ELECTRIC MONSTER
BMW iX xDrive 50:電気仕掛けのモンスター
October 2022
BMWが世界的に売れまくっている。注目すべきは電気自動車(EV)の躍進だ。
10年後には、BMWの造るクルマの半分以上がEVになるという。
そのフラッグシップiXに試乗し、クルマの未来を考えてみた。
BMW iX xDrive 50
圧倒的な存在感を示すBMW製エレクトリック・ヴィークルのフラッグシップ。大型SUVらしい押し出しの強さと、未来的な要素を併せ持つ素晴らしいデザインだ。全長×全幅×全高:4,955×1,965×1,695mm/車両重量:2,530kg/駆動方式:4輪駆動/電気モーター:交流同期電動機/システム・トータル最高出力:385kW(523ps)/0-100km / h加速:4.6秒/一充電走行距離WLTCモード:650km
BMWが好調である。2022年1〜3月の純利益は約1兆4015億円で、前年比3.6倍を達成した。目立つのはEVの躍進だ。期間中の販売台数は3万5289台で149.2%増となっている。10年もしないうちに、BMWで販売されるクルマの半分がEVになるという。その旗艦がiXだ。日本では昨年末に販売開始され大好評である。人気の理由はこのクルマが現代における高級車の代名詞=大型SUVであるということ。全長は5m、車幅は2mに迫る堂々たる体躯を持つ。ボディは直線を基調とした骨太のラインで構成されており、トレードマークのキドニーグリルもひと際大きなものが取り付けられている。
転じてインテリアは未来的。ダッシュボードには横長のスクリーンが備わり、それ以外にはあまり目立ったスイッチがない。数え切れないほどの機能が詰め込まれているがすべて直感的に使える。これはタッチ式ディスプレイの恩恵である。BMW初のヘキサゴナル(六角形)ステアリング・ホイールは最初は戸惑うが、慣れてくると回しやすい。
シートとダッシュボードにはいかにも上質そうなレザーが張られている。これはオリーブの葉の抽出液でなめされたものだそうだ。
12.3インチのメーター・ディスプレイと14.9インチのタッチディスプレイを繋いだ大型の横長ディスプレイが備わる。
特筆すべきはカーオーディオだ。英国の高級ブランド「BOWERS & WILKINS」によってチューニングされたシステムには、出力1615Wのアンプと30ものスピーカーが奢られている。シート内には直接身体にバイブレーションを伝える4Dスピーカーが仕込まれており、文字通り「腹に響く」重低音を感じられる。
走りのほうも強烈だ。試乗したのはxDrive50というグレードで、前後ふたつのモーターで四つの車輪に動力を伝える。回転数に伴って出力が上がるエンジンと比べ、電気モーターはいきなり最大トルクに達するのでのけぞるような加速が得られる。2.5tの車体はまるで投石器で打ち出される岩のように吹っ飛ぶ。
ステアリングのスイッチを1回操作するだけで自動運転がオンになり、レーン・キーピレグ・アシストや自動追尾が可能となる。前述のキドニーグリルのなかにはレーダーやセンサーが仕込まれており、ウインカーを出すだけでレーンチェンジもスムースにやってのける。当たり前だがエンジン音は皆無で車内はとても静かだ。「アイコニック・サウンド・エレクトリック」と呼ばれる疑似エンジン音を流すことも可能で、こちらは「ドヒューン」などとガンダムっぽい音がする。
心配なのは走行距離だろうがxDrive 50の場合、最大650kmというから実用上まず問題はないだろう。新しいものにチャレンジしたい。ラグジュアリーな雰囲気に浸りたい。ステイタスとなる一台を持ちたい。そして何よりも毎日をヴィヴィッドに過ごしたい。そんな欲求を持つ富裕層に、BMW iXはぴったりのクルマだ。
急速充電を使えば10分で約95kmの走行距離を得られる。
狭い道での取り回しも後輪操舵によって楽々。駐車時は外部カメラを使ってクルマを外から見ているような映像を映し出してくれる(自動駐車も可能)。