BACK IN BLACK

ブラックに帰ろう

June 2020

黒ずくめの男たちが強盗を繰り広げる、タランティーノ監督デビュー作『レザボア・ドッグス』(1992年)

 

 

 

 多くのブラックアイテムをワードローブに加えてきたニューヨークの服飾評論家アラン・フラッサー氏は、こう語る。

 

「カシミアのジャケットはグレイフランネルのトラウザーズやジーンズと組み合わせると可能性が広がります。しかし、ブラックを顔のそばに持ってくるときは気をつけてください。ブラウンヘアやグレイヘアで色白の方の場合、目線を奪うだけでなく肌の自然な色を弱めてしまいます。逆に髪と肌色にコントラストがある場合、ブラックは肌の色を引き立ててくます」

 

 “クール”を気取ったジャズマンのように、頭からつま先までブラックずくめにすることはヒップでモダンで個性的なスタイルとなったが、一方でトラディショナルなスタイルの達人たちはブラックを控えてきたとフラッサー氏は語る。

 

「フレッド・アステアやウィンザー公、ジャンニ・アニェッリ、ケーリー・グラントらは、スポーツウェアとフォーマル以外にブラックを身に着けませんでしたし、アイビーリーグのファッションではチャコールグレイで代替する傾向がありました」

 

 

左:ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』(1984年)でフォーマルスタイルに身を包むロバート・デ・ニーロ/右:『8 1/2』(1963年)のマルチェロ・マストロヤンニ。ブラックのシングルブレステッドスーツを美しく着る。

 

 

 しかし、ラルフ・ローレン氏は全身ブラックの格好が大好きだった。バルバネーラの創立者セルジオ・グアルディは、ローレン氏の嗜好に強く共感する。

 

「ブラックはホワイト同様に純粋ですが個性的。自信を持って着こなさなければならない色です。私はインフォーマルなオケージョンや日中であっても、ブラックのビスポークスーツを合わせます。カジュアルでもブラックのコーディネイトはエレガント。鮮やかな色のカシミアのセーターやスカーフよりも上品だと思います」

 

 光がないと闇もまたないように、彼はブラックこそがデイタイムの装いに重要なコントラストをもたらすと考えている。

 

「少し影があるくらいがいいのです。その方がロマンチックですから」

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