AVAILABLE TO BUY: HAMILTON KHAKI FIELD MECHANICAL BRONZE

ハミルトンの名作“カーキ”に
フィールド メカニカル ブロンズ登場!

June 2021

ハミルトンは、新しく“カーキ フィールド メカニカルブロンズ”をリリースした。フィールド・ウォッチとは何かを探り、この注目の時計の詳細をリポートする。

 

 

by felix scholz

 

 

 

 

 時計ファンは、自分では決してしないような目的のために作られた時計をも愛してしまう。例えば、誰も行けない水深を征服するために作られたダイバーズ・ウォッチや、コンマ数秒のラップタイムを計るためのクロノグラフなどだ。

 

 普段は着る機会が少ないタキシードに合わせるドレスウォッチなど、専門的でニッチなものでさえ惹かれてしまう。しかし、私たちの生活の多くを占める“日常”には、それ以上の喜びがある。毎日の平凡な生活は、心に安定をもたらす。そのような生活には、実績と信頼性のある日常的なパートナーとしての時計が欠かせない。

 

 

Hamilton Khaki Field Mechanical Bronze
Hamilton Khaki Field Mechanical Bronze

$ 825

 

 

 

 “フィールド・ウォッチ”と呼ばれるジャンルの時計は、まさにそこに当てはまる。堅牢で機能的なフィールド・ウォッチには、スポーツ・ウォッチのような多くの機能はないが、もともとその必要性はないのだ。

 

 フィールド・ウォッチは1世紀以上前から何らかの形で存在しており、想像し得る限りの過酷な環境下でその実力を発揮してきた。多くのブランドが独自のフィールド・ウォッチを開発してきたが、その中でも一際輝いていたのがハミルトンであった。

 

 ここで、ハミルトンの最新作「カーキ フィールド メカニカル 38mm」を紹介する前に、フィールド・ウォッチの誕生秘話を見てみよう。

 

 

ハミルトン カーキ フィールド メカニカル 38mmコレクションは、1960年代のミリタリーウォッチの流れを汲みながらも、現代的なアレンジを加えている。Image: Revolution

 

 

 

<腕時計普及の理由>

 

 “ナポリの女王が注文した時計”とか、“ブラジルの飛行士のために作られた時計”など、“最初の腕時計は何か”という問いの答えには諸説ある。しかし、これらのモデルは“時計をベストのポケットから腕に移す”という行為にはほとんど影響を与えなかった。変化を劇的にもたらしたのは、戦争だった。

 

 第一次世界大戦をはじめとする近代戦争では正確で頑丈な腕時計こそ文字通りの“命綱”となったが、そのスタイルは、それだけでは終わらなかった。腕につける時計の有用性が証明され、何千人もの退役軍人が腕時計を身につけて帰還したことで、腕時計の時代が本格的に始まったのだ。彼らが愛用していたミリタリー・フィールド・ウォッチは、視認性、信頼性、耐久性に優れていた。

 

 これらの特性は、軍隊のためだけに有効なものではないことが、すぐに明らかになった。アウトドアズ・マン、探検家、バックヤード・アドベンチャーたちが、この丈夫な時計の魅力に取り憑かれたのだ。

 

 そしてやがてフィールド・ウォッチは一般市民の間でも人気を博した。時計ブランドもこの点に注目し、多くがこの実用的なタイムピースの独自モデルを製造し始めた。

 

 

1942年、ハミルトンは一般消費者向けの生産をすべて中止し、戦時中、100万個以上の時計を軍に納入した。

 

 

 

<ランカスターから世界へ>

 

 フィールド・ウォッチといえば、ハミルトンの名が大きくクローズアップされる。1892年、アメリカの時計製造の中心地であるペンシルバニア州ランカスターに設立されたハミルトンは、第二次世界大戦中にも重要な役割を果たした。

 

 1942年、ハミルトンは消費者向けの生産をすべて中止し、軍隊のニーズに集中することにした。そしてその役割を見事に果たし、戦時中に100万本以上の時計を軍に納品した。戦時中の厳しい環境下での生産は、新しい潤滑油や、ヘアスプリングに使用する独自の合金“エリンバー・エクストラ”の開発など、メーカーに革新をもたらした。

 

 特に重要だったのは、1万個を超えるマリンクロノメーターの製造だった。ジンバルに取り付けられた高級懐中時計のメカニズムは、主に海軍の航海に使用された。無線信号が傍受され得る敵対的な環境では、自律航法が唯一の選択肢だった。そのためには正確なクロノメーターが必要であり、ハミルトンが驚異的な精度のクロノメーターを大量に生産できたことは、アメリカに大きな戦果をもたらした。

 

 レイテ沖海戦でマーク・ミッチャー副提督の参謀を務めたアーレイ・バーク提督はこう記している。「レイテ湾で戦った第3艦隊と第7艦隊の艦船は、海・空軍の作戦を成功させるために必要な正確な時間を、ハミルトン社のマリンクロノメーターに絶対的に依存していた」。この史上最大級の海戦におけるアメリカの勝利は、第二次世界大戦の終結のきっかけとなった。

 

 

 

戦果への貢献によって、ハミルトンは1943年から1945年までの間に、5回にわたり陸海軍の“E”賞を受賞している。

 

 

 

 1943年から1945年の間に、戦争への貢献が高く評価され、ハミルトンは陸海軍“E”賞を5回も受賞した。この賞は、第二次大戦中、他に類を見ない優れた生産を成し遂げた企業に贈られるものであった。戦争に貢献した85,000社のうち、この賞を受賞したのはわずか5%にも満たない。

 

 とはいえハミルトンの生産する軍用時計には、あまり専門的でないものも含まれていた。例えば、アメリカ陸軍武器科に納入された腕時計だ。多くの軍用時計と同様にハミルトンのキャリバー987を搭載しており、ブラックダイアル、ルミナスアワーマーカー、頑丈なケースなど、まさにフィールド・ウォッチにふさわしい仕様であった。

 

 

 

<フィールドからジャングルへ>

 

 最新作「カーキ フィールド メカニカル38mm」の原型となったのは、先述とは異なる戦争で使用された別の時計だ。1964年に制定されたMIL-W-46374と呼ばれるスペックに沿って作られたモデルである。そこには、経済的で大量生産される軍用時計のスペックが記載されていた。現代のフィールド・ウォッチを体系化し、標準化したものだ。

 

 この時計が軍需品として大量に支給されるようになったのは、それから間もなくのことだった。ベトナム戦争に突入したアメリカ軍のために、1965年から1969年までに50万個以上が供給された。

 

 

Hamilton’s Grade II Military Wristwatch 1944

1966年に発売されたハミルトンのミリタリーウォッチ。

 

 

 

 ハミルトンがアメリカ兵のために製作したこのタイムピースは、33mmの時刻表示のみの時計で、視認性に優れた文字盤レイアウトと、特徴的な24時間のインナースケールを備えていた。シンプルで実用的なこの時計は、その前の世代が身につけていたハミルトン製品と同様に、一般市民の生活にも浸透していった。

 

 帰還兵の腕のみならず、1980年代から90年代にかけてアーミー・サープラス・ストアやL.L.Bean、オービスなどの会社で販売された。これにより、ハミルトンのカーキ フィールド ウォッチとしてのアイデンティティが確立された。

 

 

 

<カーキ フィールド メカニカル ブロンズ>

 

 現在はスウォッチ・グループの一員であるハミルトンは、2019年にフィールド・ウォッチをルーツとすることに回帰した。1960年代のミリタリー・ウォッチの直系でありながら、現代的なアレンジを加えてリメイクした「カーキ フィールド メカニカル 38mm」コレクションを発表し、人気を博したのだ。そしてそのベストセラーモデルの最新の進化型が、これだ。

 

 

 

80時間のパワーリザーブを備えた手巻きメカニカル・ムーブメント、キャリバーH-50を搭載する。Image: Revolution

 

 

 

 ブラックの文字盤には、1時間毎に配されたルミナス・トライアングル、12時間と24時間のスケール、そして分を示すハッシュマークを配置。時針と分針には、ベージュのスーパールミノバが使用されている。風防は、ベトナム時代のものとは異なり、傷に強い、丈夫なサファイア・クリスタル製が採用されている。

 

 ムーブメントは独自の「H-50」で、80時間のパワーリザーブを備えた手巻き式だ。手巻きムーブメントの採用は、フィールド・ウォッチの伝統に忠実であるがゆえ。もちろんハミルトンには自動巻きの時計もあるが、このノスタルジックなタイムピースには手巻きのムーブメントがふさわしい。ローターがないため、ケース厚は9.6mmと薄く、38mmの径と絶妙なバランスを保っている。

 

 そしてこの時計の最大の特徴といえば、ケース素材のブロンズである。古代の合金であるブロンズは、耐食性に優れ、身につけた人や環境に応じて独特のパティナ(緑青)を醸し出すもので、近年はケース素材として特に人気がある。軍の勲章やメダルにもよく使われる金属なので、ミリタリーテイストにもぴったりだ。

 

 暖かみのある色合いが魅力的なブロンズは、「カーキ フィールド メカニカル 38mm」の世界観と見事に調和している。チタン製のケースバックと20mmのレザー製NATOストラップを備えている。

 

 

ケース素材に採用されたブロンズの温かみのある色調と魅力が、「カーキ フィールド メカニカル 38mm」の世界観と見事に調和している。Image: Revolution

 

 

 

 フィールド・ウォッチの歴史を紡いできたハミルトンの最新の一歩は、豊かな過去を振り返りつつ、エキサイティングな未来へと踏み出すことを意味している。その冒険は、素晴らしいものになるだろう。少し控えめなデザインだが、フィールド・ウォッチとしての厳格な基準に変わりはない。改良された機械式ムーブメント、サファイア・クリスタル製の風防、そして味のあるブロンズ・ケースを特徴とするこのモデルは、シリーズの中でも最も素晴らしい。825ドルという価格は、エキサイティングなアドベンチャーとミリタリー・ヒストリーを理解するための投資としては、実に安いといえるだろう。

 

Hamilton Khaki Field Mechanical Bronze
Hamilton Khaki Field Mechanical Bronze

$ 825