BRINGING IT HOME

ハケットの“サヴィル・ロウ”を体験する

August 2020

text tom chamberlin photography kim lang

フレスコⅢのセレクション。メジャーメントの風景。最初のフィッティングを行っているところ。

 THE RAKEは長年ハケットとコラボしてきた。ハケットとのミーティングでは、いつも“ツイスト”と呼ばれるものに重点が置かれていた。他とは違い、機知に富んでいるということだ。それは、スーツを着て手漕ぎボートを操る男性といった広告や、黒いネクタイを締め、足元にビーチサンダルを履いている男性の写真が載っているジェレミーの著書『Mr. Classic』などに表れている。

 このツイストという考え方を伝統的なビスポークの世界に、どのように生かすことができるか? テーラーリングに応用することが可能なのか?

ハケットが選んだヘッドカッター
 答えはヘッドカッターにある。カッターは、着用者の物理的な属性を理解し、2次元の布を構築するだけでなく、クライアントの心理的な欲求をも理解する必要がある。ハケットがヘッドカッターに選んだのはファン・カルロス・ベニートだ。彼はマッチョで背が高く、仕立て屋としての能力は最高で、J.P.ハケットのビスポーク部門に、早くも名声をもたらしている。忘れてほしくないのは、サヴィル・ロウの老舗の中では、ここは新しい店であるということだ。口コミやセレブの応援は期待できない。J.P.ハケットにおけるファン・カルロスの魅力とは何だろう。

 まずはそのルックスだ。彼に会ったときに着ていたグレイのスリーピース・スーツは、素晴らしくグッドルッキングだった。側面はエレガントで、脇の下から裾まで、美しいシェイプを描いていた。それは彼の身長を、さらに強調していた。

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