BOLLINGER R.D.2007
至高のシャンパーニュは“澱抜き”が違う
May 2021
名門シャンパーニュメゾン、ボランジェの最上級ミレジメR.D.。
画期的な澱抜きの製法は、この偉大なヴィンテージに何をもたらしたのか。
text yoshimi hasegawa
ボランジェ R.D.(アール・ディー)2007
14のグランクリュとプルミエクリュで構成されている自社畑からピノ・ノワール70%、シャルドネ30%をブレンド。エクストラブリュット(ドザージュ)。出荷直前にデゴルジュマンを行う独自製法によりヴィンテージの熟成感、芳醇なアロマ、フレッシュ感と複雑な要素を持つボランジェ渾身の一本。一番搾りのみを使用、すべて罇発酵で造られる。¥51,700 Arcane(アルカン TEL.03-3664-6591)
名門シャンパーニュメゾンには個々の卓越性を表現するプレスティージシャンパーニュが存在する。
創業1829年の老舗メゾン、ボランジェは、ヴィンテージのシャンパーニュに“R.D.”(Récemment Dégorgé“レサマン・デゴルジェ”)の名を与えることにより、自らの卓越性を証明した。“R.D.”とは「最近、デゴルジュマン(澱抜き)された」ボトルを意味する。
シャンパーニュは瓶内二次発酵製法を行う。通常は瓶内の熟成時に金属製の王冠を用いるのに対し、ボランジェは天然コルク栓を用い、AOC(原産地呼称制度)規定の4倍以上の時間をかけ、長期熟成させる。発酵後に酵母が結晶化したアミノ酸を含む澱を、出荷前に取り除く作業がデゴルジュマンだ。
創業以来の伝統製法と14のクリュがボランジェを造り上げる。中央が副醸造長のドニ・ブネア氏。
R.D.のストーリーは1967年まで遡る。マダム・ボランジェはデゴルジュマンしたばかりの1952年のヴィンテージをエクストラブリュットとして販売。これは当時、革新的な挑戦であった。このことを記念し、ボランジェのプレスティージには“R.D.”の名を冠している。
近年、シャンパーニュの世界ではオールドヴィンテージが流行りだが、同社こそ、その先駆者といえるだろう。
副醸造長のドニ・ブネア氏はR.D.の製法と味わいについてこう語る。
「創業以来の伝統製法を守り、通常は機械で行う澱抜き作業をデゴルジュマン担当の7人の職人が行っています。手作業では1時間に300本程度しかできないので、機械の10倍時間がかかります。それでも職人が行う理由は、機械ではできない工程だからです。コルク栓のボトルでの熟成はボランジェにとって必要不可欠です。機械ではコルクを留めている口金を外すことができません。さらに重要なのは脱栓時にコルクの匂いを嗅ぐことで、コルクの汚染といったあらゆる不備を発見することができるのです」
1960年代、マダム・ボランジェはR.D.としてメゾンのヴィジョンを製品化。
長期熟成後の出荷直前の澱抜きによるフルーティーさがR.D.の特徴のひとつだが、購入後はすぐに飲むべきなのだろうか?
「R.D.2007が持つ躍動感とクリーンな味わいは、セラーで12年間熟成されたキュヴェとしては傑出しています。蜂蜜のような香ばしいアロマの後に、サフランのようなスパイスのノート、さらにヘーゼルナッツのような重厚さへと変化します。今も非常に大きなエネルギーを感じます。デゴルジュマン後、1年はフレッシュな味わいを楽しめますが、これはこの先20年以上の熟成にも耐えうるという証です」
繊細な味わいを楽しむも良し。セラーで数年間熟成させ、さらに濃密で奥深い世界を堪能することも可能だ。
R.D.のリドリングとデゴルジュマンはすべて熟練の職人の手によって行われている。
2007年のラベルは1952年のラベルを素材からフォントに至るまで忠実に再現している。ラベルにはデゴルジュマンの日付も記載されている。
本記事は2021年5月25日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue40