AUCTION REPORT Vol.5
オークションレポートVol.5
ライカのヴィンテージカメラ
March 2023
2022年6月、1台のカメラが驚愕の金額で落札された。日本円にして約20億円。高まる人気を受けて高騰し続ける「ヴィンテージカメラ」の世界を少し覗いてみよう。
photography Leitz Photographica Auction
1440万ユーロというヴィンテージカメラにおける最高落札価格を叩き出した「Leica 0-Series No.105」。世界で初めて市販された35mmカメラのプロトタイプのうちの1台で、約100年前に製造された。ファインダー部分(左下写真)に刻印されている名前“OSCAR BARNACK”が、この品が非常に特別であることの証しである。
『ライツ・フォトグラフィカ・オークション』は、ライカカメラ社の子会社であるヴィンテージカメラ専門店「ライカカメラ・クラシックス」が年に2回開催している写真関連用品専門のオークションだ。ヴィンテージカメラ市場のトレンドを映すとして注目されている。スマートフォンやデジタルカメラが席巻している世の中ではあるが、ヴィンテージカメラの人気は高まり続けており、オークション市場での価格も年々上昇している。
その最たる例が、昨年6月の第40回に出品された、世界で初めて市販された35mmカメラ『ライカ』(当時は「ライツ社のカメラ」の略でこの名が付けられていた)のプロトタイプ。それまでのヴィンテージカメラの落札価格の世界記録である240万ユーロを大幅に更新する、1440万ユーロ、日本円にしておよそ20億円もの金額で落札された。1923年から24年にかけて製造された23台のプロトタイプのうちの1台であったことや人気の黒塗りボディに加え、生みの親であるオスカー・バルナックが所有していたものだったため、ここまでの金額になったと見られる。
一方、同年11月の第41回オークションでは「軍用カメラ」の落札合戦が繰り広げられた。しかも、それまで不動の人気とされていたブラックモデルではなく、オリーブグリーンのライカがその回の落札最高価格を叩き出したのだ。オリーブグリーンの「ライカM4」にこれほどの高値が付いた前例はなく、軍用カメラの落札価格としても過去最高を記録した。今後はブラックに加え、オリーブグリーンがトレンドとなるのかもしれない。
ヴィンテージカメラ「Leica 0-Series No.105」が出品された第40回『ライツ・フォトグラフィカ・オークション』の様子。会場となったのは、ライカカメラ本社があるドイツのウェッツラーのライツ・パーク。多くの参加者が、その歴史的瞬間を写真に収めていた。
イギリス軍で使用されていた1936年製造の「Leica IIIa British Marine(Serial No.198047)」。ヨーク級重巡洋艦「HMS EXETER」の名が革ケースに刻印されている。予想落札価格のおよそ21倍もの金額となる4万3200ユーロ(およそ600万円)で落札された。落札を告げるハンマーが振り下ろされるまで、オンライン入札者と電話入札者の2名による、激しい一騎打ちが続いたという。
第41回のオークション最高落札価格を記録した、ドイツ軍用に製造された「Leica M4 olive Bundeseigentum The Second One」。オリーブグリーンに仕上げられた「ライカM4」は31台のみ。54万ユーロ(およそ7600万円)で落札された。
1957年にスウェーデン軍向けに100台のみ製造された「Leica IIIf black paint ’Swedish Army’ The Second One」。シリアルナンバー2番のものとされる。黒塗りの特別仕様。19万2000ユーロ、日本円にしておよそ2700万円で落札された。