ATTAIN PERFECTION
赤峰幸生が最後に辿り着いた服 第4回:どこまでも奥深い色合わせのブラウン
April 2023
photography setsuo sugiyama
赤峰幸生 / Yukio Akamine1944年、東京都生まれ。90年、自身の会社インコントロを設立。98年、イタリア生産による紳士服ブランド「Y.Akamine」をスタート。2008年、カスタムクロージングのブランド「Akamine Royal Line」を立ち上げる。今、大切にしているのは「クラシック」の本質を若い世代に継承してもらうこと。20代、30代の赤峰ファン多数!
チェックの色をさりげなく拾うのが赤峰流のこだわり自然界に最も多く存在する色であるブラウンはひたすら奥が深く、色合わせにおいてもだからこそ惹かれるものがあるという。リヴェラーノ&リヴェラーノで30年前に仕立てたジャケットの生地は、1950年代に織られたドーメルの「スポーテックス」。アカミネロイヤルラインのエクリュ色のポプリンシャツ、ドレイクスのテラコッタ色のタイ、シャルベのチーフ、ロータのトラウザーズ、ジョンロブの靴を合わせた装いは、ジャケットの柄の色をタイの色で拾いながら、ソックスまで色合わせがされている。
江戸時代、庶民の贅を禁じた奢侈(しゃし)禁止令の中で「四十八茶百鼠」という言葉が生まれたように、日本人は粋な着物を追求する中でさまざまな茶とグレイの色を創り出してきた歴史をもつ。赤峰氏にとってはそのどちらも特別な色で、特に秋冬において温かみあるブラウンは、昔から最も好んで着続けている色だという。
「ひと口に茶と言っても、その色合いは本当にさまざまです。茶が私にとってとても魅力的に映るのは、自然界に最も多く存在する色だからです。代表的なところでは土の色で、それは黄色土もあれば赤色土もあり、黒っぽい土もあれば褐色土だってあるわけです。そこから生える木々も、幹の色はさまざまです。枯れ葉の色もまた同様で、自然界には本当に多種多様な茶の色があって、そこに足を踏み入れるとどこまでも追求したい奥深さが広がっているわけです。美しい茶の組み合わせという点では、私の好きな小鹿田(おんた)焼、砥と部べ焼、益子焼などからもハッとさせられることが多々あります。濱田庄司やバーナード・リーチの世界もそうですし、日本人として、そういった美意識のもとに茶を楽しんでいるわけです」と赤峰氏。
左のスーツはスミス ウールンズのソラーロで仕立てたアカミネロイヤルライン、ネクタイは右が信濃屋オリジナル、左がホーランド&ホーランドだ。右はアカミネクラススポーツのカシミアブルゾン「タオルミーナ」。オーダーで入手可能だ。中に合わせたカーディガンはオーストリアのレマメイヤー、タッターソールチェックのシャツはコットンカシミア製のアカミネロイヤルライン。
最近では、茶の中でも優しげで温かみのある色合い、柄ものにおいては以前にも増してコントラストが抑えられた配色のものを好むようになったとも。
「柄もののジャケットを着る際は、ジャケットそのものの配色にはもちろん、柄の色を拾ったコーディネイトにこだわります。わかりやすいところでは、ジャケットのチェックに入った茶の色を、ネクタイやポケットチーフの色で拾ったりするわけですが、そういったちょっとしたこだわりを楽しめるのも、チェックが多いブラウンを着る楽しさでもあります」
そういって赤峰氏は、袋を持ってきて、その中に入っていた木の皮を机の上に置き並べてこう続けた。
「私が40年前にフォックス ブラザーズの生地で企画した服を、今も着てくださっている方がいるんです。その方は材木屋を営んでいて、彼から樹齢350年というクヌギの木の皮をいただいたんです。窯で煮だして染めてくれるところがあるので、そこで染めてもらってシャツの生地を作ろうと思っているんです。私の中で、それが楽しみでならないんです」
左が樹齢350年のクヌギの木の皮。小鹿田焼、砥部焼、益子焼の茶の色彩からインスピレーションを得ることもある。コートはヴィンテージのバーバリー。
マフラーやホーズなど、アカミネブラウンの数々のアイテム。温かみのある優しいトーンが特に最近の好みだという。ソックスのブラウンのトーンを多数揃えているのが、氏のこだわりどころだ。