BRITISH GRAND PRIX

英国人ドライバーとブリティッシュ・グランプリ

August 2022

2022年7月3日、F1ブリティッシュ・グランプリが開催された。

シルバーストーンは長年にわたり、ルイス・ハミルトンを筆頭に、英国人ドライバーにとって幸せなハンティングの場となっていたが……。

 

 

 

by FREDDIE ANDERSON

 

 

 

 

ロータス創業者コーリン・チャップマンと英国人レーシングドライバー、グラハム・ヒル(1967年、シルバーストーン・サーキットにて)。

 

 

 

 ロイヤル・オートモービル・クラブ(RAC)は、自動車関連の組織としては英国最古、世界でも二番目に長い歴史を誇る。そのクラブハウスは、1911年以来、ジェントルメンズ・クラブが集中しているロンドンのセント・ジェームズにある大通りパル・マルの中央に居を構えており、ブリティッシュ・グランプリ・トロフィーを含む、英国自動車史の歴史を物語る数々のトロフィーを展示している。

 

 RACは、1926年にサリー州ブルックランズで初のブリティッシュ・グランプリを開催した。フランス人のロベール・セネシャルとルイ・ワグネが共同優勝を飾った。1948年には場所をシルバーストーンに移し、毎年開催されるようになり、1950年からはFIA世界選手権の公式戦として行われるようになった。F1近代化の幕開けとなったこの年のレースは、アルゼンチンのファン・マヌエル・ファンジオと英国のスターリング・モスによる壮絶な戦いが伝説となっている。

 

 1955年に開催されたリバプールのエイントリーサーキットのレースでは、ファンジオが地元の観客の前でモスを勝たせたかのように見えた。後にモスがファンジオに「私に追い抜かせてくれたのか?」と尋ねると、ファンジオは「いや、あの日は君の方が速かっただけさ」と答えた。

 

 

Argentine auto racing champion Juan Manuel Fangio.

 

Austria’s Jochen Rindt pours a glass of champagne for his wife Nina at the British Grand Prix at Brands Hatch, 1970.

 

 

 

 1960年代を席巻したのはジム・クラークだった。彼はコックピット以外では、いつもRenauld Sixty-Oneのサングラスをかけていた。1967年のシルバーストーンでの勝利は、彼のスリリングなスピードを証明するものだった。

 

 1970年代になると、あまりにも有名なふたりのライバル、ニキ・ラウダとジェームス・ハントが火花を散らした。ラウダは1976年のブランズハッチ・サーキットで優勝し、ハントは翌年のシルバーストーンでマクラーレンのために勝利を収めた。

 

 1980年代後半から1990年代前半にかけては、ブラジルの天才アイルトン・セナの活躍が目立ったが、ブリティッシュ・グランプリにおいては、英国人ドライバーのナイジェル・マンセルが計4回優勝している。

 

 

Sir Jackie Stewart.

 

Left: Earl Louis Mountbatten (Louis, 1st Earl Mountbatten of Burma) and Prince Charles watching the RAC Grand Prix at Brands Hatch/Right: Niki Lauda celebrating in London his return to motor racing after a near fatal crash at the Nurburgring in 1976.

 

 

 

 その後、2000年代にかけては、英国出身のデイモン・ヒル、ジョニー・ハーバート、デビッド・クルサードが母国での勝利を取り戻しているが、最も際立っているのはやはりルイス・ハミルトンだ。シルバーストーンで計8回優勝し、表彰台の記録を打ち破っている。2021年のハミルトンのシルバーストーンでのレースは、歴史に残るものとなった。1周目にタイトル争いのライバルであるマックス・フェルスタッペンと接触し、10秒加算のペナルティを受けたにもかかわらず、終盤にトップを行くシャルル・ルクレールを抜き去ったのだ。

 

 マシンのレギュレーションが抜本的に見直された2022年シーズンは、モータースポーツの新たな章を開くものである。ハミルトン、そしてメルセデス・チームは、新しいマシンの挙動をコントロールするのに苦労しているようだ。ハミルトンは、8度のワールド・チャンピオンとしては不本意な順位に低迷している。彼がモータースポーツの母国である英国で記録的な9勝目をあげることは、難しいと言わざるを得ない。

 

 

 

Hamilton, aged 10, racing in the British Junior Go Kart championship,1995.

 

 

(※編集部注:2022年7月3日に行われたブリティッシュ・グランプリで、ルイス・ハミルトンは3位という結果だった)