府京都市中京区鴨川⼆条⼤橋畔 ザ・リッツ・カールトン京都1階

営業時間:18:00〜(⼀⻫スタート)

定休⽇:⽇曜⽇・⽉曜⽇

コース料⾦:1名35,000円(サービス料・税込)

https://chefstable.ritzcarltonkyoto.com/

Email: rc.kyoto.restaurant.reservation@ritzcarlton.com

not found